あけましておめでとうございます。
昨年は皆様に大変お世話になり本当にありがとうございました。
今年もどうぞ宜しくお願いいたします。
近頃のお正月はそれらしい行事や晴れ着を見る機会も減り、イルミネーションが輝くクリスマスの華やかさに比べるとちょっとさびしくなった感がします。日本は古来、渡来人が持ち込んだ大陸の文化や文明を単に鵜呑みにするのではなく、日本にあった形に同化あるいは融合して独自の文化や技能を育んできました。しかし最近はいろいろな分野で同化や融合する過程が省略され、外来品をそのまま導入するといった風潮が強くなってきたように思います。精神文化の面も同様で、公共の場に出ればこの国を支えてきた倫理観や行動規範もどんどん崩れていく姿を見るに事欠きません。
年末に話題の「ラストサムライ」という映画を見ました。明治維新、封建時代の日本から近代化した日本へと変容する過程でその必然として崩壊する武士階級とともに、精神文化としての武士道すなわち「サムライ魂」も喪失しつつありました。それに抗するためには自らが滅ぶ運命を選ぶしかなかった最後のサムライたちとともに、アメリカ人である主人公がその魂に共感し一緒に戦うといったハリウッド映画です。エンターテイメント映画ですが、最近の日本や私たちを取り巻くビジネスの世界について少し考えさせられました。
このような映画が作られたということは、急激なグローバル化が進むなか、様々な分野で日本の強みやよさが失われていくことに対し、日本人以上に欧米人が心配し始めたということでしょうか。最近ある本で守屋洋という中国文学の大家が「日本人の質が劣化しているらしいということは、近隣諸国の一部の人々にも知られ始めているようだ。中国の知人から『日本には武士道があるじゃないですか。あれはどうなってしまったのですか』といわれた」と書かれていました。
戦後50年以上に亘って戦争も無く歴史に類を見ない経済的発展を遂げた日本、それを成し遂げた日本人のポテンシャルがなぜ落ちてしまうのでしょうか。人が平和を求め、それを勝ち取ることは無上の価値であるにもかかわらず、それを実現したことで人は却ってだめになってしまうのでしょうか。もしそうなら救いがないというか、造物主のいたずらとしかいいようがありません。武士道や儒学でいう「仁」、「誠」、「礼」などといった優れた精神性を失うことなく平和な世を築けないものか、厳しい国際情勢の渦中に入りつつある今考え込んでしまいます。
映画に刺激されて読んだ新渡戸稲造の、今から100年前に書かれた「武士道」という本に、騎士道と武士道を比較して、「際立った違いは騎士道が封建制から離れたのち、キリスト教会に引き取られて、新たな余命を与えられた。だが、武士道はそのような庇護する大きな宗教がなかったことである。そのため母体の封建制が崩壊すると、武士道は孤児として残され、自力で生きなければならなかった。」とありました。今の日本の仮に劣化が本当だとしたら、その原因は精神性や倫理感を維持する媒体がなかったことに起因しているのかもしれません。宗教に代わる受け皿として何かがなかったことで徐々に失われた武士道と同様に、日本人自身のアイデンティティもグローバル化のなかで失われていくのでしょうか。映画のテーマであった武士道も実は中国の儒教の徳目と殆ど同じ内容です。繰り返しになりますが、日本はあらゆる分野で、外来文化や文明を取り入れ、それを咀嚼し固有なものと融合し、新しい価値を創出し豊かになりました。そして第二次世界大戦を最後に以後60年近く一度も戦争をしなかった国、そして世界一の平均寿命を誇り、さらには世界で一番安全な国といわれてきました。「今の若い人は・・」というのは簡単ですが、若い人から見れば、自分達を躾ける責任は(私と同じ)親の世代にあった筈というでしょう。親の世代は、敗戦後自信をなくした祖父母の世代が十分な人間性を培う教育をしなかったせいというのでしょうか。結局(自らの反省も込めて)、幾つかの世代に渡って少しずつよいものを捨てていったのでしょう。
グローバル化時代の製造業の活性化にはやはり、単に過去を切り捨てるのではなく嘗てよかったところは何かを見つめ、固有なものと外来的なものとを融合させる知恵を再び取り戻すことが必要ではないかと思います。
私たちDIPROは、「融合」が新しい価値を生み出してきた過去の知恵を大切にし、「IT」と「物つくり」の融合を更に深化させることで新しい価値を創出してまいりたいと思います。そして単なるシステムエンジニア(SE)の集団ではなく、プロセスエンジニアリング(PE)すなわち、プロセス改革のための分析や提案を行い、そして新しいソフトウェアプロダクトを開発できる、いうなればSEとPEを融合したプロセス システマティゼーション エンジニア(PSE)の集団を目指して参りたいと思います。
お客様から「最近DIPROの質が劣化したのではないか」などといわれることが決してないよう、「ITと物つくりの融合」と「結果責任を取る気持ちで」という弊社の最も大切にしている二つの姿勢を貫くことで、一層皆様のお役に立てるよう今年も精一杯努力してまいりたいと思います。
本年も引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますようどうかよろしくお願いいたします。
(代表取締役社長 間瀬 俊明)
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