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DIPROニュース

2012

3月号

2012.03.10

VPS お客様活用事例 PartⅡ

DIPROニュース2012年2月号に引き続き、3次元仮想検証シミュレーターVPSをご活用いただいているお客様事例をご紹介いたします。(DIPROニュース2012年1月号で新バージョンをご案内しています)今月は、自動車用ベルトCVTメーカーのトップ企業、ジヤトコ株式会社様での活用事例のご紹介です。

ジヤトコ株式会社様
組み立てアニメーションが同席設計業務の課題決着をスピードアップ
製造現場では生産ライン立ち上げ前の作業習熟環境を実現
ベルトCVT世界トップメーカーの組み立てアニメーションフル活用

Jatco

【本社】 静岡県富士市
【設立】 1999年6月28日
【社長】 秦 孝之
【資本金】 299億3,530万円
【従業員数】9,313名(2011年3月31日現在)
【事業概要】
変速機及び自動車部品の開発、製造及び販売
【URL】 http://www.jatco.co.jp/

ジヤトコ株式会社様は、エンジンと並ぶ自動車の基幹部品であるオートマチックトランスミッションの開発・製造を手がけられています。とりわけ滑らかな走りと燃費性能に優れたベルトCVTではパイオニア的存在であり、高い開発・生産力を持ちます。2010年に生産されたCVTに占める同社のシェアは全世界でトップ。世界の主要マーケットの需要に応えるため、米国、フランス、メキシコ、韓国、中国、タイなどに生産・開発拠点を置き、グローバル展開を推進されています。

開発~生産準備期間の大幅短縮を目指して

生産部門 生産戦略部主管 浜中様
生産部門 生産戦略部
主管 浜中様

ジヤトコ株式会社様は高度化、複雑化する技術ニーズ、さらなる短納期化に対応するため、設計から製造に至る全社レベルで業務プロセス改革に取り組んでこられました。7年前から始まったこの改革は、日産グループとしての取り組みでもあり、その狙いは、次工程で発生する仕事のやり直し、いわゆる手戻りの徹底的な削減により開発から量産に至るまでの圧倒的なリードタイムの削減と大幅な品質向上です。

生産部門生産戦略部 主管の浜中様は当時をこう振り返られます。「目標達成には、開発部門の設計を待って試作に取りかかり、試作の完成を待って生産性の確認、生産ラインの設計、量産準備、そして量産という連続的な流れではとても対応できません。各工程を並行的に進め、解決するべき問題をバーチャル上で事前検証可能な3Dデータの活用が不可欠と考えました」。

一歩進んだ3Dデータ活用 ~組み立てアニメーションを開発と生産の共通言語に~

CVT内部構造
CVT内部構造

従来ジヤトコ様の開発工程は、設計担当者、生産技術担当者が試作現品を前にして、部品同士の干渉やすき間の確認、設備治工具と部品の干渉、組み立て性や加工性の確認を行う、いわゆる同席設計業務の手法が導入されていました。これに対し、3Dデータによる同席設計をフィジカル試作の前に行い、徹底的に課題を顕在化させ、設計ステップの上流で潰し込むことで、正規手配以降の設計変更ゼロ化、フィジカル試作の一発良品化を実現しようと取り組んでこられました。

生産部門 生産戦略部業務革新課 チーフ 川村様
生産部門 生産戦略部
業務革新課 チーフ 川村様

生産部門 生産戦略部 業務革新課 チーフの川村様は次のようにおっしゃいます。「アナログ時代の同席設計業務では、同席者同士が『ここは組み付け上、問題ですね。改善が必要です』と確認し問題点をリスト化していくのですが、そこからなかなか解決の方向性が決まらず、決着へ向けたフォロー工数とリードタイムが非常に多くかかっていました。その原因の一つは、開発現場と生産現場の言語表現(課題認識)のズレです。設計本部にいる機構部品の開発設計担当者は『この部品の組み付けは量産ラインではこの順番で行う。その際品質確保のためにはこの治工具をこのタイミングで使用し、手をここまで挿入しないと関連する部品を支えられない。だから部品形状をここまで変更する必要がある』といった具合に具体的な表現で指摘されないと問題点や解決に向けた方策案、要求精度が正しく伝わりません。この問題を解決するには、単に3Dデータを表示させた同席設計だけでは不十分で、組み付け・分解手順をアニメーションにより時間軸に沿って表し、作業の急所や量産性課題を見える化できるDMUデザインレビューのツールが有効だと判断しました」。

