多くのお客様が製品開発のデジタル化により開発期間の短縮や効率化を実現されていますが、激しい国際競争が進む昨今、さらなる期間短縮や効率化を強く要求されていることかと存じます。
本稿ではそのようなお客様をご支援させていただく「CADカスタマイズサービス」についてご紹介いたします。
ここでは、カスタマイズの代表である繰り返し作業や、標準機能の組み合わせによる「自動化」を例に取りご説明します。CADの操作を自動化するということは、それまでお客様が手操作で行っていた作業をなくすということですから、
といった効果を期待できます。機能によって工数の削減量は異なりますが、下図の属性設定機能の場合は90%を超える作業工数の削減を実現することができます。
また、お客様の業務に合わせ、CADの標準機能にはないお客様業務に特化した機能を開発しご提供することも可能です。独自機能の開発では、弊社SEがお客様先に直接訪問させていただきます。お客様の業務手順や課題をお聞きした上で最適な仕様をご提案し、より効果の高い機能をご提供いたします。
このような、作業の自動化や業務手順の効率化などのカスタマイズ機能を活用することにより、開発業務の「工数削減」や「期間短縮」、「データ品質の向上」といった効果を得ることができ、結果的にお客様の製品力強化につながっていくものと思います。
それでは実際にどのような機能を実現できるのか、設計作業フェーズごとに事例をご紹介いたします。
データ作成基準に合わせた作業の自動化を実現することができます。
【事例】 レイヤ自動設定機能
CADモデル内の各要素を、タイプ別にデータ作成基準で定められたレイヤに自動設定する機能です。オブジェクトごとに操作が必要なレイヤ設定が、アセンブリごとに一括で自動設定されるため、レイヤ設定の作業工数を大幅に削減するだけでなく、設定漏れなどの作業ミスも大幅に削減できます。
CADデータや電子化されている付属情報を元に部品表や加工図といった各種帳票作成の自動化を実現することができます。
【事例】 穴図面の自動作成機能
選択された穴に対して配置寸法、径寸法および備考を自動作成します。穴形状の選択のみで寸法が自動作成されるため、穴図面の作成工数を大幅に短縮できます。
CADデータをリリースする前に製品形状が規定の品質、法規などをクリアしているか、CADデータがデータ作成基準通りに作成されているか、といったチェックを行う仕組みを構築できます。
【事例】 液面検討システム
液体容器に対して指定された容器姿勢、容量における液面高さモデルを自動作成し、モデル形状が所定の基準を満たしているかチェックします。モデル作成により液面高さを可視化できるため、検証作業を大幅に効率化できます。
会社間、または自社の部門間で発生するデータ流通に対して、データ授受の自動化や汎用フォーマットでは授受できない情報を流通する仕組みを構築できます。
【事例】 データ交換システム
CADデータからJT、IGESなどの汎用フォーマットへの変換、変換データの配信準備までを自動化します。フォーマットごとに変換後、お取引先企業ごとのフォルダに自動的に格納されるため、変換の作業工数と配信ミスを大幅に削減できます。
その他にも、カスタマイズ機能の導入により大きな効果を得られたさまざまな事例があります。
ここまでは一般的なカスタマイズのご紹介をしてきましたが、ここで弊社が今年度より取り組んでいるカスタマイズ手法、「チェックアウト方式」についてご紹介いたします。
通常、CADのカスタマイズではCADが提供するAPI(Application Program Interface)やCADが持つ標準機能を組み合わせることでカスタマイズ機能を実現するため、大きな効果を得られるケースもありますが、一方でCADが持つ性能に制限される、あるいは実行中はCADのライセンスを占有してしまうなどの課題が生じます。そこで、これらの課題を解消するため、長年の開発実績とCAD技術の研究で培った弊社独自の技術による「チェックアウト方式」のカスタマイズ手法をご提案させていただいております。
チェックアウト方式とは、CADの形状データを外部アプリケーションで扱うカスタマイズ機能です。従来CADの内部で行っていた処理をアプリケーション化することによってCADへの依存度を減らすことができます。
適用事例としてはレイアウト検討時などに活用される、「外装抽出機能」(本稿の冒頭で掲載した画像例)やデータの「干渉チェック」があります。「外装抽出機能」は、元データより大幅に軽いデータ(メモリ使用量で50%以上の削減)を作成するために独自の図形処理技術によりCADデータの内部形状を削除していきます。「干渉チェック」では部品の総当たりチェックを行います。いずれも大規模アセンブリデータを扱うには多大な作業時間を必要とし、しかもこれらをCAD上で行うとなると、長時間CADを占有することになります。しかし、チェックアウト方式によるカスタマイズ機能を活用することにより、バックグラウンドで実行させながらCADを別の作業でも使用できるため、業務の大幅な生産性向上が図れます。
本稿でいくつかのカスタマイズ事例をご紹介させていただきましたが、実際にカスタマイズする内容はお客様の業務内容や業務手順によって異なります。
弊社では「長年の開発実績で培ってきた強み」を活かして、それぞれのお客様に合わせた最適なカスタマイズをご提案させていただきますので、まずはお客様の「~で作業時間がかかって困る」、「~の操作が使いづらい」といった困りごとをお気軽にご相談いただければと思います。
(技術ソリューション部 富川)
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