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DIPROニュース

2008

1月号

2008.01.10

新しい年を迎えて

代表取締役社長 間瀬 俊明

あけましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりありがとうございました。

今年はねずみ年、パソコンのマウスも皆さんの机の上できっと例年以上に活躍してくれることと思います。

本年もどうかよろしくお願いいたします。

毎年新年のご挨拶は明るいお話をと思っていますが、このところ明るい話題がめっきり少なくなりました。根底には1991年以降のバブル崩壊とその後のグローバル化時代にあって、なかなか展望を掴めないことにあると思われます。それだけでなく、そういった時代を反映した様々な事件に対し、テレビに代表されるマスメディアのかなり行き過ぎた、あるいは感情的な扱いや、混乱の増幅を期待するような報道姿勢も影響しているのではないかと感じます。今年はあまり新年らしくないかもしれませんが、そういったメディアの特に負の影響について少し考えてみたいと思います。

メディアの影響については様々な立場から議論されていますが、亡くなった仏の社会学者ブルデューが10年ほど前に、「メディア批判」という著書でメディアの本質について大方のことを言い尽くしているように思います。そのなかから2,3の記述を掲げてみます。

『時間というのはテレビではこのうえもなく希少な資源です。そして、これほどまでに貴重な何分かの時間を、これほどまでに取るに足らないことを言うのに使ってしまうのは、これらの取るに足らないことが、実は、貴重なことを隠してしまっているという意味では、大変大きな働きをしているからです』

『ニュースキャスターの使う言葉の一言一言を取り上げたくなります。彼らは何千何万のテレビ視聴者の前で、自分が引き起こしかねない困難や重大な結果、それによって負うことになる責任をすこしも自覚することなく、軽はずみなことをしばしば口にします。彼らは自分たちの責任をわかっていないし自分たちがそれを分かっていないということを分かっていないのです』

『ジャーナリズムの世界は一つの界ですが、視聴率計算を媒介として経済界の拘束の下にあります。そして、大変強く商業的な拘束に従属しているこの極めて他律的な界は、それ自身が構造として他の全ての界に拘束を及ぼしているのです』

といった調子で鋭くメディアの問題点を指摘しています。フランスでの問題提起がそのまま日本に通じるのにちょっと驚きます。その日本はジャーナリストといえる職(メチエ、プロフェッションに近い)がフランスほどに社会的集団として認知されているわけではなく、日本にはマスコミ人はいてもジャーナリストはほとんどいないといったら少し言いすぎでしょうか。いまや門外漢の芸人やタレントの方がむしろオピニオンリーダーとして重宝される現状を見ると本当はもっと深刻なのかもしれません。

ニュースイメージ画像

政治・経済・社会のあらゆる分野で問題の複雑さが増幅しつつあるにもかかわらずメディア間の激しい競争と視聴者への迎合のため、捉え方が益々表面的、扇動的、攻撃的になってきています。企業内では当たり前に行う'なぜなぜ'のように、メディア業界でももう少し冷静で深い分析ができないものかと多少いらだちさえ覚えます。今のままでは視聴者の思考力を一層弱め、ポピュリズムが更に広がることが懸念されます。

有名なチャーチルの言葉に、『実際のところ、民主主義は最悪の政治形態ということができる。これまでに試みられた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが』というのがあります。つまり民主主義や自由に基づく市場経済主義に勝る仕組みは歴史的に人間が作り出せた経験はないということです。それほど大切な自由の上に成り立っているが故にメディアは自らの力に溺れたり奢ったりせず、その大切さと意味をもっと深く自覚して欲しいと思います。近年のメディアの、社会や世論に対する影響力は計り知れないものがあります。民放は受信料が要らないといわれますが、実際はスポンサーの商品を買うことで高い料金(民放の全売上高で比較すればNHKの3倍以上になる)を払っていることになります。質のよくない番組が続くと何か健全な牽制力か良識に基づく評価の仕組みがあればと考えてしまいます。

テレビや日刊紙は、日常的でない情報を日常的に提供しなければならないため、犯罪、災害、不祥事などに時間や紙面を割きます。マイナス方向の非日常性を連続して流せばそれが当たり前になったり暗くなるのは当然です。負の情報に力が入るのは視聴率を上げやすく「言論の自由」を盾に安易な番組や記事を作っても批判されないからでしょうか。非日常性が重要ならば、日常的でない善い(プラスの)事柄にもっと光を当て、日本の失われつつあるよい面の啓蒙や継承に時間や紙面を割く工夫をと望みます。

人はその欠点を直そうと指摘するより、長所を伸ばす方が早く成長するといわれます。人の集合体である社会も善い点を伸ばす努力をする方が希望の持てる社会への近道と思います。前向きの、例えばボランティアやNPOのような善意や良心・良識に基づく活動などの情報をどんどん提供して欲しいと思います。そして時には視聴率至上主義をやめ、国民や視聴者に耳の痛いことも敢えて指摘する勇気や良心を大切にして欲しいと思います。そうすれば世の中が徐々によくなっていくのではないでしょうか。新年を迎え今年がそういった年になるよう心から願っています。

さて昨年は弊社にとって大変厳しい環境でしたが皆様からご支援をいただき新しい年を迎えることができました。今年は今申し上げました視点と同じ様に、皆様のよいところや強みを更に伸ばすようなお手伝いが出来たらと念じています。そのために、『DIPROは結果責任をとります』という社是ともいうべき弊社の姿勢を、まだまだ不十分ですが昨年以上に大切にしていきたいと考えています。そしてその姿勢を貫くことで皆様からの一層の信頼をいただけるよう精一杯努力して参ります。本年も引き続きご指導いただけますようどうかよろしくお願い申し上げます。

(代表取締役社長 間瀬 俊明)

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