日本機械学会は、歴史もあり総会員数3万8千人の日本で最大級の学術専門家集団です。20あまりある部門のうち、「設計工学・システム部門」が、設計工学とシステム工学を広くカバーし研究活動を行っており、「CAD」「最適設計」「知識工学」「感性設計」などのテーマで設計とシステムに関する幅広い学術情報の交換の場として機能しています。筆者の加藤は2007年から当部門の運営委員として、学会活動の活性化に努めております。2010年には長年の活動を評価いただき、「設計工学システム部門 功績賞」を受賞させていただきました。
8/26(金)~ 29(月)、上海・華亭賓館にて開催
今回で2回目となる本カンファレンスは、CADと設計分野の技術的情報交換の場として、「機械学会 設計工学・システム部門」と「The Society of CAD/CAM Engineering, Korea」が共催し2001年から実施されていたDEWS(*)をベースに、2010年から中国を加えた3カ国のミニ国際会議として開催されています。今年は中国がホストとなり、参加者188名(日本29名、韓国40名、中国110名、他)、論文が186件の中規模の国際学会となりました。
(*) DEWS : Design and Engineering Workshop
組織は日中韓各国のCAD/CAM団体の代表で構成されており、各国の幹事役は以下の3名です。
加藤はPLM WorkshopのCo-Chairを務めました。
会議ではDIPRO/iCADから下記3テーマの論文を発表しました。
VridgeRとiCADの論文発表は、DIPROの技術の優位性を日本国内のみならず、海外にもアピールしていきたい、との思いで今回はこの2件のテーマを取り上げました。
昨年、韓国済州島で開催された初めての「3カ国共催のアジア国際会議」に続いて2回目の開催でありました。中国から110名以上、中には遠方からの参加もあり、昨年以上の賑やかなカンファレンスになったと感じました。
開催場所が上海の中心でもあり出入りの激しいカンファレンスとなったため、各セッションの参加者は10数名から30名程度でした。少し寂しいセッションもありましたが、逆に参加者が少ないことが幸いし、どの論文も活発な質疑応答がなされていました。
今回、国際会議初参加の橘川、松波両名は、英語力の関係から一部質問に適切に答えられない場面もあり、苦労しましたがよい経験になったと思います。
来年は12月に北海道・ニセコで開催されることが決まったので、弊社のみならず、お客様にも参加いただける国際会議の場にできれば、と事務局の一員として願う次第です。
「上海万博・中国政府パビリオン」を見学
昨年10月で終了した「万博」のうち、中国政府館のみ継続営業しており、平日にも関わらず10台ほどの観光バスが止まり、会場内も当時をしのばせる混雑ぶりでした。上海の観光名所として定着したようです。
展示物は風力発電や電気自動車などの具体的な展示物もあったものの、ほとんどが「国威発揚」の展示であり、愛知万博で「トヨタや日立の民間パビリオン」が人気だった日本との大きな違いを感じました。
このACDDE 2011会議の前に、広州の東風日産テクニカルセンターとカルソニックカンセイ上海を訪問させていただきました。
初めての広州へのフライトで印象的だったのは「乗客が若手中年のビジネスマンばかり」で「観光ツアー客はゼロ」だったことです。水曜日のフライトで機内は満席状態で、震災後に日本中国間の行き来が減ったとは思えない賑わいでした。自動車都市とも言える広州の活動が活発化している証と思います。日系サプライヤの技術者の行き来が多いのでしょう。
上海は周辺都市へのアクセスセンターですが、規制もあるようで、上海自身に自動車産業が増えることはないのでしょう。しかし、中国のビジネスセンターであり、人口2,000万人、日本人居住者10万人の世界一の大都市であることは間違いのない事実です。今後も学術会議などを含め、国際的な活動においても東京をはるかに凌駕する世界センターであり続けるのでしょう。
報道によれば、上海港は世界一の荷扱い量を誇る世界一の貿易港で、日本全体の荷扱い量を上回るとのこと。もはや、規模の面では、日本がどんなに頑張っても足元にも及ばないのが現実です。
ただ、上海が国際都市になったとは言え、中国の英語力はまだまだと感じることも多く、街中では「BEER」も「ONE」も通じませんでした。一方、今回のACDDEを全面的に担った「上海交通大学」の学生は、英語で受付や発表のサポート業務をこなしていました。10年もたてば、一般のレベルでも日本の英語教育レベルを抜くに違いないと感じました。
経済力も人材力も日本を凌駕する中国といかに付き合うか、中国ブランド車を作る日産様のみならず、トヨタ様、ホンダ様も本格的な開発センターを中国に作り、技術移転を行うとの計画です。
ノウハウ流出の危険を抱えながら、技術移転をせざるを得ない今後の中国ビジネスへ、弊社も前向きに対応し、「お客様の困った」を支援する必要性を痛感しました。お客様や日頃ご協力いただいているパートナーの皆様方と共に考えていきたいと思います。
今回の日中韓国際学会議では、これまでと同様に、韓国の学者・専門家の勢いに圧倒されっぱなしでした。日本より韓国の方が参加者も発表論文も多く、その発表も、日本の参加者が冷静に自身の成果を報告している態度に比べると、韓国の発表者は皆、誇張し過ぎと捉えられるくらい積極的に自身の業績をアピールしていました。
そのほかにも彼らの「堪能な英語」「積極的な質問」には感心させられました。これは、米国で研究活動をして帰国し、韓国で活躍しているエキスパートがこの分野の学会をリードしていることが主な要因と思われます。「韓国恐るべし」が実感です。中国はまだそこまでではないと思いますが、取り組みの積極性を考えると「英語力」の面でも「中身の質」の面でも、日本をキャッチアップしつつあります。
これは、決して学会活動に留まらず、企業活動にも相通じるのではないかと思います。今後の世界の製造業ビジネスにおいて、韓国、中国が常に日本のライバルとして、接してくると思われます。日本も産学一体で研究や技術追及を図っていく必要があります。
筆者が参加している機械学会の活動は、弊社のビジネスの基盤作りに役立つのみならず、お客様への産学連携の橋渡しの役割も担えるのではないかと感じています。大手自動車メーカーなどのビッグユーザー様は別として、なかなか「大学などの研究機関と協業する」きっかけが少ないお客様が多いように感じます。弊社の学会活動が、こうした面でもお客様の研究活動へのご支援と仲立ちでお役に立てれば幸いです。
今後も、CAD/CAM/CAEや設計に関する研究動向を掌握し、お客様により良いサービスをご提供するために、大学などの研究機関との積極的な連携を図っていきたいと思います。
(技術顧問 加藤)
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