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DIPROニュース

2008

9月号

2008.09.10

「안녕하세요!(アンニョンハセヨ)」 ~韓国訪問記~
5年ぶりに韓国を訪問して

5年ぶりに韓国を訪問して

去る7月9日から11日までの3日間、「PLM2008 International Conference」がソウルで開催されました。実はこのようなカンファレンスがあることを知りませんでしたが、今回主催者からスピーチの依頼があり初めて知ることになりました。

主催者のPLMコンソーシアム(PLM-IWG: the International Working Group on Product Lifecycle Management)は各国大学のPLMの研究者を中心にPLM開発者(ベンダー)、それにユーザー(製造業)から成る組織体で、5回目を迎えるこの会議は、昨年のイタリアに続いてこの7月にソウルで開催されたものです。

初めての参加でしたが、キー・セッションで「The Current status and Future direction of PLM in Japanese Automotive industry」というタイトルで話をしました。聴講者は約1,000人とのことで、韓国のPLM分野に対する、依然として高い関心が窺がわれました。

私からは自動車産業におけるCAD/CAM/CAEを中心にITが過去30年以上にわたり、どのような発展を遂げてきたか、また3次元CADを進めるためにどのようなバリアがあったか、そしてそれらをどう克服してきたかについて話しました。更にデータを基準(衝)とした業務の本質とは何かを、紙と電子データといった媒体の違いが開発プロセスに及ぼす影響を考察することで解説しました。また東大 藤本教授の提唱されている組織能力構築競争の中核である、モノづくり能力の強化、すなわち“情報の転写密度と転写精度を高める”ということが、デジタル化されたプロセスではどうすることなのか、私なりの分析を試みました。

セッション終了後、多くの皆さんから反響が寄せられ、韓国の企業や学会の方々のPLMに取り組む熱意のようなものが伝わってきました。

会場の様子

会場の様子

この会議で2・3の講演を聴講しましたので併せて簡単にご報告します。

1つ目は「New Methodology of the Vehicle Design through the integrated template」というタイトルで現代自動車のKim JoonHyo部長(現地でお世話になりました)が講演されたもので、ラジエーターシュラウドやドア、あるいはヒンジなどを例にテンプレート化の取り組み状況の説明がありました。テンプレートは、“フィーチャーテンプレート→パートテンプレート→プロダクトテンプレート→プロセステンプレート”へと順に拡大する考えであること、テンプレートは、“テンプレート作成ガイド→テンプレートの創成→承認→テンプレートによる新車開発”の手順に従って作成され、そして蓄積・活用されるとのことです。作られたテンプレートのDBは開発プロセスの早い段階から詳細設計に至るまで、それぞれの段階でのスタートポイントとして活用されるそうです。実務定着のレベルは分かりませんでしたが、現代自動車で予想以上にしっかりした取り組みをされているのに驚きました。

2つ目は同じ現代自動車のKim SangJik部長によるセキュリティに関する講演です。近年機密漏洩が急増していること、その原因は退職者からが62%で第一位であること、第二位は従業員からで19%、第三位はサプライヤーからの9%ということで、この三者で漏洩原因の90%を占めるとのことです。退職者からが第一位というのは予想外ですが、考えてみれば当然かもしれません。製造や開発のグローバル化が進む中、セキュリティの確保は効率化とトレードオフの関係にあるだけでなく、地政学上の厳しさも併せますます難しい課題になっているようで、他人事ではなく強い関心を持って聴きました。

3つ目に聴講したのは、「PLM as The Competitive Enabler」というテーマのパネルディスカッションです。このパネルでは韓国のPLMについてアメリカ、インド、中国からの参加者を交えて議論が展開されていました。韓国が現在認識している問題として、主にサステナビリティの観点(エネルギー、環境、リサイクル/リユース)でPLMがどのように寄与できるのか議論されていました。更にユビキタスPLMやセマンティクスPLMについても同様に話題にされていました。私の英語の聞き取り能力が低く理解は今ひとつでしたが、何より印象的だったのは、英語で様々な国の人が当たり前のように議論する様子です。英語に弱い自分を省みて、グローバル化におけるハンディキャップを感じてしまいます。

この会議を通して、韓国の大学が随分がんばっていること、また企業では現代自動車と三星電子の発表が多く、この分野でもこの2社がリーダーとして韓国の製造業を牽引していることを印象付けられました。

最終日に三星電子のR&Dの見学ツアーに参加しました。工場を含む広大な敷地に、R&Dが二つの高層ビルを中心に広がっていました。ワールドワイドに、現在36,000人(全従業員の26%)いる研究・開発技術者を、2010年には52,000人(同32%)に強化するとのことです。

三星電子を世界的な企業に育てた李健煕前会長は、『地球上で生き残った生物は、強い生物ではなく(先進的でなくても)環境に適応した生物である。生き残る企業も、強い企業ではなく環境に適応した企業である』というダーウインの進化論を経営に当てはめているとのことです(吉川良三元三星電子常務)。確かに、見学した歴史館で創成期に三洋電機との合弁で技術導入を行った展示などを見ていると、日本の企業を徹底して学ぶことで追いつき、そして追い越していったグループの経営哲学やそれを実践してきた強靭さが伝わってきました。

ニュースイメージ画像

ところで、韓国は訪問するたびに社会や都市のインフラが充実していくのが分かります。アジアのハブを目指す仁川空港や、片側3車線あるいは4車線ある空港とソウルを結ぶ高速道路など、停滞する日本経済に比し、依然として高い成長を続けようとする強い意志の表れだと思います。

今回は短い滞在の中、何人かの方たちとお話しし、食事をしましたが、いつもながらそういった方たちの親切さや気配りを感じます。帰国前日の夜、食事の席で韓国のおいしいキムチと海苔を話題にしたところ、翌日まだ寝ていた早朝、前日ご一緒したある社長から宿泊していたホテルに、町のおいしいお店で購入したというキムチと海苔が届けられたのにびっくりしました。

アジュ マシッソッソヨ。カムサハムニダ。

(代表取締役社長 間瀬 俊明)

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