2018年初頭に当社からのリリースを予定しているSolid Edge ST10は、3Dプリンター出力/形状スキャン入力データとして使われるメッシュデータとの連携を強化して、設計製造の効率化を図る新機能を装備した新バージョンです。
3DCADのモデリングにおいては形状作成のための正確な形状表現が必要であり、Solid EdgeやNXではB-rep(Boundary Representation、境界表現)モデルが用いられています。
一方、光造形方式(Stereo lithography)を代表とする3Dプリンターへの出力に用いられるデータ形式はSTLと呼ばれ、基本的には微小な3角形のパッチ面に分解して構成されるメッシュデータとなります。このデータ形式は3Dプリンターへの出力だけでなく、形状のスキャンデータとしても利用されています。
両者のデータには互換性がないため、B-repとメッシュデータを混在させて利用することは困難でした。ST10では、これらを統合して処理できるコンバージェントモデリング機能が実装されました。
この統合機能により、取り込んだSTLデータに穴をあける、切り取る、リブを追加するなどの編集ができるようになっただけでなく、STL形状に対するブーリアン処理も可能であるため、STLデータから直接的にスペーサや金型の設計などに活用できるようになりました。
3Dプリント出力は、Solid Edgeのメニューから直接出力できるように改善されました。リアルタイムに切り替わるプレビューで確認した後に接続されたプリンターに出力できます。(直接出力は、Windows 10 Anniversary Update以降で対応しています)
また、STL形式以外に新たに3MF形式にも対応しました。3MF形式は、材料や色属性の出力をサポートする新たな形式であり、これを利用することによりカラーでの出力も可能です。
従来CAD/CAE統合型環境における最適化設計は、寸法(パラメータ)を変化させて、数多くのパラメータから最適な組み合わせを見つけるやり方が一般的でした。このやり方では、人間が予め想像しうる範囲から最善を選択することになります。
ST10では、単純にパラメータを変化させるのではなく、構造形状そのものから見直しを行うことが可能な位相最適化機能をオプションとして搭載しました。(一部の機能がPremiumとClassicで利用可能です)
位相最適化機能では、通常の解析と同様に解析条件を与えた後に、パラメータの指示を与えずに軽量化の目標のみ与えて最適化の実行を開始します。コンピュータは計算においてパラメータにとらわれない任意の形状に対して解析計算を行い、最善の形状を見つけ出します。
解析結果は通常の製造条件を考慮したものではないため3Dプリンタなどでの製造を行うか、作成された形状を設計案として新たな検討を行うこととなります。
Solid Edge開発元のシーメンスが2017年3月にEDA(Electronic Design Automation)ソフトウェアのリーダーであるメンター・グラフィックス社の買収を完了しました。メンター・グラフィック社の代表的な製品には、設計者向けの熱流体解析ソフトFloEFDがあります。
買収によりSolid Edge版のFloEFDの提供が開始されました。これにより、Solid Edgeの形状データを用いてよりいっそう手軽に熱流体解析を行うことができるようになりました。
設計部門以外でのデータの参照のために無償で提供してきたビューワがST10で変わります。従来は、Solid Edgeデータを開くための無償の専用のプログラムを別に用意してきました。また、それとは別に、2D専用の無償プログラムなども提供しており、利用者は目的に応じて複数のプログラムから選択してインストールして利用する必要がありました。
ST10では、これらのプログラムをSolid Edge本体に統合しました。Solid Edge本体に対して、利用するライセンスを変更して適用することにより、通常の設計用3DCAD、2D用プログラム、ビューワに切り替えて使うことができるようになりました。
数多くの新機能を搭載したSolid Edge ST10は来年初頭の出荷を計画しております。
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