2024年12月5日(木)、パシフィコ横浜において「デジタルプロセスセミナー2024」を開催いたしました。
コロナ禍前まで継続していた自動車産業のお客様向けのオートモーティブデジタルプロセスセミナーと、年始に名古屋地区で開催していた新春セミナーを見直し再スタートした内容としております。弊社の発祥である自動車産業由来の内容も大切にしながら、全ての製造業のお客様に提供させていただくべく構成しました。ご来場の皆様ならびにご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
自然災害や世界情勢の混乱など社会課題が増え続けている現在、AIが生成する情報が増え、SNSの中ではソーシャルボットが情報を作り続け、頼るべき情報の不明確さも増しています。これらの結果として、情報の信用度が低下し、これからの未来を見通すことは極めて難しいものとなっています。一昔前まで「情報は武器である」、「数多くの情報を得て、活用することが強みだ」という見解が主流であったはずが、今ではFACT(真実)こそが求めるべきものである、という価値観に方向転換しているようです。
このような時代であるが故に、二次情報よりは現場から得られる一次情報が求められ、環境や背景が異なる過去の情報よりも最新・最先端の情報が求められているかと思います。
こうした状況を踏まえ、今回のセミナーは、「製造業のデジタルトランスフォーメーション~開発・生産プロセスの革新、最前線~」というテーマで構成いたしました。この分野の有識者、製造業界の企業様を講師にお迎えして、最新の取り組みをご講演いただきました。
本日のこの場の意味は、信頼のおける情報を得て、答えを探すきっかけを得ることや共に歩む仲間を得ることかと考えております。それが目の前を照らし、歩みを支えるものと考えます。
ここで得られる情報が、皆さまの現場にある課題を解くためのカギを見つけるために役に立てば有難く思いますし、セミナー終了後の懇親会では、ネットワーキングによって新しい仲間を見つけていただければ幸いに存じます。
日本の製造業では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用が検討・試行されています。真の変革を実現するDXの為の組織変革と人材戦略の具体的方法についてご講演いただきました。
近年、日本の製造業を取り巻く環境は、少子高齢化による人材不足の深刻化、且つニーズの多様化や競争激化の中、より高い付加価値を生む仕事が求められています。そこでは新しい価値創造に向け必要な役割を整理し、関係部門のみならず、時には異業種の会社ともデジタル技術で連携するといった柔軟な組織・働き方の変革が重要となります。これらの変革こそがDXの考え方であり、AIやデジタル技術の活用次第では会社の規模に関わらず「身の丈以上のチャレンジ」を可能にします。よってDXの成功は、これらの変革をリードする経営層のマインドチェンジから始まるとご説明いただきました。
また、近年は製造業でもウェルビーイング(Well-being)が重要視されてきており、ITによる利益の最大化からDXによる幸福(働き甲斐)の最大化への挑戦についてもDXの果たす役割の1つとしてご紹介いただきました。
人材育成については、AIを活用した個人のスキルギャップ分析による個別の学習プログラムの作成や、バーチャルメンタリングで上司と部下の人間関係を分析するなど、社員を大切にする人的資本経営に近い人材育成プログラムへの取り組み事例をご説明されました。
最後にDX時代の人材育成で重要となる「ビジネス創成教育」の観点から、これまでの人事部主導の教育だけではなく、現場主導の企業内大学の在り方やその有効性についてもご紹介くださり、講演を締めくくられました。
東京エレクトロン様は、ユーザーの多様な要求仕様に基づいた半導体製造装置を市場に提供するために、技術開発や業務プロセスの改善に取り組まれています。
2030年には現在の倍となる一兆億ドルと予想される半導体市場である一方、製造装置メーカーの観点では開発、生産にかかるコストや時間、人材不足など、従来の手段では解決できない課題の解決の一つがデジタルトランスフォーメーション(DX)であると考え、AIやデジタル技術を活用した未来の半導体製造のビジョンをお話いただきました。
ユーザー視点での製造装置の製品ライフサイクルをベースに、膨大な量の材料候補から短時間での適切な材料の選定、実機試作をデジタルツイン上で実現することでの様々なリソースや労力の削減、テストランの自動化による安全かつTime to Marketの実現、装置稼働率の最大化に向けたセンシングとアルゴリズムによる自立化などを例に、AIやデジタル技術を活用して得られるメリットや適用する上で重要となる適切なデータの蓄積、モデリングの推進、AIと人の役割分担などについてご説明いただきました。
