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DIPROニュース

2011

5月号

2011.05.10

DECSYユーザー様、IT百撰の最優秀賞受賞


図1 六甲歯研様に設置したDECSY

弊社の歯科用CAD/CAMシステム「DECSY」のユーザー様である神戸の大手歯科技工所「六甲歯研」様が2010年度のIT百撰の最優秀賞を受賞されましたのでご紹介します。

IT百撰とは日刊工業新聞社とNPO法人IT百撰アドバイザー・クラブ「関西IT百撰」事務局が選定するものです。ITを活用して優れた業績をあげている中堅・中小企業の事例を紹介し、ITの活用に取り組む中小企業経営者の参考に、ひいては関西のIT活用のスタンダードを引き上げ、関西地域産業の活性化を図ることを目指した事業活動です。

2001年から始められ毎年10社前後の優秀企業が選ばれ、その中から最優秀企業1~2社が選ばれます。今年は10周年の節目の年に当たり、多数の企業がエントリーする中、㈱六甲歯研様がめでたく最優秀賞を受賞されました。

以下、㈱六甲歯研様の取り組みについて日刊工業新聞社刊“関西「IT百撰」に学ぶ”の引用を含めご紹介します。

高精度かつ高い審美性が求められる歯科技工

虫歯になったり、歯が失われたりした時、歯科医院で歯冠や入れ歯といった歯科技工物を入れます。この技工物を作るのが歯科技工士と呼ばれる国家資格を持つ専門技術者です。歯科医が患者さんの虫歯部分を削り取った後、その部分に隙間無くぴったりと合う違和感の無い入れ歯やさし歯などを作らなければなりません。残存歯牙と技工物との間に隙間があると、その隙間から菌が浸入し、また虫歯になってしまいます。そのため、その製作には精密な加工技術は勿論、歯科学、金・チタンなどの金属をはじめレジンや石膏など各種材料の知識が求められます。更に昨今は歯並びや色調などに対するニーズも高まっており、審美感覚も要求されるなど、まさに歯科治療には欠かせない専門技術者です。

しかし、歯科技工士を取り巻く状況は厳しく、社員が3名以下の事業所が全体の90%を占め、月間の平均残業は100時間以上。専門学校卒業後、5年以内に離職する若者の割合はなんと75%以上、技工士専門学校は定員割れが常態化し、廃校となる所も出るなど暗い話が数多くあります。

この背景には、歯科医院が増え飽和状態に陥り経済的に厳しくなっていることに加え、昨今は中国へ歯科技工物を委託するケースも増えています。こうした厳しい状況であっても患者個別の状態に合わせたオーダーメイドの技工物(=医療用具)作製を担う歯科技工の世界では、おいそれと労働時間を減らし、手を抜くわけには行きません。いきおい低賃金での長時間労働が続き、人材の定着率も高くなりません。

しかしそのような状況の中、ITの活用により経営の革新を図り、こうした構造的な課題の解決を目指している歯科技工所があり、その中の成功例の一つが六甲歯研様です。

患者さんのより高い満足を得るための技工物 - ITを活用して手軽


図2 DECSYで作製したセラミッククラウン

日本では“健康保険制度”があるため、患者は安価な費用で歯科診療が受けられます。しかし、保険診療で入れることのできる技工物は、見た目の悪い金属や、耐久性に劣るレジン等です。これらの材料は生体親和性が低く、アレルギー発症のおそれもあります。近年、より高い安全性や審美性を求められる傾向にあり、快適な医療に対する患者ニーズの高まりに対応する意味でも歯科医院が力を入れているのが自費診療です。

人工歯根を埋めて歯の咬み合せを回復させるインプラントや、セラミック素材を使った白いクラウンの作製などがこれにあたります。

歯冠設計効率化、情報共有、意識改革・・・


図3 DECSY操作の様子

その具体策のひとつが歯科用CAD/CAMシステム「DECSY」の導入による歯冠設計、製作の効率化です。

歯科技工物を作る際は、まずシリコンやアルジネート(アルギン酸)などをペースト状にしたものを患者の口の中に入れて「印象採得」という作業を行います。その後、印象歯型に石膏を流し込み歯の模型を作ります。歯科技工所ではこの模型を元に歯科技工物の設計や製作を行います。従来は、その後の作業のほぼ全てが手作業であり、特にセラミックのクラウンの場合、長い経験を積んだセラミストと呼ばれるベテラン技工士しか作ることができませんでした。

それが、CAD/CAMにより、模型をレーザー計測機で精密に読み取り、パソコンの画面上に表示。それを見ながら設計が行えるため、経験の少ない技工士でもセラミッククラウンを作製できるようになりました。

更に「DECSYでは歯冠の設計がほぼ自動で行えるため、作業効率や品質が格段に向上した」(田中技工士)とのことです。ちなみにDECSY担当の田中様は専門学校卒業後、六甲歯研に入社され2年目ですが、DECSYを使いこなし、毎月数十歯のセラミッククラウンの設計、製造を受け持っています。田中様は、「従来の手盛り築盛法では自分はセラミッククラウンを作れないが、CAD/CAMにより審美性の高いセラミッククラウンを自分で作ることができるようになり楽しい」とのことです。

「デジタルに対応するアナログな人材」


図4 熱く語る槙原社長

㈱六甲歯研の会社プロフィール

【 代表者 】

足立 勝

【 社 長 】

槙原 良樹

【 設 立 】

1980年11月

【 所在地 】

神戸市灘区永手町1-1-187

【 H P 】

http://www.e-108.com/

【 従業員 】

70人

六甲歯研様ではこの他にも歯の色調を分析する機器や、インプラントのシミュレーションソフトなど多様なIT技術を駆使しています。

根底にあるのは「患者、歯科医院、歯科技工所の3者でウイン・ウインの関係を築く」(槙原社長)という信念です。患者の満足度を高めるには歯科医師と歯科技工士が連携してよい仕事をすることが必要。槙原社長は「ITは武器だが、その武器を使う人が大事。デジタルに対応しつつも、コミュニケーション力を持ったアナログな人材をいかに育てるかだ」と強調されています。

「人間力を重視した人材育成を行い、その人材が新たなビジネスモデルを立案・遂行するという好循環を目指したい」、「良い会社を作って良い給料を保証すれば、人は残ってくれる」と槙原社長は熱く思いを語って下さいました。

弊社歯科用CAD/CAMシステム「DECSY」は高精度、高品質の歯冠を作るシステムですが、単なる加工装置、システムとしてではなく、歯科技工業界、ひいては歯科治療そのものを良い方向に変える仕組みとして活用頂けていることに開発者の一人として、とてもうれしく思いました。


(デンタル事業室 梅川)

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