DIPROニュース9月号では、6月30日から販売開始した「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA デジタル生産準備 VPS (以下、VPS:ブイピーエス)」シリーズの中でも製品にフォーカスしたVPS MFGの新バージョンについてご紹介しました。今月は、生産ラインにフォーカスしたVPS GP4(以下、GP4)の最新機能についての詳細をご案内します。
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新型コロナウィルス感染症の影響で、現地・現物による作業が制限される中で、製品の迅速な市場投入および生産性と品質を向上させるために、製品の試作や工程計画策定などの生産準備業務をデジタル化することが強く求められています。生産ラインの検討業務においては、移動制限により国内外の工場へ出張ができない中で生産ラインの垂直立ち上げを行い、従来よりも検討した内容を素早く、的確に、誰でも理解できる形で表現・伝達する必要があります。
GP4の新バージョンであるV11L23では、バーチャル上で生産ラインをスピーディーに表現し、作業情報を容易に作成するための機能を充実させています。以下、個々の強化について詳しくご紹介します。
GP4の生産ライン評価機能の1つに山積み表があります。GP4の山積み表の特長は、工程毎/作業者毎の作業の所要時間を棒グラフ状に積み上げることで、工程間の作業量のバランスが視覚的にわかり、作業が最適に配分できているか確認することができます。各工程の山を構成する歩行や組付などの作業要素をドラッグ&ドロップで他の工程へ移動することも可能です。また、作業を移動すると工程内の作業手順情報も更新されるため、山積み表でラインバランスを見ながら直観的に工程検討を行うことができます。
上記に加えて今回のバージョンでは、山積み表の任意の作業をダブルクリックすると、対象の作業のアニメーションが実行され、山積み表に手順実行の状態を表示することができるようになりました。これにより、山積み表、作業手順と3Dの動きを確認しながら、より効率的に工程検討を行うことができます(図1)。
GP4では、組付け作業を設定すると作業者が組付ける部品を手に取り、組付ける作業のアニメーションが自動で生成されます。そのため、順番に部品の組付先を指定するだけで、容易に作業手順が作成でき、作業者の動きを確認しながらサイクルタイム、レイアウト検討や作業者の姿勢などの評価を行うことができます。
今回のバージョンでは、組付け時のアニメーションを詳細に定義できるようになりました。これにより作業者の手の動作をより現場に近い形で表現できます。また以前までは手の動きと部品の軌跡が離れていましたが、今回のバージョンアップに合わせて、部品の軌跡と手の動きが同じ動作を行うよう強化しました(図2)。部品の置き場所や作業者の姿勢の検証においてGP4の作業者アニメーションを有効にご利用いただけます。また、レビュー会や審査会においても、プレゼンテーションの効果が高まり、相手に検討内容をより伝達しやすくなりました。
GP4で作成された作業手順は山積み表や評価テーブルなどの評価機能を用いて、改善前後のライン案を定量的に評価することができます。
新機能である無効化機能では、検討中の作業を一時的に無効化することができます。無効化された作業は、手順の実行や評価機能(山積み表、評価テーブル、標準作業組合せ票出力)の対象外となるため、過去の作業や改善候補案を無効化し作業情報は残したまま、新たな改善案を作成・検討することができるようになりました。従来は改善案毎にファイルを分ける必要がありましたが、1つのデータで改善案毎に無効化を切替え、改善案の比較を行うことが可能です。
また、従来は仕様違いの複数製品を同一ラインで生産する場合、製品をまたいだ共通の作業があっても別の作業情報として作成・編集する必要がありましたが、無効化機能では、共通する作業と製品により異なる作業を混在させて1つのデータで表現できるようになります。共通作業に変更がある際は、1つのデータを修正するだけで済みます。また、無効化を切り替えることで仕様違いのラインバランスを確認することが可能です。図3は共通の作業と仕様により作業内容が異なる工程をもつラインの例を示しています。本機能により共通の作業は変更せず、仕様ごとの作業内容を無効化機能で切り替えることでラインバランスの確認が可能です。
GP4にはエレメントライブラリがあり、ライブラリに登録されているエレメントの総数は300個を超えています。3D CADデータがなくとも、ライブラリを活用することで容易にレイアウトを表現することが可能です。また、最近ではユーザー様からエレメントの種類をもっと増やしてほしいと多くのお声を頂き、GP4サポートセンターより追加エレメントをご提供していましたが、今回のバージョンで、追加エレメントを標準のエレメントライブラリに追加しました(図4)。これによりGP4をインストールした直後から豊富なエレメントをご利用いただき、レイアウト作成することができます。エレメントは今後も随時追加を予定しています。
以上、VPS GP4の新バージョンV11L23の代表的な機能強化内容をご紹介しました。ここでご紹介した機能以外にも、様々な機能追加・操作性改善を行っています。VPS GP4は、生産ライン検討業務のデジタル化に貢献し、製品の迅速な市場投入および生産性と品質の向上に寄与していくと共に、製造現場での新たな働き方改革の実現に貢献していきたいと考えています。
今後とも、工程設計にかかわる多くの方々に活用いただけるよう機能開発を進めてまいりますので、「生産ラインシミュレータVPS GP4」をぜひご期待ください。
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