最後に、ICTなどデジタルの力によってグリーンな社会を実現していくGreen × Digitalの視点にも触れ、半導体の技術進化と豊かで持続可能な未来に向けて半導体業界の発展に貢献したいとの思いを語られました。
ヤマハ発動機様は、マリン事業において「信頼性と豊かなマリンライフ」というビジョンの下に船外機、周辺機器、ボートなどの製品開発を行われており、業界をリードされています。
今回、『マリンエンジンにおけるデジタル活用の現状と今後』についてご講演いただきました。
などについてご説明くださいました。
今後の各種開発については、お客様のご要望に対し如何に早く開発を進めるかに重きを置かれており、デジタル技術を駆使したマリンエンジン解析や制御開発の成功事例をもご説明いただきました。
尚、マリンサービスの楽しみ方などもご紹介され、皆様に少しでもマリンライフにご興味を持っていただきたいとの思いを随所でお話されていました。
最後に、日本でモノ創りを進めるマリンエンジンは、製品、ビジネスにおいてもデジタルが必須との認識であり、「信頼性と豊かなマリンライフ」の下、事業全体でデジタルを活用した真のDX実現を目指すと締めくくられました。
中期経営計画Ambition2030の取り組み、1)電動化の推進、2)モビリティの革新、3)エコシステムの構築についての概要紹介を皮切りに、近年特に重視されている「持続可能で魅力的なクルマ」と「継続的な体験価値」について、DX / AIを取り込んだ開発の様子をご紹介いただきました。技術ソリューションの用意がエンジニアの命題であると述べられました。
操縦安定性能、衝突性能、空力性能などの車両性能をより高めて短期間で開発する仕事のやり方や、市場EVのビッグデータを活用したバッテリー再生の取り組みを例に、幅広い技術リテラシーが必要となってきている様子が示されました。データアナリストとエンジニアとの協働により製品開発に役立つ新しい気付きをもたらしている構図も解説いただきました。
体験価値を継続的に提供するパートでは、お客様が求めるサービス体験を先読みして、PF(プラットフォーム)やイネーブラを準備しておくことが重要とのメッセージを頂きました。日産車に盛り込まれている各種B2C・B2Bサービスが紹介され、またそれらを実現する内製 / 外製アセットを大きなEnd to End システムとしてインテグ開発していく様子の中にも、CI / CD、MILS、HILSなどDXツールを積極的に導入している様が垣間見えました。
今後SDV PFが導入され、より大量のデータを活用できる事により、自動運転など車両機能のアップデートも積極的に行っていくとのことでした。
また人材育成として、10年近く前から始めたソフトウェアトレーニングセンターでのソフト・メカトロ教育により、多くの従業員がスキリングサポートされています。このような取組みの甲斐もあり、昨今では車両販売後のOTAによるアップデートアイテム創出活動や異業種企業様との共創活動も盛んになってきたとのご説明をいただきました。
最後に、UpToDateな製品やサービスを提供していくためには、技術、ツール、そして人の力が必要であり、技術者は、パートナー様と共に進化するツールを使いこなせるよう成長し続けることが重要であるとのメッセージで締めくくられました。
今回、5年振りとなるパシフィコ横浜での開催となりましたが、皆様の温かいご支援とご協力のおかげをもちまして、滞りなく終えることができました。日々のお忙しいスケジュールの中で時間を割いてくださったお客様、遠方よりお越しいただいたお客様に改めて御礼申し上げます。
弊社は、本セミナーを日頃お世話になっている『お客様への感謝』を示す場として位置付けております。至らぬ点も多々あったと思いますが、アンケートや懇親会の場では“大変参考になった”、“懇親会の交流が有意義であった”などのお言葉を多く頂戴しました。大変うれしく思っております。一方、セミナー運営改善に向けた貴重なご意見も多く頂きました。今後のセミナー企画に活かし、より魅力的な場とすべく尽力してまいります。
最後になりますが、これからもDIPROは社員全員が一丸となって、お客様に寄り添いながら、お客様のモノづくりを支え、デジタル化を旨とするプロセス革新をご支援してまいります。今後ともお付き合いの程よろしくお願い申し上げます。
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