2020年7月号から連載をスタートしました「今、大注目の次世代モノづくり手法!アディティブ・マニュファクチャリング」。7月号では「アディティブ・マニュファクチャリング(以下、AM)概要」、8月号は「ラティス構造 / コンバージェント・モデリングのNX機能」、そして前号9月号では「ジェネレーティブ・デザイン / トポロジー最適化」をご紹介しました。最終回となる本号では下図の領域から、注目のCAM関連技術「プリント準備 / プリント / 後処理」についてご紹介いたします。(下図CAM技術領域)
AM装置を活用して実際にモノを製造するためには、CAM関連技術の活用が不可欠です。また、AMの効果を最大限発揮するためにはCAD / CAE / CAM技術を融合する必要があり、それを可能とするのが「NX」を中心とした統合ソリューションです。本号ではNX CAMの「プリント準備」領域の機能を中心にご紹介いたします。
AMは、従来の切削加工では製造できないような複雑な形状を造形できることが特徴のひとつとして挙げられます。ひとことで“アディティブ・マニュファクチャリング”といってもその製造手法はさまざまで、どの手法を採用しているかは機械によって異なります。
NX CAMでは、下記のAM手法をサポートしています。
パウダーベッド方式は、金属粉末を敷き詰め、レーザー照射により任意の部分を溶融および凝固させる工程を一層ずつ行うことで製品を造形する手法です。
パウダー状の材料を敷き詰め、結合剤を噴霧することで材料を固めます。
これを一層ごとに繰り返して製品を造形する手法です。プリンタに使われるインクジェットの技術を応用させています。
金属粉末などの材料の噴射と、レーザー照射を同時に行う手法です。
材料を溶融・凝固させて積層していきます。
ピンポイントで積層を行うため、壊れた形状の補修や溶接に適しています。
熱で溶かした樹脂をノズルから押し出して積み上げることで製品を造形する手法です。比較的低価格な自作用3Dプリンタのほとんどは、この方式を採用しています。
それぞれ異なる特色をもつ手法ですが、モデルをスライスして1層ずつに分割し、各層に充填パスを作成、ポストプロセスを介して積層プログラムを作成する、という手順は共通フローとして挙げられます。
AMは、パウダーベッド方式やマルチジェット方式に見られるような、敷き詰めた粉末を一層ごとに溶融・凝固させるタイプと、デポジション方式や材料押出しに見られる、従来の切削加工と同様にノズルをピンポイントに移動させて積層するタイプの2種類に大別され、NX CAMは、これら2種類の付加製造手法に対して別々の操作フローをもちます。
パウダーベッド方式・マルチジェット方式では、NXの「付加製造」アプリケーションを使用します。
“付加製造”アプリケーションでは、最初に使用する3Dプリンタ(機械タイプ)を選択します。3Dプリンタを選択すると、専用のトレイモデルがグラフィック上に表示されるため、プリント対象のモデルをトレイ内に配置します。
その後、レイアウトを検討します。NX CAMには、下図の製造フロー例1に挙げているような、サポート(モデルが垂れるのを防ぐ支え)を自動生成する機能や、製造フロー2に挙げている複数部品の干渉回避を考慮した自動レイアウトを行う機能(自動ネスティング)があるため、ユーザの検討時間を短縮することができます。
モデルの配置ができたら、実際に製造するためのレーザーパスを生成します。レーザーパスは、1層ごとに軌跡をモニタリングすることができます。その後ポストプロセスを実行して、実機にてプログラムを実行することで製品の製造を行います。
対応する3Dプリンタの種類は、Materialise社が提供するビルド・プロセッサーに依存します。ビルド・プロセッサーは、各3Dプリンタがそれぞれもつ固有の制御パラメータを保有しており、これをNXフレームワークに接続することで、幅広い機械での積層プログラムをNX上で作成することが可能になります。
2020年現在、100種類程度の3Dプリンタが登録されています。
ビルド・プロセッサー起動画面
対応するプリンタ例
デポジションおよび材料押出し方式の加工を実施する場合は、切削加工と同様にNXの“製造”アプリケーションを使用します。
操作フローを以下に示します。モデル作成⇒パス生成⇒ポストプロセスとシミュレーション⇒実機加工の流れとなりますので、基本的には切削加工と同様のフローとなります。
積層と切削の両方の機能を持ったハイブリット型の工作機械にも対応しており、切削と積層を複合した工程を作成することができます。切削での仕上げを加味してオーバービルドさせた積層パスを生成することも可能です。
切削加工と同様、積層パスの作成時にはテンプレートを用います。テンプレートには、各加工における必要設定項目や設定値があらかじめ登録されており、ユーザは加工パス作成時にテンプレートを使用することで効率よく作業を進めることができます。
バージョン1903時点でNXが用意している積層加工テンプレートは下記の通りです。
加工種類 | テンプレート |
---|---|
平面付加 |
|
回転付加 |
|
フリーフォーム付加 |
|
チューブ付加 |
|
曲線 / 点 |
|
作成した加工パスは、ポストプロセッサでGコードに変換します。NX CAMにはGコードシミュレーションの機能(IS&V)がありますので、実機加工前に干渉などのリスクを避けることができます。
シミュレーション上で問題がないことがわかったら、実機にて加工を実施します。
上記までで、それぞれの手法に対するフローをご紹介しました。いずれの手法の造形においても、素材や形状によってはサポート材が必要となることがあります。サポート材とは、積層する形状の内、製品を支える役割を持つ部分です。凝固前に重力の影響で形状が垂れてしまうことが原因で発生する不具合を防止します。完成形には含まれない部分のため、最終的には除去する必要がありますが、従来のCAM機能を活用することで、サポート材の除去パスを作成することができます。
また、タッチプローブによる測定プログラムを作成することも可能です。NXは造形した部品の品質の検査までをフォローします。
サポート材(青色)の除去加工
タッチプローブによる検査
最終回としてCAM技術に関する「プリント準備 / プリント / 後処理」のNX CAM機能をご紹介しました。弊社はCAMポストプロセッサ開発で培った豊富な経験とノウハウをもとにアディティブ・マニュファクチャリング用ポストプロセッサ開発が可能です。これから3Dプリンタの導入をご検討されるお客様にはAM技術を活用した3Dモデリングから3Dプリンティングまでトータルでご提案が可能です。既に3Dプリンタをお使いで、複数メーカーのソフトを利用されているような場合でも、3Dプリント準備をNXに統合し、効率化ができます。新規導入はもちろんのこと、現状業務からの効率化をご検討されている方も、是非弊社にご相談ください。
四回に渡ってお送りしてきた「今、大注目の“アディティブ・マニュファクチャリング”で、考え方を“従来”から“アディティブ”に変えてイノベーションを加速」、いかがでしたでしょうか?業務や目的に応じて様々なツールを準備して使いこなすのではなく、設計から解析、製造まで幅広い業務を一貫して統合ソリューション「NX」が支援いたします。
大量生産・大量廃棄の時代から、消費者の多様性に合わせた製品を提供していく時代へと変化していく中で、付加価値の高い製品を高品質で提供することが求められています。企業競争力を更に高めるためにも、新しい発想、新しい技術の活用に一緒に取り組みませんか?ご興味のある方は、お気軽にお問合せください!
【関連記事】
今、大注目の次世代モノづくり手法!アディティブ・マニュファクチャリング(第一回)[DIPROニュース7月号]
今、大注目の次世代モノづくり手法!アディティブ・マニュファクチャリング(第二回)[DIPROニュース8月号]
PICK UP