DIPROニュース7月号では、6月30日から販売開始した「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA デジタル生産準備 VPS (以下、VPS:ブイピーエス)」シリーズの新バージョンについてご紹介をしました。今月は、その中でもVPS MFGに着目し、3Dデータ上で製造工程の検討・作業指示を行うための最新機能について、より詳細にご案内いたします。
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製造業では、新型コロナウイルス感染症の影響で現場・現物による作業が制限されている現在、製品の迅速な市場投入および生産性と品質を向上させるために、製品の試作や工程計画策定などの生産準備業務をデジタル化することが強く求められています。さらに海外の工場をはじめとする遠隔地に対する組立作業の指導を現地に赴くことなく円滑にミスなく進めるためには、誰にでも誤解なく伝わる形で生産準備情報を表現・伝達する必要があります。
VPS MFGの新バージョンV15L23では、ビジュアルでわかりやすい3D-BOP(注1)を作成するための機能を充実させています。製品の組み立て工程や作業の内容を、3D形状データと組み合わせて表現する3D-BOPのコンセプトを追求し、ビジュアルでわかりやすく、デジタルで高品質な生産準備情報を、現場・現物に頼らない形で迅速に提供できるようにしています。以下、個々の機能強化について詳しくご説明いたします。
工程ブロック図は、工程全体の流れを模式図として表すための機能です。工場の組み立てラインや設備が現場でどのようにレイアウトされているかを示した上で、それぞれの工程をどの区画で実施するか、次に実施する工程は何か、といった工程の流れをビジュアルに図示したものです。各工程を表すブロックには、そこで組み付ける対象部品が3D形状データで示されているため、どんな工程なのか一目瞭然で伝わります。今回のバージョンでは、さらにオートシェイプの図形、文字の吹き出し、写真などの画像を工程ブロック図上に貼り付けることを可能にしました。工程に関する補足情報やコメントを図の中に追記できるため、さらにわかりやすく誰にでも伝わる形で工程の流れを表現できます。(図1)
VPS MFGでは、設計部門が3D-CADでモデリングした製品の3D形状データを用いて3D-BOPを作成するのが基本形です。しかし、よりわかりやすく工程や作業の内容を表現するためには、製品の3D形状データの他に、補助的な3D形状データを追加したいケースがあります。例えば加工前の板金・梱包材・治工具・作業机・台車など、作業を行う上で必要な物資や設備を表現したいケースや、溶接・接着の箇所を製品上に図示したいケースなどです。今回のバージョンでは、単純なプリミティブ形状の組み合わせで簡易的に3D形状データを作成する補助形状作成機能を追加しました。正確なモデリングは必要ないが、ちょっとした3D形状データが必要になった際に、設計部門に頼ることなく生産準備部門でも気軽にモデリングすることが可能になり、ビジュアルでわかりやすい作業指示のために活用できます。(図2)
VPS MFGでは、組み立て作業の手順をアニメーションで表現することができます。どの部品をどの位置にどのように組み付けるか、どの治具や工具をどのように使うのか、動きを伴うアニメーションで表現できるため、誰に対しても間違いなく作業の手順を伝えることができます。今回のバージョンでは、同じ治具を複数の箇所で使いまわすといった表現を可能にしました。より実状に即した形で作業内容を表すことができます。さらにはアニメーションだけでなく、スナップショットという静止画での作業指示においても、工具の使い方を図示できるようにしました。スナップショットではオートシェイプの図形、文字の吹き出し、写真などの画像を貼り付けることができるため、よりきめ細かくビジュアルでわかりやすい作業指示が可能になります。(図3)
VPSのハーネス機能では、ケーブルなどの配線を3D形状データで柔軟体として表現することができます。今回のバージョンでは、ハーネスツリー画面を新設し、多数のハーネスデータを階層化して管理することを可能にしました。組み付け作業の中で、束ねる単位や引き回す単位でグルーピングすることにより、実際の作業と同じ形でハーネスデータをまとめて取り扱うことができ、わかりやすい作業指示につながります。(図4)
工程設計を行う際に、工程や作業の詳細情報を表形式で保持したいケースが多々あります。QC工程表やFMEAなどがその一例です。VPS MFGでは工程や作業に対して表形式で各種情報を保持できます。今回のバージョンでは、表形式データの編集機能を強化しました。工程や作業の入力画面に表形式の専用列を新設し、表形式データの追加・編集・削除を容易にしました。工程や作業の属性情報を表のセルに転記するためのテキストリンク機能も、専用入力画面を新設し使いやすくしました。表のセルに定型文を選択候補から選んで入力する機能や、表の入力行をライブラリに登録し使いまわす機能を追加しました。工程情報を誤記の無い高品質なデジタルデータとしてきちんと入力できることが3D-BOP作成の第一歩であり、VPS MFGの表形式機能は3D-BOP作成を強力に支援します。(図5)
製品の設計変更が行われた場合、その製品の製造工程の作業内容や作業手順も整合性を保って変更する必要があります。また作業指示内容の変更は製造現場に迅速に間違いなく伝達する必要があります。VPS MFGでは、設計変更前の製品モデルを元に作った3D-BOPデータを設計変更後の新しい製品モデルにうまく流用するための、設計変更対応機能を持っています。工程や作業の詳細情報を保持したまま、半自動的に製品モデルを新しいものに入れ替えできます。変更のない部品に関連する作業はそのままで、変更された一部の部品に関連する作業だけを新しい部品に合わせて微調整するだけで、新たな製品モデルの3D-BOPデータが完成します。
今回のバージョンでは、製品モデルの入れ替え作業でショートカットキーを利用可能にすると共に、自動入れ替えの条件設定を拡充しました。さらに購入先の変更などユニット単位で変更が入った際に、細部を気にせずユニットごとデータを入れ替えるための部品 / アセンブリ交換機能を新設しました。これらにより、製品の設計変更時に3D-BOPデータを効率的に最新化することができ、作業指示内容の変更を製造現場に迅速に伝えることができます。(図6)
図6:設計変更対応と部品 / アセンブリ交換
以上、VPS MFGの新バージョンV15L23の代表的な機能強化内容をご紹介しました。ここでご紹介した項目以外にも、様々な機能追加・操作性改善を行っております。VPS MFGは、生産準備業務のデジタル化を推進し、ビジュアルでわかりやすい3D-BOPの実現を目指しています。VPS MFGをお使いいただくことで、製品の迅速な市場投入および生産性と品質の向上に寄与していくと共に、製造現場での新たな働き方改革の実現に貢献していきたいと考えております。今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
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