近年、3Dデータの活用が求められている中で、製品形状のみならず公差や属性情報を付加した3D単独図の適用が自動車業界を中心に進められています。3D単独図の活用により、補助的に作成される図面も廃止される傾向にあります。しかしながら、生産現場では、3D単独図が流通しても3Dデータに含まれる公差や属性情報を活用せず、新たに2D図面を作成するため、2D図面作成のための作業と工数は必要不可欠とされています。この結果、2D図面作成は生産現場で要求されるQCDの向上に対し、大きな負担となっています。
NXでは3D単独図を作成するための機能としてProduct Manufacturing Information(以下、PMI)が提供されているだけでなく、さらにCAM機能ではPMIを活用することが可能なFeature Based Machining(以下、FBM)が提供されています。これら機能を使用することにより、3D単独図中の製品形状、公差情報および属性情報を活用し、NCプログラムを自動的に作成します。
ここでは生産現場での業務効率化として、3D単独図を活用したNCプログラムの自動作成についてご提案いたします。
NCプログラムを作成するには、加工(工具)方向を決め、工具を選択する必要があります。FBMは3D形状から加工形状を認識し、加工方向と工具を選択することが可能です。加工形状は穴であれば、その径や深さ、ポケットやサーフェスであれば長さや幅といった値をパラメトリックに数値情報として読み取ります。(図2、図3)それらの数値を使用して必要となる工具径などを求めます。
図2.穴の認識
図3.面(ポケット)の認識
3D単独図は、3D形状だけでなく、寸法やそれに伴う公差情報、注記や属性情報などがデータの中に含まれています。FBMでは、NXで設計した際に付加されたPMIと呼ばれる3D寸法注記情報や色情報、面の属性情報を読み込み、それらの情報に基づいたNCプログラムを作成することが可能です。(図4)
NXのPMIは、JISはもちろん、ISOやASME、JEITAといった規格に対応しています。また、今後は他CADで設計した3D単独図にある3D寸法注記情報も、JTを通してNXに取り込むことが可能となる予定です。
このようにFBMは3D単独図を活用し、NCプログラム作成業務の効率化を進めていきますが、NX8.5の新バージョンではさらなる効率化を行うため、次の2つの機能が追加されました。
①ティーチングフィーチャ
以前のバージョンでは加工形状として標準で用意されている形状だけを読み込み、自動でNCプログラムを作成することができましたが、それ以外のユーザー独自の加工形状に対しては手動で設定する必要がありました。
最新のNX8.5では、ユーザー独自の加工形状を定義できるようになりました。(図5)
これにより、手動で加工パスを定義するしかなかったユーザー独自の加工形状に対しても自動化することができ、よりNC作成業務の効率化を図ることができます。
ティーチングフィーチャではサンプルとなる3D形状と加工部位を判断するのに必要となるパラメータを、3D寸法注記を用いて定義します。(図6) パラメータ名をテキストで入力し、そのパラメータに公差を認識させたい場合は公差を定義します。
②ティーチングオペレーション
以前のバージョンではノウハウの追加や修正などがあった場合、専門のエディタを使用しなければNCプログラムへ自動的に反映することができませんでした。現在のバージョンでは、エディタを使うことなく、NX上でオペレーションとフィーチャを指示することで、加工のノウハウを定義し、NCプログラムへと反映させることができるようになりました。(図7)
NX上で定義した加工ノウハウはエディタでも編集が可能です。
3D単独図の適用が迫る中、さらなる業務の効率化に向けて各社様、ご検討されていることと思います。弊社ではFBMの機能に関するお問い合わせとともに、ルールのまとめ方や標準化の進め方などのご相談も承っております。
(デジタルコンテンツサービス部 清水)
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