11月9日(金)、パシフィコ横浜において「オート モーティブデジタルプロセスセミナー2018」を開催いたしました。ご来場の皆様ならびにご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
昨今、デジタル化とグローバル化の急速な進展により、あらゆる産業が劇的な環境変化に直面しているといわれています。自動車産業を始めとした製造業においても、電動化、自動化、更にサービス化のニーズが高まり、デジタル技術を活用したビジネストランスフォーメーションの重要性が日々増しているように感じております。自動車メーカー様やサプライヤー様も、多くの変革への取組を進められていると思います。プロセス革新をご支援させていただいている私共にとっても、質的変化が求められていると考えています。
こうした状況を踏まえ、今回のセミナーは、『IoTがもたらす事業変革・デジタルイノベーション ~データ活用による、ビジネス価値の創造~』というテーマで構成いたしました。この分野の有識者、自動車メーカー様を講師にお迎えして、最新の取り組みをご講演いただき、また、国内主要自動車メーカーのエンジニアリングITキーマンの方々にパネリストとして、現在のデジタル化の実状と今後向かうべき方向性について熱く語り合っていただきました。
現在、仕事・生活の中でアナログプロセスは膨大にありますが、それが一つ一つ着実にデジタル化されています。スポーツの世界でも選手にセンサータグをつけて動きを分析したり、劇場では笑顔認識を活用した課金システムを使用したりするなど、わかりやすい事例を用いてデジタル化をご説明くださいました。
デジタル変革の大きな目的は生産性を上げることですが、米国に比べ日本の生産性はまだまだ低いものとなっています。その理由の一つとして、米国と比べると、日本のユーザー企業におけるITエンジニアの割合が低いため、日本ではユーザー企業とIT企業とが一緒に議論していくことが重要である、と語られました。
次に、デジタル変革に向けた重要な点として4つ挙げられました。メルセデス・ベンツの従来の事業領域を超えて顧客ニーズを捉えたビジネス例のように、既成概念にとらわれず全てを再定義すること。Gatebox社やmeleap社のチャレンジングな例のように、リスクが高くても強い思いで動くこと。マーケティングの基本、顧客価値に深入りすること。ピーター・ドラッカーの産業革命における蒸気機関の有名な言葉のとおり、デジタル化も時間をかけて社会に浸透していくために長い目でみること。
これらのポイントについて様々な事例を用いながら、今後のデジタル変革に向けてどういうスタンスで進むべきかについてご説明くださいました。
いろいろなアナログプロセスがデジタルになると全てが変わっていくかもしれない、という認識でデジタルを見守って使っていただきたい。デジタルを介して世の中全体が幸せになってほしい、との熱いお言葉で講演を結ばれました。
「Connected Industries」とは、データを介して機械、技術、企業、人などが様々につながることにより、新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指す、2017年3月に安倍総理から提言された今後の産業の在り方のコンセプトです。冒頭はその実現に向けた取り組みのご紹介から始まり、5つの重点取組分野(自動走行・モビリティサービス、ものづくり・ロボティクス等)における課題と官民の取組についてご説明くださいました。
重点分野の取組を後押しする分野横断的な政策として、①複数企業による産業データの共有支援制度、②公的データを提供する生産性向上特別措置法による措置、③不正競争防止法の改正、④「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」の策定、⑤大量のデータを保有する大手企業と最先端の技術を持つAIベンチャー企業とのAIシステム共同開発、⑥ベンチャー企業支援プログラム「J-Startup」の取組、⑦データ利活用に向けた取組を進めるにあたっての人材確保、育成についての課題についてもご説明くださいました。
国際的に連携しながらシステムアーキテクチャを作り、データやAIをいかに活用するのか、システム全体の設計図をどう描くのか、各分野で幅広い連携を深めていくことが極めて重要です。例えば自動走行システム、モビリティサービスのつながりを考え俯瞰することにより、ビジネスに広がりを持たせ、新たなサービス提供者が参入しやすい環境を作ることができます。このように「Connected Industries」の重点5分野をはじめとして産業界のシステムアーキテクチャの構築を進めるためには、可能な限りその担い手を増やし、システム設計力を高めていく必要があります。「システム設計力の強化はデータ活用を進めSociety5.0を実現するための重要な課題であり、国内外から幅広い知見を頂きながら検討を進めていきたい」。松田様は政策を検討される上での意気込みと共に、講演を締めくくられました。
