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DIPROニュース

2013

10月号

2013.10.10

NX/金型オプションの新機能紹介

金型オプションは、2013年9月に新バージョンV16.1をリリースしました。新バージョンには、金型設計者の負担軽減とモデリング作業の効率化を狙いとしたE-PIN機能と入れ駒機能を追加しました。今回は、金型オプションの概要とこれら新機能についてご紹介します。

開発の背景

製造業の海外生産シフトが増加している影響を受け、日本国内の金型製作単価は、海外金型メーカーの安い単価と比較されることや、日本国内金型メーカーによる低価格競争などにより下落してきました。また、最近の商品ライフサイクルは、一気に売れ一気に売れなくなる傾向があり、商品を素早く市場投入する必要があります。このため、発注元の企業からは、短納期を求められています。安くなった金型製作単価に対応するための生産コスト削減、発注元からの短納期要求に応えるための生産リードタイム短縮が、日本国内金型メーカーの課題となっています。金型オプションでは、これらの課題を解決するために、機能改善を継続しております。

金型オプションの概要

金型オプションは、NX上で稼動する3次元樹脂金型設計支援システムです。パーティング面作成や型分割などの入れ子設計機能、モールドベースや金型部品を登録・配置できる部品DB機能、部品表出力などの情報出力機能など、金型設計に役立つ効果的な機能があります。

特徴1
パーティングライン検討など設計者の考察が必要な工程を支援できます(図1)
特徴2
型分割作業のように煩雑なモデリング作業が必要な工程を半自動化できます(図2)
特徴3
社内規格を部品として登録できます(図3)
図1.例)PL編集機能により、PL検討を支援 図2.例)型分割機能による自動型分割 図3.例)スライド機構部品を部品DBに登録

E-PIN機能

エジェクタピン(射出成形された成形品を金型から押出すピン)設計は、径寸法・長さ寸法・配置位置・強度計算など、検討する項目が多い工程で、1本あたりの作業工数が掛かります。また、本数が大量にあるため、設計者にかかる負担が大きい工程といえます。設計者の負担軽減と効率向上のために、設計検討が必要な工程を支援するE-PINシンボル配置機能と、モデリング的な作業を自動化するE-PIN作成機能を開発しました。これにより、従来の1/5で作業できるようになりました。

・E-PINシンボル配置機能

規格品名、径寸法と配置位置を指定し、E-PINシンボルを配置できます。2次元的にエジェクタピン先端形状と成形品との位置関係(図4)や、つば同士の干渉(図5)を検討しながら配置することができます。

図4.E-PINシンボル配置 図5.つば同士の干渉検討

・E-PIN作成機能

従来の手法では、エジェクタプレートから成形品までの距離を測定し、寸法を1本ずつ検討し作成する必要がありました。E-PIN作成機能は、配置された複数のE-PINシンボルに対し、一括でエジェクタピンソリッドが作成されます(図6)。寸法は自動設定されるので、入力する必要がありません。エジェクタピン先端を成形品でトリムした後、品質に問題のない範囲で先端形状を平面近似できる場合は、先端加工の規格品に置き換わります(図7)。これにより、高価となる特注品でなく、安価な規格品を配置することができます。

図6.エジェクタピン自動作成 図7.規格品置換え

入れ駒機能

入れ駒設計は、分割曲線を詳細に検討する設計工程と、分割曲線を利用して入れ駒を分割する作業、入れ駒につばを作成する作業、つば穴を作成する作業などモデリング的な作業工程が必要です。後者のモデリング的な作業工程は、モデリング操作が煩雑なため作業工数が掛かり、設計者の負担が大きい工程といえます。設計者の負担軽減と効率向上のために、モデリング的な作業を半自動化できる入れ駒分割機能、入れ駒つば付け機能、入れ駒つば穴減算機能を開発しました。これにより従来の1/10で作業できるようになりました。

・入れ駒分割機能

入れ駒設計では、射出成形時に金型内部に溜まった空気を逃がすために、金型ソリッドを分割して入れ駒ソリッドを作成し、隙間を設けるように設計します。従来の手法では、分割したい曲線群から閉ループを作成し、閉ループを利用して金型ソリッドから1つずつ分割する必要がありました。入れ駒分割機能は、ダイアログメニューのボタンをクリックするだけで、曲線群から閉ループが検索され(図8)、閉ループごとに入れ駒ソリッドが一括で分割されます(図9)。曲線群は、重なっていても交差していてもかまいません。どのような状態でも閉ループとなる部分があれば検索されます。

図8.閉ループ検索 図9.入れ駒分割

・入れ駒つば付け機能

入れ駒設計では、入れ駒を金型に組み付けた際、抜け落ち防止のために、入れ駒につばを作成します。従来の手法では、煩雑なモデリング操作が必要でした。入れ駒分割機能は、フェースを選択するだけで、つばを作成するフェースの大きさに合わせて、つばソリッドとつば穴ソリッドが作成されます(図10)。エジェクタピンなどつばに干渉するものを避けて、つばソリッドを作成することもできます(図11)。

図10.つばソリッド、つば穴ソリッド作成 図11.角エジェクタピンを避けてつばソリッド作成

・入れ駒つば穴減算機能

入れ駒設計では、つばが収まるような穴を金型に作成します。従来の手法では、つばに干渉するソリッドを探し、1つずつ穴減算を行う必要がありました。入れ駒つば穴減算機能は、ダイアログメニューのボタンをクリックするだけで、つば穴ソリッドに干渉する金型部品ソリッドが検索され、一括で減算されます。

導入効果

今回ご紹介したE-PIN機能と入れ駒機能は、山形カシオ様の「ハイネットモールド」の金型設計で使われています。ハイネットモールドとは、山形カシオ様が独自に開発された金型生産自動化システムで、金型の設計や加工用データの作成、製造などの工程を大幅に自動化することで受注から納品までのリードタイムを従来の7割に短縮されています。

ハイネットモールドの概要図

「ハイネットモールド」の金型設計(上図「ハイネットモールド概略図」の赤枠部分)で使われている機能は、金型オプションをベースに山形カシオ様が開発されています。山形カシオ様が開発された機能と金型オプションの機能を合わせると、自動化率が約80%となり、例えば携帯電話の金型の場合、設計工数は従来比1/3まで削減されました。このようにE-PIN機能と入れ駒機能は、実際の業務で効果が確認されている機能です。

山形カシオ様のご協力について

E-PIN機能と入れ駒機能を開発するにあたり、山形カシオ様には、金型設計の技術的なアドバイスや機能要求出し、開発した機能の業務トライアルの実施、導入効果の確認についてご協力をいただきました。

今後の計画

金型部品ライブラリをさらに充実させます。機能開発は、技術協力をいただける企業様と連携し、確実に効果のある機能を増やしていきます。機能開発にご協力いただけるという企業様がございましたら、ぜひご連絡ください。

(デジタルコンテンツサービス部 坂元 敦)

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