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DIPROニュース

2007

9月号

2007.09.10

ブラジルをこの目で見て感じて

わずか1週間の短い期間ですが、サンパウロ近郊で開かれたConcurrent Engineeringに関する国際会議に参加するため、初めてブラジルを訪問しました。今回の出張で見聞きし、感じたことをご報告申し上げます。

ブラジルの都市は「近代的なヨーロッパ」

街中の様子
街中の様子

BRICsの一角と言うことで道路、電力、通信などのインフラも先進国に比べて整備が遅れているかなと想像していたのですが、見事に裏切られました。サンパウロ市のど真ん中を6車線の高速道路が突っ切っているし、周辺都市ともアメリカ並みのフリーウェーで連結されており、「中国、インド、ASEANとは歴史の重みが違う」と感じました。携帯電話もインターネットも整備されており米国と差がありません。

米国、ヨーロッパの都市との一番大きな違いは、日本車が走っていないことです。街中を走る車を見るとほとんどが欧州車です。日本のビッグ3が工場進出を本格化させ始めたので、5、6年で様子が変わるものと思います。ブラジルを強く実感するのは、買い物・レストラン・タクシーで全く英語が通じないことです。How Much?もOne、Two、Threeも通じません。久しぶりにボディランゲージを使いました。20年前のパリでもこれより良かったと思います。


国際会議を運営するブラジル人は陽気だけどいい加減

バンケット・ディナーの様子

「CE2007国際会議」は130名規模の国際会議で半数が欧州を中心に海外からの参加者でした。この規模の国際会議であれば、さぞかしきちんとした運営がなされるであろうと考えるのは日本人です。送迎のバスが来なかったり、企業見学バスの集合場所の案内が無かったり、あらゆることを自分で確認しないと自分の仕事が先に進みません。

少しオーバーな表現ですが、こんないい加減さを許容するのがブラジル流らしいです。待たされようとすっぽかされようと、恨みっこ無しで陽気に流すことが生活の知恵のようです。ビジネスはさておき、楽しむことは抜群にうまいように感じます。会議の運営の稚拙さに比べると「バンケット・ディナーでのダンスの催し」など、目いっぱいエンジョイしているように感じます。なかなか日本人はそこまで乗り切れません。


ブラジルでピカイチの飛行機製造会社ものんびりしたもの

EMBRAER社のジェット機

EMBRAER社の工場を見学しました。EMBRAERはなんと、ボーイング、エアバス、に次ぐ3位の飛行機メーカーです。国策で飛行機産業を育成し1990年に民営化したブラジルのトップ企業です。さしずめ、ブラジルのトヨタと言えるでしょう。

日本の飛行機会社も広いですが、ブラジルの工場はさらに広く、新しいだけでなく想像以上に清潔に保たれていました。車の工場に比べるとほぼ100%人手による組立てで、組立てラインと言うより、組立て治具の展示場のように感じられました。労働者は若い人が多いのですが、その割りにのんびり作業をしている感じです。全くあくせくしていません。これもブラジル流か?


ブラジルで日本企業が成功するには土着企業にならねば

足掛け28年間ブラジルに在住して一手にブラジルのコンピュータ・ビジネスを支えている「ブラジル富士通」の社長にお会いすることができ、貴重なお話をお聞きできました。

ブラジルのビジネスで成功するには、日本企業を相手にするのでなく、現地企業と商売しなければ駄目。そのためには現地に根付いてポルトガル語でビジネスができなければ駄目と、暗示的におっしゃっていたように感じます。コストの高い日本人を最小限に制限しブラジルの人材を育てる、気の長いビジネスが必要です。このくらいの覚悟でやらないと治安の悪いサンパウロで自身の安全を確保してかつ仕事の成果を上げることができないのでしょう!

BRICsと言っても全く異なる国民性

街中の様子

その歴史的な経緯から文化もビジネスも「欧州に近い」ブラジルです。国民のほとんどが外国からの移民がルーツなので、米国と同じ多民族国家です。人種差別が無く、向学心も高く、欧米文化とインフラが根付いているブラジルは、BRICsの中でも早くから経済発展が始まった国といえます。

しかし、ドラスティックに成長している中国に抜かれました。もちろん人口の差が大きいのですが、典型的なラテンの民族性が急激な成長を嫌い、「穏やかな成長」を選択しているように感じます。日本からの移民も相当数暮らしていることもあり、日本に対しては友好的です。その意味では自動車産業を始め、日本企業ももっとブラジルに注目してよいのだがと実感します。


やっぱり南米は遠い

日本企業のブラジル活用を躊躇させる最大の要因が「時間と距離の遠さ」です。今回は、フライトのトラブルにも見舞われ、藤沢の自宅を出てから現地のホテルに着くまで34時間掛り、帰りはさらに長い42時間も掛かってしまいました。

この心理的遠距離感を如何に克服するか?がブラジル・ビジネスを成功させる大きな要因のひとつです。これから日本の自動車業界がどのように克服していくか進展を見守りたいと思います。

今回の国際会議に招待していただいた福田収一先生に感謝

バンケット・ディナーの様子

今回は、元都立大の福田収一先生にお招き戴き、ブラジルの地まで出かけて国際会議に参加することができました。国際経験豊かな先生のお世話になり、国際会議を含めて貴重なブラジル体験をすることができました。先生のおかげで、少しブラジルびいきになりました。この貴重な経験を今後の仕事に生かして行きたいと思います。先生への感謝の言葉で、このブラジル出張の記事を〆たいと思います。

(デジタルコンテンツサービス部 部長 取締役 加藤 廣)

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