企業においては、企業活動を維持、発展させるための利益追求にゴールはなく、原価低減活動(コストダウン)は永遠の課題です。
昨今は、BOMをIndexとして、企業内および企業を越えてデータが入手しやすくなっており、新製品開発においても、早期の段階で原価検討ができる環境が整備されてきています。
製造業では、上流工程で原価の80%が決定されると言われており、早期に目標原価を企画することが利益達成のために重要です。目標原価管理は、商品仕様定義や部品仕様/部品適用/部品構成などの変動をトリガーとして、仕様通知/設計変更通知にもとづき原価変動を追跡していくことが主要業務であり、この基盤となるのがBOMになります。
本稿では、目標原価管理の概要としくみをBOMとの連携に着目して、自動車メーカーを事例として述べます。
新製品の開発において、開発から設計終了までの段階で、目標利益を獲得するための目標原価を原価企画で作り込みますが、目標原価の分解(割付)と、見積の積上げによる目標と実績の差異分析が重要です。マーケット・販売面と機能・技術面の双方から原価の目標値を作り込み、設定された目標原価はシステム/部門単位⇒機能/設計グループ単位⇒部品/担当者単位に分解され割り付けらます。実績(見積値)は、 新製品開発フェーズの進展に伴い、節目管理(イベント毎管理)で部品/担当者単位⇒機能/設計グループ単位⇒システム/部門単位へと積み上げ管理されます。(図2)
原価企画ではイベント毎の積み上げ管理に加え、目標割付を中心とした原価企画活動や仕様確定後の変動管理が複数部門(設計、生産、購買、原価など)で内製・外製部品に対して行われ、目標原価管理を確実に実施します。①原価企画活動、②部品原価見積り、③イベント原価管理、④設変原価変動管理という大きく4業務にて、原価企画および原価低減活動を回していきます。(図3)
原価企画では、基点原価(現行車BOM)から原価基準車のパーツリストをもとに、新車化(機能・性能向上、法規対応)に伴う予算の割り付けをおこないます。その後、設計見積りの集計、節目管理(C1、C2、C3)、また、正式図以降は設変書を受け取り、原価変動に対して予め確保していた予備費の割当(原価変動管理)をおこないます。
この一連の活動の中で目標原価を作り込みますが、BOMはこの活動を支えています。(図4)
新車化による操作性、安全性、機能性、居住性などに対する仕様追加(例:Door Mirror;リバース連動下向き、電動自動格納、ヒータ付、カメラ付、広角ミラー/拡大ミラー/撥水ミラー、サイドターンウィンカー付、など)や、仕向地の変更や追加による法規対策の追加、原価低減活動による原価低減効果をもとに予算(目標)割り付けをおこない、構想書の商品仕様を具体的な数値目標に表し、商品企画(商品性評価)、設計(技術実現性評価)、原価(収益性評価)の各部署が三位一体となり目標原価管理をおこないます。(図5)
製品開発の早期から販売仕様を検討し、仕様の組み合わせをBOMの活用により精度よく管理し、製品仕様に対して最適かつ必要十分な部品仕様選定を開発の早期から品質、コスト面で評価し選定することで、目標原価の達成を実現することができます。仕様組合せにおいては、組合せシミュレーション※により、必要十分な部品仕様を決定することができます。(図6)
※ 詳細は【DIPROニュース2012年8月号「仕様組合せ支援ソリューションのご紹介」】をご参照ください。
企画、設計、営業、購買の領域毎に情報の意味や管理単位が異なる製品データを、製品仕様、部品仕様、部品構成を基軸に管理し、各部門へ流通し活用するためのつながりの要(Index)として、BOMは重要な役割を担っています。
目標原価を達成するためには、全部門がコスト意識(目標達成意識)を持ち、目標原価と見積値および差異を見える化し改善(原価低減)を行うPDCAサイクルを回せる状態を構築していくことが重要です。そして、今後の課題としては、構想段階の仕様に対する目標原価と設計段階での部品に対する目標原価設定のシームレスな連携が重要になってきています。
ものづくり情報の軸は製品の仕様および部品構成で表現し、それぞれの仕様・部品毎に機能、形状、工法、原価、品質計画などの情報を関係付け、次工程での利用が容易な仕組みであることが重要なポイントの一つと考えます。
弊社では15年以上BOM構築サービスとして、これらの情報を見える化したデータベースとして提供すると同時に、このデータベースにデータを作り込むアプローチについても支援させていただいております。まずはご相談から、お気軽にご用命いただけると幸いです。
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