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DIPROニュース

2012

8月号

2012.08.10

仕様組合せ支援ソリューションのご紹介

本稿では、弊社が長年BOMシステムおよび周辺システム構築において培ってきたノウハウを活かした「DIPRO仕様組合せ支援ソリューション」のご紹介をさせていただきます。本ソリューションでは、設計者が商品仕様に基づき部品仕様を検討する作業を強力に支援することを狙いとしています。

「高速な仕様組合せ計算」、「複数アイデアの履歴管理」、「高度な検討支援機能(マトリックス形式、絞込み)」を具現化しており、部品仕様の品質向上や検討作業の改善、迅速化に大いに貢献できます。

はじめに

一般的に、商品の成長・成熟に伴って、顧客(市場)からの商品への要求は多様化していきます。また、他社商品との競合優位性を確保するための差別化戦略も必要になってきます。これらの個別要求に応えるために、従来、メーカーは市場や商品シリーズごとに、都度、最適な部品・商品を造りこむ傾向にありました。このようにして、メーカーは市場でのシェアを獲得・維持・向上させてきましたが、一方で開発・設計・生産だけではなくアフターサービスまでも含めて、膨大な「似て非なる部品」を維持管理しなければならないという新たな問題に直面しています。

また、周知の通り昨今は、市場のグローバル化によって競争が激化しており、競争力を確保するためには部品の種類数を抑えて、多くの商品シリーズで部品を共用する設計標準化の重要性も高まっています。

標準化設計では、あらゆる要求に対応可能な標準部品を設計することになります。これを実現するためには、あらゆる要求、つまり、商品仕様をあらかじめ抜け漏れなく十分に検討しておくことが非常に重要となります。

仕様組合せ(設計仕様検討)の概要

商品開発においては、「少ない商品モデル・部品種類で数多くの顧客要求に応える」が設計の目標になります。図1は、BOM関連業務フローとして仕様(商品、設計、販売)の流れを示しています。

商品企画部門は、商品仕様として、次の3項目を設定します。

図1. BOM関連業務フローと仕様の流れ
図1. BOM関連業務フローと仕様の流れ
  • 商品モデル : 商品の基本仕様項目により商品バリエーション(設定モデル)を設定
  • 仕様適用表 : 商品バリエーション(設定モデル)ごとに商品仕様項目を設定
  • 仕様組合せ制約条件表 : 商品仕様項目間での組合せ制約を条件として設定

設計部門では、機能(Function)毎に、上記の商品仕様に基づき、以下の設計作業を行います。

  • 商品仕様抽出 : 各機能(部品)に関連する商品仕様項目の抽出
  • 組合せ計算 : 抽出した複数の商品仕様項目の組合せ計算(部品バリエーション)
  • 部品仕様検討 : 部品の共通化検討(部品バリエーションの統廃合)

ただし、商品仕様項目にあまり複雑性がない機能(部品)の場合は、「組合せ計算」と「部品仕様検討」の作業を逆に行うこともあります。つまり、設計者自身の設計作業結果(組合せ結果)の抜け漏れを確認するために、組合せ計算を行うこともあります。

仕様組合せ計算の概要と課題

部品設計では、その機能に関連する複数の商品仕様項目を抽出して、その仕様内容(値)を直交表的に組合せて、最終的には部品共用化(標準化や機能のワイドレンジ化など)を行い、部品仕様を決定します。

図2は、仕様組合せ計算の入力情報である仕様適用表と制約条件、出力情報である部品適用表の関係を示しています。

図2. 仕様適用表と部品適用表の関連
図2. 仕様適用表と部品適用表の関連

この例では、設計対象の機能を「エアコンシステム」とし、その関連する商品仕様項目として「エアコン/クリーンフィルター/バッテリー」の3つを抽出しています。エアコンの仕様値としては、「マニュアル/オート」の2種類が設定され、同様にクリーンフィルターでは3種類、バッテリーでは2種類が設定されています。これにより、論理的には組合せが2×3×2=12通りとなりますが、制約条件と設計標準化により4通りの部品バリエーションに統合化(共有化)されています。しかし、部品により、この仕様組合せの件数は増大します。

