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DIPROニュース

2012

5月号

2012.05.10

モノづくり設計段階での品質コントロール
~Variation Analysisを活用した公差解析のご紹介~

日本では問題なくできていた製品が、同じ図面を使い海外で生産したところ品質を満足しないモノができてしまったということをよく耳にします。この問題の大きな要因の一つとして公差の指示方法があげられます。曖昧な要素が多い寸法公差を用いた図面が日本で成り立つ背景には、図面を受け取る熟練技術者達による品質の作りこみや、同一企業内や国内のアセンブリメーカーと部品メーカー間での設計・製造との密な連携による日本的なモノづくりがありました。

近年グローバル化による国際的な分業や海外における「安くて高品質」なモノづくりが求められており、「高い品質」と「コスト競争力」の両方を満足させることは大きな課題となっています。このような中、グローバル化による国際規格に準拠した幾何公差への対応や、3次元でのバラツキを考慮した公差設計など、品質に対する課題への対応が注目されています。

今回は「高い品質」と「コスト競争力」の両方を満足させるために注目されている幾何公差を適用した3次元公差解析アプリケーションについてご紹介いたします。

公差、公差解析とは

公差とは基準値に対するバラツキや誤差の許容範囲のことです。モノづくりの過程において品質のバラツキは必ず存在しており、製品開発、製造にとってバラツキは切っても切れない関係にあります。一般的に品質を上げるために公差を厳しくするとバラツキは減りますが、作業の手間や時間が増え生産能力が低下し、製品価格は高くなってしまいます。反対に公差を緩めると生産能力は向上し製品価格も安くなりますが、品質が確保されるか懸念されます。

公差解析とは、製品図面や3次元データに設定された公差によってバラツキのある部品をアセンブリした際のバラツキを計算することです。公差解析を行うことで、後工程のモノづくり現場において、無理な組み立て作業やコスト増に繋がる要因がないかを事前に検証し、効率的な公差設定、より品質の高い製品設計が可能になります。

Variation Analysisのご紹介

Variation Analysisは製造プロセスと組み立てプロセスをシミュレーションして、バラツキ度合いとその原因を予測するために使用されるTeamcenter VisualizationというViewer上で稼動する3次元公差解析のアプリケーションです。

Variation Analysisの特長

入力データはJT変換された3次元データを使用します。そのため、CADに依存せずCAD環境に影響されません。また3次元データを使用することにより視覚的にも確認しやすく、デザインレビューなどで大きな効果を発揮します。

解析計算はモンテカルロシミュレーション法が用いられており、与えられたシミュレーション回数を繰り返し実行し検証を行います。解析精度を向上させるためにはシミュレーション回数を増やす必要がありますが、実際に起こりうる事象に非常に近い結果を得ることができます。

Variation Analysisを活用することにより、モノづくりの設計段階から3次元データを活用してアセンブリ品質の検証が可能になり、さらに検証結果に余裕がある場合は、公差を最大限にすることで、品質を下げることなく製造コストの大幅な削減を実現することができます。

3次元公差解析の流れ

Variation Analysisを活用した3次元公差解析の流れを簡単にご紹介します。

①  製品の組み付け順設定 : 製品の組み付け工順に従ってアセンブリを作成します。
②  公差の振り分け : 機能や性能から管理値を決め部品に公差を振り分け、Variation Analysisを使用し、Viewer上の3次元データに必要な公差を設定します。(図1)

図1. 公差設定

③  拘束条件の設定 : どの部品のどの部位がどの部品のどの部位へ組み付くかの拘束条件を設定します。
④  管理部位の設定 : 組み立て性や性能への影響を確認するために、最終的に求めたい検証部位を設定します。検証部位は複数設定することもできます。
⑤  解析の実行 : 最適な公差となるまで、検証を繰り返します。
⑥  解析結果の確認 : 以下のような出力結果により、解析結果を容易に確認することができます。(各計算結果は一例です)

  • 各公差設定部位の感度(図2)
図2. 複数部位を同時に解析した結果
  • 工程能力指数(図3)
図3. ヒストグラム分析結果
  • 各部位のバラツキへの寄与率(図4)
    解析結果に対し、どこの部位がバラツキへの寄与率が高いかを確認できます。工程能力を改善する際、効率的に行うことができます。
図4. 解析結果バラツキ部位の寄与率

設計から生産までのプロセスを通しての効率化へ

生産段階での不具合は時として時間と労力を費やす設計変更を伴う可能性があります。そのため、設計段階から公差を検証することができれば、バラツキに起因する不具合を低減することが可能です。

Variation Analysisを活用した公差解析にご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。お客様の環境に合わせた導入のお手伝いをさせていただければ幸いです。

(第一エンジニアリングサービス部 西山)

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