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DIPROニュース

2011

3月号

2011.03.10

ISO26262への取り組みと今後の展望について

最近、自動車業界で「ISO26262」という言葉を耳にされる方も多いのではないでしょうか。一方でISO26262とは何かを十分にご理解されていない場面に多々出会うことがあります。そこで今回、ISO26262とは何か、そのインパクトやITツールの役割として何があるのか、そして弊社のご支援内容を、以下にご紹介いたします。

自動車用機能安全規格(ISO26262)とは

車両開発の中で、安全な車載用電子機器を開発するために有効である開発手法や管理方式を体系化し規格としてまとめたものが「ISO26262」です。この規格の生い立ちは、品質規格(ISO9001など)、環境に関する指令(有害物質:ROHS指令など)をベースに、原子力発電の機能安全より生まれた電機業界一般向けのIEC61508の安全目標と安全策やAutomotive-SPICE(組み込みソフトウエア開発の標準プロセスモデル)の運用方法を活用して出来ているものです。その特徴を述べると以下の3項目となります。

  1. 電子制御機器で発生する故障やバグについて、その発生による危害度、頻度、回避性能(故障発生時、回避の有無や度合いを表す特性)に応じたランク付け(ASIL設定)を行う。
  2. ランク付けされたものに対応する安全策(例:ASIL DランクのECUのハードウエアの故障率は10-8/h未満のものを開発しなければならないなど)やトレーサビリティー機能を製品開発プロセスに折込み、運用する。
  3. 製品開発プロセスはV字プロセスで行う。

自動車業界へのインパクト

本規格は車載用電子機器を開発している企業(自動車会社、協力会社)のすべてが対象となっているものです。適用においては、以下を実現することが要求されています。

  1. 車載電子制御システムにおいて、各機能単位でASIL設定を行い、それに対応した安全策を設定し運用する。
  2. 各企業は機能安全管理者を任命し、機能安全計画(セイフティープラン)の策定と運用、および管理を行わせる。
  3. 機能安全に関する成果物(例:ソースコード、メディアなど)全てに対して、構成管理とトレーサビリティーを確保し運用する。
  4. 機能安全計画に記載されている工程における基準・手順・ガイドライン・チェックリスト・テンプレートなどのインフラを構築する。

現状における自動車産業界の構造を鑑みると、適用においては、自動車会社と協力会社を含めた全体としての取り組みが必要で、関係各企業はそれなりの組織・体制を構築しなければなりません。

ISO26262の導入プロセス

ISO26262の導入プロセス

一般的には以下のステップで導入していきます。

  1. まず、お客様の当該部門へISO26262の要件の周知徹底を図るため、教育を行います。
  2. お客様の標準開発プロセスに本規格要件を織り込むため、開発のあり方を決めます。
  3. 新しい開発のあり方を支えるために必要な仕組みやシステムを構築します。
  4. 出来上がった仕組みやシステムを遵守しながら業務を遂行し、必要に応じてメンテナンスを行います。

ISO26262におけるITツールの役割

ITツールの役割としては、大別して2つの種類があります。

まず1つ目は、業務に直結した使い方があります。具体的には、制御モデル/プラントモデル開発や組み込みソフトウエアそのものの開発などへの適用です。例えば、制御シミュレーションツールと制御モデルとの連携を行うITツールなどがあります。

2つ目は、機能安全に関する成果物の構成管理とトレーサビリティーを実現し、運用するシステムがあります。この運用システムでは成果物を管理するため、既存のBOMシステムやCADデータ等の管理で活用させているPDMシステムと密接な関連を持つことが必須となります。その視点から見ると、PDMシステムとして存在させることが重要であると考えております。

DIPROにおけるご支援内容について

お客様がISO26262の要件を確実にご理解いただくことから、具体的な業務改善のご提案まで幅広くご支援させていただきます。

業務改善提案のイメージ
  1. 概要教育
    ISOで提唱している「V字開発プロセスとは」からISO26262での要求事項までを体系的にわかりやすくご紹介いたします。
  2. 専門教育
    ISO26262では、製品開発フェーズ(商品企画、製品設計など)に対応した形態で規格が定義されているため、対象部署毎に要求事項を体系的にわかりやすくご紹介いたします。
  3. 業務改善提案
    FIT/GAP分析(*1)を行い、ISO対応のための業務改善計画だけでなく、必要なITツールも同時にご提案いたします。

(*1) FIT/GAP分析
お客様の現状業務プロセスの成果物や管理手法を、ISOの要求している成果物、管理手法と比較させていただき、ギャップを洗い出します。

ISO26262は、2011年夏頃正式に発行される予定です。自動車メーカー様をはじめ、サプライヤ各社様では、この規格に準拠した業務の仕組みやシステムを構築すべく活動を開始されていると思います。ISO26262適用における不明点や疑問点などございましたら、ぜひともDIPROをお役立てください。

(第一エンジニアリングサービス部 シニアコンサルタント 今井 守)

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