去る2月23日、「マレーシア産業支援企業視察」の目的でマレーシア産業省と企業視察団が弊社を来訪されました。その代表を務められたのが、日本でも高名なマハティール元首相のご子息、産業省(MITI)(注1)副大臣のMukhriz Tun Mahathir氏です。政府関係者3名のほかに、自動車産業育成の窓口となるMAI社CEOマダニ氏(M. Madani Sahari)、弊社の現地提携会社DreamEDGE社CEOアドリ氏(Khairil Adri)、それに加え民間企業同行者7名の計13名が来社され、DIPROの事業とマレーシア・ビジネスをご紹介し、マレーシア自動車産業育成のための協力について意見交換をさせていただきました。
注1) MITI : Ministry of International Trade and Industry
現在、マレーシア政府は「自動車産業の育成」を重要課題と位置づけ、様々な施策を打ちつつあります。その政策のひとつが「MADEC(注2)を設立し、自動車産業のデジタル化を支援すること」です。このセンターの技術者を含め、マレーシアの製造業を支えるデジタルエンジニアリング技術者の育成を担う企業としてDreamEDGE社が産業省MITIに選任されました。
マハティール氏のDIPRO来社の目的は、DreamEDGE社の日本からの支援企業であるDIPROを視察し、マレーシアの製造業育成への協力の可能性を検討することです。
注2) MADEC : Malaysia Automotive Design and Engineering Center
CEO アドリ氏が2007年に設立した、まだ30名規模の新進のベンチャー企業で(DIPROニュース 2009年4月号)、CADを使いこなしたデジタルエンジニアリングをコアコンピテンスとしてビジネスを構築しつつあります。設立当初からの「DIPROの強力な技術支援」と「CEOアドリ氏のアグレッシブなビジネスマインド」で、徐々にマレーシアにおけるビジネス基盤を強固なものにしつつあります。マレーシアを代表する自動車会社PROTON社向けの「車体設計支援」「CAE技術支援」「Paper Bicycleモノ作り講座」などの「自動車開発業務支援」の他に、政府系研究機関TPM社に対する「CAE技術支援」、大学UTeMへの「CAD教育支援」などが最近の主な業務です。
政府の外郭団体として、「製造業の技術力強化」をミッションとして活動していたMIGHT(注3)社から分離独立し、自動車業界の強化を目的に活動を始めた機関です。2009年にはMIGHT社主催により、DIPRO/DreamEDGEの協力の下「デジタル化技術を日本の自動車業界から学ぼう」との趣旨で「NADEC(注4)2009」を開催しました(DIPROニュース 2009年12月号)。500名弱の製造業の聴講者を集めたマレーシアでの大イベントは成功裏に終了し、今後の啓蒙活動の基盤を作ったと評価されています。
注3) MIGHT : Malaysia Industry-Goverment Group for High Technology
注4) NADEC : National Automotive Digital Engineering Conference(DIPRO主催Automotive Digital Process Seminarのマレーシア版)
今回のご来訪の趣旨に沿うよう、社長・山田から「DIPRO会社紹介」「DreamEDGE紹介」を、常務・加藤から「自動車ITの先進性とCAEの具体例」「DIPROのマレーシア産業への貢献」をプレゼンテーションしました。そのあと、別室で「VridgeR」「CAE」「Paper Bicycle」「デンタルCAD」のデモによる紹介を実施しました。
分刻みの厳しいスケジュールの中、説明担当に多くの質問を投げかけられ、大変熱心にご覧いただきました。
マハティール副大臣のDIPRO/DreamEDGEへの期待を受けて今後の産業育成支援を進めるために、政府側の窓口であるMAIとDreamEDGE、DIPROの3社でLOI(Letter of Intent)の調印を行いました。LOIでは、「3社が協力してマレーシアの自動車産業の発展に尽くそう」と謳っており、副大臣の前で、3社がその決意を明確にしたものです。
実は、マハティール副大臣は日本語が堪能でいらっしゃいます。休憩時間には「この和菓子は何でできていますか?」と、日本語で話しかけられ、弊社スタッフが緊張のあまり片言の英語で回答するといった場面もありました。笑顔でお話しされる副大臣の、その場を和ませるお心遣いと気さくな一面を垣間見ることができました。
緊張の中スタートしたこの会議も、2時間弱のプレゼンやディスカッション、そして個別に意見交換を進めるうち、次第に打ち解け、和やかな雰囲気で終えることができました。
マハティール副大臣からは、「MADECを5月にも発足させ自動車産業のデジタル化を支援していく、そこに必要な人材はDreamEDGEに揃えて貰い、人材育成支援をDIPROに期待している」とのお話に続き、「『DIPROの技術的先進性』と『マレーシア産業支援の実績』が良く分かり、大変有意義な来訪であった」とのお言葉を頂きました。また、後日談として「DIPROに来て良かった」とのご感想を述べられていたともお聞きし、受入れ側として大変嬉しく感じております。
今後もより一層DreamEDGEを発展させ、DreamEDGEとの連携を密にして、少しでも「マレーシアの自動車産業育成に貢献したい」と考えております。
(常務取締役 加藤)
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