生産現場担当者の要求 ~スピードと使いやすさを重視~

生産部門 生産戦略部 業務革新課 鹿内様
生産部門 生産戦略部
業務革新課 鹿内様

海外ベンダーのDMUツールと比較評価し、最終的にVPSを採用していただきました。

「とくに重視したのは生産技術部門の要求だった」、生産部門 生産戦略部 業務革新課の鹿内様はおっしゃいます。「生産技術部門のエンジニアは、設計担当者のようにハイエンドの3次元CADを日常的に使いこなしているわけではありません。したがって、コマンドを3つも4つも叩かなければ動かないDMUツールでは困ります。と同時に、たとえノートPC上であっても見たい画面の表示に3秒も5秒もかかっていては、問題点をどんどん指摘する活きの良いレビューになりません。生産準備の現場が重視したこの2つの要求に応えたのがVPSだったのです」。

開発・生産技術部門の成果を製造部門に広げる

開発~生産技術部門の同席設計改革の成果を踏まえ、3Dデータ活用による製造部門の業務効率向上に取り組まれました。

「当社全体で見ると開発や生産技術部門の人数比率はわずかです。やはり3Dデータを活用するからには、より人数の多いかつ生産ノウハウのギッシリ詰まった製造現場に根付かせてこそ、より効率的なプロセス改革を成し遂げることができるのです」(川村様)

その方策の一つとして製造現場のニーズが高かった3Dデータ活用による量産開始リードタイムの短縮に取り組まれました。

量産開始までのリードタイムの短縮に挑戦

アニメーション活用による量産性課題の見える化
アニメーション活用による
量産性課題の見える化

設計完了から量産開始までのリードタイムを短縮するには、正確な作業手順の作り込みとその習熟タイミングをいかに前倒しするかがポイントです。しかし現実的には量産ラインを新規に設置し、そのラインに適合した作業習熟のバイブルとなる作業手順書が作成されるまでには一定の時間を必要とします。そこで、ラインや作業書ができる前でも作業習熟に着手可能な環境づくりの一つとして、3Dデータを活用することにしました。つまりバーチャル上で製品の機能、部品特性や名称、担当する組み付け部品の前後工程との関係、安全上の注意点を学習できる3Dデータ活用環境の構築に取り組まれたのです。「とくに正確で精密な組み付けを求められるトランスミッションの場合、組み付け工程の流れや、急所と呼ばれる工程を時系列で確認し、反復して習熟する必要があります。やはりカギとなるのは時間軸で部品の組み付け順序を確認でき、かつ、グローバルでも言語の変換が不要なアニメーション機能でした」(川村様)。

量産ライン構築前の作業習熟がアニメーション機能で実現

製造現場のDMUツールとして VPSを導入した理由について、「製造現場の担当者が日常的に使いこなし、必要に応じて現場のナレッジを作業習熟用アニメーションに自らフィードバックできる点を高く評価したからです」と川村様はおっしゃいます。

「VPS」による事前作業習熟用アニメーションの活用では、PCやタブレット端末に表示された画面上のボタンをクリックすると、たとえば組順の説明アニメーションが再生され、必要に応じて組み付けの説明図面が表示されるなど、複数の教材が準備されています。導入効果としては、習熟時期の前倒しによる量産開始リードタイムの短縮だけでなく、あるプロジェクトでは、作業を教える側のバラつきもグローバルで抑えることができ、その結果、教わる側の習熟工数も40パーセント近く削減できたそうです。「とくに効果を実感しているのは海外拠点です。アニメーションという共通言語で標準作業書の情報を伝えられる効果はもちろんですが、拠点間出張を伴っていた教育費用の負担を大幅に軽減できるメリットが大きく寄与しています。また一般に海外生産拠点では日本と比べて従業員の入れ替わりが激しく、人員補充の度に教育をくり返しています。その負荷が大幅に軽減されます。これらなくしてグローバルで新規拠点の垂直立ち上げはできないと考えています」(浜中様)

ジヤトコ株式会社様は、今後の展開についても、VPSと他のICTツール、業務を連携させて、モノづくりプロセスの全体最適を実現したいと考えられています。現在は、計画中の生産ラインに対し工程設計の事前評価、さらには作業者や物流の動線を入れた工場全体の最適化評価に取り組まれています。この領域においても富士通・DIPROソリューションに大きな期待をいただいています。

機構習熟用アニメーション
機構習熟用アニメーション

急所作業習熟用アニメーション
急所作業習熟用アニメーション

組立ラインでのタブレット端末の活用
組立ラインでのタブレット端末の活用

(VPSビジネス部 西山)

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