2022年3月にCGTech社よりVERICUTの新バージョンがリリースされました。
新バージョンのVERICUT V9.2ではシミュレーション速度の改善や使用可能な工具の追加、最適化に関する機能追加など、多くの機能改善でより使いやすくなりました。
今回はその中でも、1) 干渉チェックの精度と速度パフォーマンスの向上、2)シミュレーションに役立つ新機能の追加、3) 最適化オプションモジュール、「Force」の新機能についての3点をご紹介します。
生産準備業務におけるリードタイムの削減を検討するにあたって、シミュレーション時間は大きな課題となりますが、今回のバージョンアップによってシミュレーション速度が大幅に改善され、ユーザビリティが大きく向上しました。特にポリゴン数が多い詳細なモデル間の干渉チェックや旋削加工(大型部品の内径加工等)の速度と精度が改善されています。その他にも、シミュレーション精度に関わる切削解像度や大容量3Dモデルの影響によるパフォーマンス低下が改善されました。
本バージョンアップにより、今まで時間がかかっていた高精度で処理を行うタイトな切削解像度での材料除去シミュレーションが最大30%高速化され、シミュレーション業務の短縮が見込めます。
今回のバージョンアップではシミュレーションのための新機能が多数追加されています。工作機械の設定では、今まで干渉チェックでのみ設定できた近傍警告がリミットオーバーに対しても適用されるようになりました。
本機能は「工作機械の設定」(図1)から設定可能です。動作軸最小(最大)値を基準として値を入力すると、軸動作が設定を超過した場合、VERICUTログ領域に警告のメッセージが表示されます。本機能により機械の可動限界だけでなく安全マージンを加味した値で切削シミュレーションが出来るようになりました。
工具の設定ではクーラントスルータイプのチェック機能が利用できるようになりました。従来ではセンタースルークーラントを使用する環境において、クーラントスルー非対応の工具を使用する場合、誤ってクーラントスルーを設定してもVERICUT上ではエラーを検出できず、実際の機械でエラーとなり手戻りが発生していました。
今回のバージョンアップでは工具ライブラリーの工具の情報に「クーラントスルータイプに対応」の項目が追加されました(図2)。この項目にチェックを入れない場合、クーラントスルーのGMコードが指示されたとき、VERICUTログ領域にエラーのメッセージが表示されます(クーラントスルーはコントローラのGコード処理から設定する必要があります)。本機能により、ビュー領域中に表示されないクーラントに関するチェックを強化することが可能です。
「Force」はNCデータの切削状況を把握し、送り速度を自動調整するオプション機能です。ワーク材質・工具材質・工具形状・切削条件等から工具にかかる切削抵抗値を計算し、加工パス全体において工具抵抗値が均一になるようにNCの送り速度を最適化します。送り速度を最適化することにより、加工時間を短縮できるケースがあり、工具寿命を向上させることにも繋がります。
VERICUT V9.2では情報グラフとForceチャートを結合した「グラフ」が新しく追加されました(図3)。
最適化された値と元の値との比較ができるほか、「結果からの学習」ではForceやオプティパスを使用時に、工具にかける負荷の程度について、最大から普通、保守的など幾つかのパターンで選択し、シミュレーションが出来るようになり使いやすくなりました。
また、旋削加工ではForceの「旋削の断続切削の補正」機能が追加されました。被削材の隙間や障害物を通過する動作の送りを減速し、断続切削の加工条件で使われる旋盤インサートの寿命を延ばすことに寄与します。
VERICUT V9.2ではご紹介した他にもレポートの機能強化や、新しい工具タイプの追加など、多数の新規機能、機能改善が行われました。VERICUTの新規導入、およびバージョンアップについてご興味のある方はお気軽にご相談ください。
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