日産自動車様はゼロエミッション、ゼロフェイタリティ(死亡事故ゼロ)を目標に掲げ、「電動化」、「知能化」の開発を進められてきました。さらにその技術は、幅広い車種に、グローバルに、短期間で世の中へ出していく必要があります。こうした課題を解決すべく、2000年代前半に新たな車両開発プロセス V-3P(Value-up innovation of Product, Process, Program)を立ち上げ、設計ノウハウのシステム化、生産シミュレーション、CAEの適用などデジタル技術をフル活用することで、V-3Pによる品質向上、コスト削減、開発期間の短縮を実現されてきました。
一方、「電動化」「知能化」により開発が複雑さを増していく中、次なるステップに向けた2つの大きな課題をデジタル領域でいかに解いていくか、その最新の取り組みをご紹介くださいました。
1つ目の課題「デジタル技術の幅広い活用による効率化の実現」では、テキストマイニングによるBig Data分析の効率化やクラスター分析による複数性能・コストの最適化の事例、また自動運転開発においては、道路情報や交通流のモデル化により、市場での様々なシーンを再現したシミュレーションにCAE技術を活用している事例をご紹介くださいました。
もう1つの課題「Human In The Loop実験の加速」への取り組みでは、実車では実施困難なシーンの評価を安全に実施するドライビングシミュレータや乗心地を評価するライドシミュレータ、感性品質を評価する高精度レンダリング技術など、最新のデジタル技術を駆使した実験の取り組みをご紹介いただきました。
長岡様は最後に、日産自動車様のテーマである「日産インテリジェント モビリティ」の下、ゼロエミッション、ゼロフェイタリティの実現に向けて、終わりのないあくなき追及を継続する強い意志を語られ、講演を締めくくられました。
今回は、昨年度にテーマとした「データの一気通貫によるものづくりの効率化・高品質化」を再び取り上げ、第二弾と銘打ってディスカッションを行いました。一気通貫で上流から下流へ伝えるデータには、部品表に関わる情報と図面⁄CADなどの形状を中心とした情報の2系統があります。また、昨今は従来のハードウェア(メカ)のものづくり同様にソフトウェアのものづくりも意識して、プロセスを改善していく必要があります。これらの課題を眺め、前回から1年経った今、各社様の取り組みがどのように変わってきたかを紹介していただく場となりました。
まず1つめに、「開発の初期段階で使われるツールの課題」については、各社ともRPA(Robotic Process Automation)を活用して自動化・効率化を図られているとの説明がありました。これについては、実務部門とIT部門が協力してシステム構築していくことや標準化、組織の検討が必要であることが話題になりました。
2つめとなる、「BOM⁄PDM領域の課題」では、2次元図面の必要性について議論され、各社とも図面は減少してきているものの、完全にはなくならない現実が浮き彫りになりました。タブレットなども普及してきてはいますが、手軽に現場に持ち込めて書き込める紙に、まだまだ優位性があるとの意見が多数ありました。また、紙の給与明細書の話題などからコミュニケーションツールとしての紙の価値も話題になりました。
3つめは、「生産現場のIT化の課題」として、IoTがどこまで進んだか各社の報告と課題が話されました。これらは従来からの現場改善の延長線上にあるものですが、各社様ともそれぞれに試行錯誤を行われている最中とのことでした。また、各社とも情報収集に力を入れており、これから目を離せない分野であることが伺えました。
最後の4つめの、「ソフトウェア管理の課題」については、車載ソフトウェアの管理の話は各社とも公の場で話せる状況になく、Windowsに代表される最新OSへの対応やCADバージョンアップをいかに効率良く行うかについて意見が交わされました。悩みは各社とも同様であり、連携してバージョンアップ対応の時期や対象バージョンを合わせて行くべきという合意に至りました。
司会の吉野からは、「2025年の崖」についての話題も出させていただき、弊社を含むITベンダーがPLM基盤を支え、自動車各社様にはより良いクルマづくりに専念していただきたい、という言葉でディスカッションを締めくくらせていただきました。
今年も例年以上に盛況なセミナーとなりました。講演の休憩時間には弊社製品やソリューションのデモ展示を行い、お客様から熱心なご質問、ご相談が寄せられました。また、セミナー終了後の懇親会にも多くのお客様にご参会いただき、会場全体が溢れんばかりの賑わいとなりました。
アンケートでいただきました“とても参考になった”という声や、運営に関する様々なご意見につきましては、今後の参考とさせていただきます。なお、お客様の業務に関する様々な悩みにつきましては、弊社営業やシステムエンジニアが詳細をお伺いし、問題解決に向けた建設的なご提案をさせていただきたいと考えております。
DIPROはこれからも社員全員が一丸となって、お客様に寄り添いながら問題解決へ向けて進んでまいります。今後ともご愛顧いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
PICK UP