明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年も引き続きお引き立ていただきますようお願い申し上げます。
昨年は、東日本大震災からの復興元年と言われスタートをきりましたが、現実には復興の足取りは重く、復興需要による経済の押し上げもさほどではありませんでした。そして、なかなか収束しない欧州発の世界経済の混乱と超円高環境の継続、リーマンショック以降世界経済を牽引してきた新興国の経済成長の陰り、加えて秋口には領有権問題に端を発した中国での反日運動と、日本の産業界にとっては傷も癒えぬ内に、また新たな課題に直面した形となりました。
思い起こせば、バブルの崩壊以降、失われた10年がいつの間にか20年となり、その後にはリーマンショック、東日本大震災、そして上記の諸外乱と、立て続けに大きな荒波に襲われ翻弄されてきたように思います。そして、その都度、危機をバネに次の飛躍へと頑張ってきたわけですが、これだけ続くと、そうした対処だけではもはや抗しきれないという感じを持ちます。気まぐれで何が起こるか予測ができない不安定な環境の中で、外乱は当たり前、どのような事態となっても生き残り、成長していける体質づくりが大切に思えてきます。
そうした組織体質を形づくる要素の一つが、したたかな柔軟性にあるように思えます。そして、それを可能としてくれるのは、人材の多様性だと思います。経験、性別、国籍、世代等々、いろいろな切り方があると思いますが、予期せぬ事態に直面したときには、それまでの常識が、いとも簡単に非常識となることもありますし、全く新しい処し方が要求されることもあるでしょう。今まで、目立たなかった人、あるいは考え方が急にクローズアップされることもあると思います。
一方で、多様性豊かな集団は、種々の軋轢を生みやすく、ベクトル合わせにも大変な力が必要であり、ともすれば均質な集団を作りがちになります。当たり前の話ではありますが、企業としてのビジョン、あるいはコアとなる価値をはっきりと示すことにより、多彩な個性を束ねつつ、予期せぬ環境変化に対して、それら個性や異才を活かして、したたかに、かつ柔軟に立ち向かっていけるようにしていくことができればと考えています。
京セラの稲森 和夫氏が実践された経営では、自律的に活動する小集団をアメーバと例えておられます。このアメーバという生物は、実際に目にする機会はほとんどないわけですが、常に外見が変わり続け、一生の内で二度と同じ形をとらないと言われており、不定形なものや変幻自在な様を例える言葉としてもよく使われています。アメーバが環境に合わせて緩やかに形を変えながら、回り道をしながらも目指す方向に進み、成長し命をつないでいく。柔軟さやしたたかさ、そして生命力を感じさせる。そうした組織集団ができていけばと考えています。
翻って、私たちの周囲を見渡してみると、モノづくり日本と言われて久しいのですが、その強さのエッセンスとは何なのか、突き詰めて考えることが必要な時期にあるように思います。なぜならば、否が応でも製造業は形を変えていかなければなりませんが、その際、忘れてはならないもの、あるいは堅持すべきものは何かを意識することが大切で、そのためには、日本の企業の強さの本質を改めて言葉にしておくことが重要だと思います。
今年は巳年です。巳年の意味するところの蛇は、脱皮を繰り返して成長することから、死と再生、あるいは多産と豊穣を意味すると言われています。私達もそれにあやかって、芯を変えることなく、古い皮を脱ぎ去って、したたかに成長していきたいものです。
重ねまして、本年もお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
(代表取締役 社長 山田 龍一)
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