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DIPROニュース

2005

1月号

2005.01.10

年のはじめに

あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話戴きありがとうございました。
本年もどうかよろしくお願いいたします。

ご存知の方も多いと思いますが、毎年その年の世相を表す漢字一字を公募で選び、12月12日の「漢字の日」に清水寺貫主が揮毫する年中行事があります。去年は「災」が世相漢字に選ばれたとの新聞記事がありました。確かに天災として、「新潟中越大地震」、「続けざまに上陸した大型台風」、「記録的な猛暑と集中豪雨」など、あっという間の1年とはいえ、随分いろいろな異変がありました。また人災の面でも、イラク戦争後の治安悪化、美浜原発の事故や凶悪な犯罪の多発など、災難の多い年であったと改めて思いました。いつも新年はおめでたい漢字に溢れますが、なかなかその願いどおりになるのは難しいと改めて思います。今年の年末には是非、「災い転じて福となす」の諺どおり、今年の漢字には「福」に類する一字が選ばれることを期待したいものです。

昨年を表す一語(漢字ではありませんが)を個人的に選ぶとすると「エントロピー」でしょうか。昨年はエントロピー増大の法則を文字通り実感した年でした。あまり勉強しなかった身ゆえ、正確な知識があるわけではないのですが、エントロピーとは物質とエネルギーとをひとまとめにした拡散の度合いの定量的な指標です。エントロピー増大の法則とは、一般には熱力学の二つの法則として知られるもので、「宇宙における全エネルギーは一定で(第一法則)、全エントロピーは絶えず増大する(第二法則)。したがって閉ざされた系のなかでは、エネルギーレベルに違いがあれば、常に平衡状態に向かい、結果としして使用不可能なエネルギーが増加する。」とありました。(ジェレミー・リフキン著エントロピーの法則)。端的に言えば、「覆水盆に返らず」ということでしょうか。

自然界のエントロピー増大に向けての動きは宇宙を統一する最も基本的な真理といえます。この法則は不思議なことに人間社会にもほぼ同様に当てはまるようです。

なぜそれを実感したかといいますと、一つは以前から言われていた自然環境としての地球の有限性や温暖化、あるいは環境問題を直接肌で感じる機会が増えたことは勿論ですが、人間社会も自然界同様に、グローバル化により様々な民族色やローカル性(文化)が失われ均質化していくことや、安い労働力を求めた、いわゆるオフショア購買の動きが加速度的に広まりつつあることなどからです。熱やエネルギーだけでなく、あらゆる分野で高いところから低いところへと拡散し平衡に向かうスピードがあがっていると感じました。

宇宙が平衡に向かうといっても太陽が燃え尽きるには数百億年はかかるでしょうから、その系から見れば現実的な問題とすべき時間軸ではありません。一方地球という、比較的閉ざされた系で考えると昨年は特に強く限界を感じるようになりました。人間社会にエントロピーの法則を当てはめると、例えば貧富の差がなくなり、より豊かな社会に向かっていく均質化はマクロな方向として望ましい状態です。一方で地域紛争や独自文化の破壊は望ましいものではありません。いずれにしても生態系を根底で支えるものは、太陽からのエネルギーの供給と、宇宙空間への熱放射による廃棄の循環を生態系自身が行なえるからですが、近年はここに過度な人工の営みが加わったことで生物の循環能力を越えてしまったということです。この二つの課題、即ち一つは人間が増大させるエントロピーを自然が循環できる範囲内に押さえ込むことと、もう一つは、人間社会をエントロピーの視点で見た平衡化や均質化の動きの中で、よい循環はなんで、悪い循環はなにかを見極め、うまくコントロールすることの双方の克服が必要と思います。これらの課題の困難さに対し悲観的に考える方がおられるかもしれませんが、私は人間の英知や科学技術の問題解決力に期待し、楽観的に考えています。前者については、例えば自動車産業では、自然にとって有害な物質の不使用や、ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などの研究開発を通じて環境負荷の低減に取り組んでおり、究極的には(理論的に無理とはいえ)ゼロエミッションを目指しています。今後はあらゆる産業で取り組まれ、将来必ず経済活動を維持しつつ、総熱放射量を自然の循環能力以内に押さえ込めると思っています。また人間系においても、人類の豊かさや平和といったものは永遠の課題かもしれませんが、それらを目指す様々な活動が更に広がることを信じ、希望を持ち続けたいと思います。

このように嘗てのような、単なる市場競争論理にだけに留まらない努力をされているお客様の事業に対し、どんなに微力でも、また僅かであってもお役に立てるよう今年も努力してまいりたいと思います。

本年も引き続きご指導を賜りますよう、どうかよろしくお願いいたします。

(代表取締役社長 間瀬 俊明)

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