例えば、トラックのカプラー部品の場合は17,000通り(最終的には約2,000通り)となることもあり、人手による管理は到底不可能な値となります。このように仕様組合せの件数は、数十から数百以上になる場合が一般的であり、その組合せ計算時間も数時間から十数時間以上におよびます。部品仕様の検討作業では、この仕様組合せ計算を数回繰り返しながら設計品質(商品仕様を抜け漏れなく織り込む)を高めることが非常に重要です。しかしながら、組合せ件数の多さおよび計算時間の長さに起因して、複数アイデア(複数条件による組合せ計算案)の比較、検討作業は困難を極めているのが現状です。


仕様組合せ支援ソリューションの概要と効果

図3. 仕様組合せ支援ソリューション
図3. 仕様組合せ支援ソリューション

仕様組合せ支援ソリューションは、図3に示す機能群とデータ群から構成されます。単体システムとしても活用できますが、既存の商品仕様管理システムやEBOMシステムなどと連携して総合的に活用することにより、さらなる効果が期待できます。

本ソリューションでは以下の機能をご提供しています。

  • マスタコード登録 : 商品仕様項目や機能コードなどシステム共通コードを登録でき、複数の商品開発プロジェクトで共通に活用、流用することができます。
  • プロジェクト登録 : 商品開発プロジェクトコードや設定モデルなど商品の基本諸元を登録でき、設定モデルの過不足などを検討できます。
  • 仕様適用表 : 設定モデルに適用する商品仕様項目、仕様内容を直感的なマトリックス形式で設定でき、設定モデルの基本諸元(仕向地や商品タイプなど)による絞込み表示を行いながら、仕様設定(適用)することができます。これは設定(適用)作業や検討作業の効率を向上させます。
  • 制約条件 : 商品仕様項目間の組合せ制限や条件を論理式(AND、OR、SETなど)で設定でき、不要な組合せや従属させるべき仕様などをあらかじめ指定できます。これは組合せ件数を低減し、組合せ品質(抜け漏れ防止)を向上させます。
  • 仕様組合計算 : 仕様適用表と制約条件を入力として、高速に仕様組合バリエーションを計算します。RDBの特徴を活かした計算エンジンにより高速化を実現しています。
  • 機能適用表 : 部品バリエーションの設定モデルへの適用を直観的なマトリックス形式で表示できます。また、組合せ結果(部品バリエーション)は履歴管理により、新旧比較の検討や反復・繰返し検討を支援し、作業効率と組合せ品質を向上させます。
  • 他システムI/F : CSV形式ファイルでのImport/Exportをサポート(カスタマイズ)します。本ソリューションは既存の商品管理システムやEBOMシステムから独立した設計者支援ツールとして位置付けることができ、組合せ計算を行う電卓として気軽に利用できます。

図4. 画面例(仕様組合せ一覧)
図4. 画面例(仕様組合せ一覧)

図4、図5は画面例(実施例)を示しています。

図4は、仕様組合せ計算の結果である仕様組合せ一覧(Spec Combination List)の例です。
これにより、抜け漏れなく商品仕様を簡易に管理することができます。

図5. 画面例(部品適用表)
図5. 画面例(部品適用表)

図5は、図4の部品仕様を設定モデルに適用した部品適用表(Function Application List)です。
本リストはマトリックス形式で表現されており、部品仕様の設定モデルへの織り込み状態や漏れを視覚的に管理することができます。

まとめ

このように、仕様組合せ支援ソリューションは、設計者の部品仕様を検討する作業を強力に支援することができます。本ソリューションの主な特長は以下となります。

  • 組合せ計算の高速化 : 仕様項目、仕様内容などの体系化により高速計算を実現
  • 複数案管理の実現 : 部品仕様検討における組合せ結果をアイデアとして複数管理可能
  • 最終案決定の強力サポート : 絞込み表示などの検索機能や複数案の新旧比較機能を実装

弊社では、ご紹介した「仕様組合せ支援ソリューション」をはじめBOMフレームワークをベースにBOMおよびBOM周辺ソリューションを提供させていただいております。まずは、ご相談からで結構です。お気軽にご用命いただけると幸いです。

(技術ソリューション部 志村)

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