iCADの技術や考え方は欧米で通用するのか?これを確かめるために、ドイツで開催された世界最大の産業技術総合見本市HANNOVER MESSE 2011(4月4日~8日)にiCADを出展しましたのでご報告します。
HANNOVER MESSEは、毎年4月にドイツ・ハノーバー市で開催されています。この展示会には世界各国から複数の産業技術分野、例えば工作機械、各種加工機、ナノテクノロジー、ファクトリオートメーション、電力、プラント等の企業が出展しています。
展示会場は、日本の設計・製造ソリューション展が開催される東京ビックサイトの約8倍の広さです。歩いて会場内を回るのは困難なため、各ホール間を連絡バスが走っています。今年は6,500社が出展し、世界65カ国から230,000人が来場しました。
ドイツの北部に位置するハノーバー市は展示会の町として知られ、毎年いくつも大きなイベントが開催されています。展示会開催期間中は、公共交通機関は無料で利用でき、ハノーバー中央駅から展示会場まで臨時の直通電車も走ります。
世界各国から外国人が頻繁に訪れるからか、ハノーバー市の人はとても外国人に親切です。私たちも飲食店を探していたところ、通りすがりの大学生が地元の人たちが足しげく通う有名なレストランを案内してくれました。
日本の展示会は、情報収集のために来場する人が多く、出展側も自社の製品をアピールする絶好の機会と考えています。
HANNOVER MESSEでは、個別商談や接待が主な目的と言われており、あらかじめ訪問ブースを決めている来場者が多いようです。そのため出展ブースで、積極的な呼び込みやカタログ等の配布を行っている姿を見かけることはほとんどありませんでした。
中には来場者へのサービスのためにドリンクカウンターを出しているブースもありました。
ブースで対応を始めてみると、来場者が使う単語の意味がわからず戸惑いました。
例えば、2次元CADのことを表現すると思っていた「drawing」という単語を3次元CADの意味で使う設計者がいたり、通常は計算を意味する「calculation」という単語を解析の意味で使う設計者もいました。このため、会話中に単語の意味を推測し確認する必要があり、思い通りにコミュニケーションをとることが難しかったです。
普段使い慣れない英語での説明が必要なため、来場者に伝えるべきiCADの特長は次の2点に絞りました。
しかし、これらの特長を説明することはできても、日本で行っているように細かなニュアンスまでを伝えることの難しさを味わいました。一番ショックだったのは、日本のCADソフトウェアとわかった時点で見る必要がないという反応が返って来たことです。想像はしていたものの世界における日本のCADソフトウェアの厳しい現実を実感しました。
おかげさまで、ドイツをはじめとして世界各国の多くの設計者の方々にiCADブースへお立ち寄りいただくことができました。また、設計者と直接会話する機会を増やすために、私たち自ら機械装置メーカーのブースも訪問しました。会話の内容が深まり、iCADの特長を理解していただくと、以下のような共感を得ることができました。
さらに、ご来場いただいたお客様と会話を進める中で「欧米では日本同様に、設計で3次元CAD、ものづくり現場は2次元図面、と使い分けがされている」ということや、「3次元CADはデータが重いため、装置全体を開けないなどといった多くの課題を抱えている」という貴重な情報も得ることもできました。
東日本大震災について話題にされる方も多く、会話した世界各国の方々が心配されており、同時に「日本の復興を信じている」と暖かい励ましの言葉を多数いただきました。
今回、欧米の設計者と直接会話し、彼らの生の反応を自分で聞き、自らの肌で感じることができました。国は違えど設計者がやりたいことに本質的な違いはなく、これまで日本のものづくりを支えてきたiCADの技術や考え方がグローバルな領域でも通用することがわかりました。一方で、世界の中ではiCADもさることながら、日本のCADソフトウェアの知名度が低いことを改めて実感しました。非常にもどかしい思いをしましたが、世界を相手にiCADで勝負をする新たな闘志が沸いてきました。
(iCAD株式会社 三浦、加藤)
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