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DIPROニュース

2011

8月号

2011.08.10

NX-CAM 「MULTI BLADE」 機能ご紹介

NX-CAMの新機能としてインペラ加工専用モジュール「MULTI BLADE」機能が追加されました。インペラは自動車や航空機のエンジンに活用される部品です。圧型・樹脂型に比べて特別複雑な形状を持つインペラを加工する際は、5軸工作機をフルに使って干渉を回避しつつパスを作ることが必要となります。このため、複雑な工具軸制御や干渉回避動作の適用を自動で行い、CADで表現された滑らかな自由曲面が再現可能なツールパスを短時間で作成する「MULTI BLADE」機能が追加されました。

NX6以前での5軸機能でインペラ加工用ツールパスを作成する際は、干渉を回避しつつ効率的に加工を行うためのパラメータ設定に非常に手間がかかりました。NX7ではインペラ加工専用の機能として位置づけられている「MULTI BLADE」機能の追加により、大幅な工数の削減を図ることができます。

ここでは「MULTI BLADE」機能についてご紹介いたします。

インペラ加工に特化したユーザーインターフェース

(図1)オペレーション作成ダイアログ
(図1)オペレーション作成ダイアログ

NX-CAMの代表的なオペレーションタイプでは、荒加工、中仕上げ加工、仕上げ加工の区別なくオペレーション作成アイコンが提供されています。従来は、通常インペラ加工には使用されないオペレーションタイプも含め多数表示されるアイコンの中から、ユーザーが最適なオペレーションを選択する必要がありました。

ユーザーを問わずインペラ製作の加工工程において使用するオペレーションはほぼ同一であるため、MULTI BLADE機能ではオペレーション作成ダイアログでインペラ製作に特化した機能に絞ったアイコンを提供しています。同時5軸工作機を効率よく活用することを前提とし、荒加工用およびハブ、ブレード、ブレンド各部の中仕上げおよび仕上げ加工用サブタイプが提供されています(図1)。

工程全体で使用可能な形状設定

(図1)オペレーション作成ダイアログ
(図2)ジオメトリ設定ダイアログ

インペラを構成する形状要素そのものをジオメトリとして登録可能なため、従来のようにオペレーション作成の度にパート形状、チェック形状を個別に指定する必要がなくなりました。

システムはここで設定した形状の情報から各工程において加工対象部位と非加工部位を判断し、最適な工具軸の制御や干渉回避動作の適用を自動的に行います。

実際の操作では、「複数ブレードジオメトリ」ダイアログでツールパス作成対象としてインペラの底面部(ハブ)、シュラウド部、翼部(ブレード)の各形状要素を指定します(図2)。

少ない手数で加工パスを自動生成

「MULTI BLADE」機能による荒加工パスは同時5軸による等高線加工に類似したオペレーションです。等高線とは異なり、荒加工対象形状の上部と下部の曲面をモーフィングするツールパスを作成します。システムは、設定した形状情報から最適な工具姿勢を自動的に決定します。荒加工は時間を要する工程です。機械加工の時間を短縮するため、切削は繰り広げによる往復切削を採用し、移動時は円弧を付加し減速を最小限としています(図3)。

底面部の中仕上げおよび仕上げ加工も、荒加工と同様に工具軸を特に設定する必要はなく、翼間の干渉を自動的に判定し、干渉が発生しない滑らかなツールパスを作成します(図4)。

翼部の仕上げは、翼形状を設計通りの滑らかな自由曲面として再現するため、工具Rを活用したツールパスを作成します。翼を曲面に従いながらスパイラルにて加工し、さらに干渉による移動動作を発生させないよう、工具軸を自動的に制御したツールパスを作成します(図5)。

(図3)荒加工ツールパス
(図4)底面部中/仕上げ加工ツールパス
(図5)翼部中/仕上げ加工ツールパス

パラメータによる生成パスの編集が可能

(図6)詳細パラメータ設定
(図6)詳細パラメータ設定

加工パスは設定済みの形状情報から自動的に最適なパスが作成されますが、詳細パラメータを設定することでよりユーザーの意図に沿ったパスに編集することが可能です。ダイアログ上のパラメータ設定は、既存の加工ダイアログの内容にMULTI BLADEオペレーション用詳細パラメータ設定が追加されています。サブブレード(スプリッター)に対するツールパスの接続方法や工具軸をスムースに動作させるための工具軸設定等、インペラ加工のノウハウを数値として設定可能となっています(図6)。

NX6以前での5軸機能でインペラ製作が可能なNCデータを作成するためには、NX-CAMによるツールパス作成からVericutによる干渉/精度確認まで、1日程度の工数が必要でした。

これに対し「MULTI BLADE」機能では、インペラ製品形状と加工対象部位を指定するのみで、予め用意された荒加工から仕上げ加工までの加工工程を再現することで同時5軸加工用ツールパスを作成します。

この結果、ツールパス作成からVericutによる干渉/精度確認まで、1時間程度の工数にて作成することが可能となりました。
「MULTI BLADE」機能は、インペラ専用NCデータの作成時間を飛躍的に短縮させることが可能です。

(デジタルコンテンツサービス部 課長SE 鈴木)

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