MENU

DIPROニュース

2021

11月号

2021.11.10

電動システム開発支援サービスについて

DIPROはEV / HEV開発経験者によるLiイオン電池システムの開発支援サービスを2017年から実施しています。最近ではカーボンニュートラル・電動化の動きが加速する中、電池や電動パワートレイン等コンポーネントの枠を越えて、ご相談をいただくことも増えてきました。

そこで、電動技術の動向解説・教育から商品への適用企画、開発実務上の課題解決まで、幅広く承れるようにサービスの内容を見直し拡充を図りました。今回は事例の一つを紹介いたします。

A社様 電動技術シナリオ策定支援

電動新技術を市場導入するシナリオ策定を弊社の知見を基に支援しました。

まずは、電動車両の市場動向、種類、各システムの動作と言った電動車両の概要の説明を行い、次に自動車メーカーにおける電動車両の開発の在り方や技術課題について共有しました。

その上で、電動技術シナリオの軸となる技術ロードマップ作成の検討を共同で行いました。

お客様と共同で上記新技術の競争力の指標を導出し、市場導入シナリオの策定に貢献できました。

電動車両の動向

まず、現在の電動車両の市場動向・開発動向について調査し、DIPROの知見で取りまとめたものをご紹介しました。

資料1は、世界市場における電動車両の新車販売台数をグラフにしたものです。電動車両の販売台数は着実に増加していますが、比率ではまだ7%です。本格的な普及はこれから始まると言うことになります。また、EV、PHEVが伸長していることが判ります。

世界市場における電動車両の新車販売台数の推移
資料1 世界市場における電動車両の普及状況(各調査機関のデータを元にDIPRO作成)

カーボンニュートラル以外にも電動化を後押し、または阻害する社会情勢の要素があります。電動化の検討に当たっては、これらも念頭に置く必要がありますので、関連業界の各団体による対外発表資料・講演等をベースに下記のようにDIPROの知見をベースに取りまとめ、説明しました。

  1. エネルギー情勢
    • 化石燃料の枯渇の懸念、産油国や大手石油会社の思惑に基づく原油価格高騰
    • 太陽光ビジネスの台頭、原子力発電の浮沈、水素エネルギー実用化の機運
  2. 自動車所有の在り方
    • 大きな人口を抱える中国・インドにおける自動車普及(公害・貿易赤字の予防)
    • 格差社会の拡がりによる持たざる人達の急増に伴うGS空白地帯の出現
    • カーシェアリングの普及の動き
  3. 公害
    • 日本の高度成長期における排ガス問題、米カリフォルニア州の大気汚染
    • 急激なモータリゼーションの発達による中国における大気汚染
    • 酸性雨や焼き畑に伴う森林の減少・焼失(黒い森、アマゾン、東南アジア)
  4. 政治・経済
    • 石油価格の高騰、太陽光発電の低コスト化、電池の低コスト化
    • 守旧勢力によるロビー活動、政治家の無理解
    • 新興国の電動ビジネスへの参入(タイ、パキスタン、ポーランド、コスタリカ、etc.)

資料2 カーボンニュートラル以外の社会背景と電動車両

エネルギー情勢や社会の変化、政治・経済の情勢等が複雑に絡んで電動車両の普及に影響を与えています。

電動車両の種類と特徴

電動新技術を投下すべきシステムの組み方の参考として、電動車両の種類とその特徴とシステム動作についてまとめ、説明しました。説明資料の一部を示します。

資料3は各種電動車両の特徴を駆動機構、エネルギーの貯蔵・補給の観点でカテゴライズし、その特徴をまとめたものです。

資料3 各種電動車両の特徴

次に、各システムについての概要説明を行い、代表的なシステムについての動作説明を行いました。資料4はパラレルHEVの例です。内燃機関と電気モータが別々の駆動輪を駆動するタイプと同じ車輪を駆動するタイプとを図示しています。

内燃機関による駆動と、電気モータによる駆動を行うことができる。内燃機関と電気モータが別々の駆動輪を駆動する
全く独立した駆動系を持つタイプと、同じ駆動輪を同時または独立して駆動するタイプとがある。発電機あるいはまた充電器を備える。 パラレルHEV(PHEV:Series HEV)メリット 内燃機関と電気モータの駆動力とを合わせて大きな駆動力を得られる。どちらかが失陥しても走行を継続できる。デメリット 排気が出るため、無公害ではない。内燃機関の高効率化の効果は少なく、燃費向上効果は少ない。
資料4 パラレルHEVの説明

電動車両の開発の動機

お客様が関心を持たれているとのことで、自動車メーカーが電動車両の開発を行う動機についてまとめ、ご説明しました。(資料5)

これらはそれぞれ開発動機となり得ますが、電動化が加速する中では、3の戦略を持って、1を予測し、2を実行すると言った対応が求められると考えます。

  1. 法規・社会的要請
    • 低公害化、エナジーミックス等の社会動向に基づく法規の遵守(燃費規制、排気規制)
    • 官公庁、自治体、電力会社等からの要請
    • 特殊環境・目的の為(鉱山車両、自然保護区域(屋久島など)、屋内使用、etc.)
  2. マーケティング、開発成果の投入
    • 要素研究~先行開発〜技術改良の各段階における成果の投入による商品性向上、コストダウンもしくは技術アピール
    • 他社車の先行への追随
    • 少数投入による市場データ取得
  3. 技術戦略、企業戦略
    • 将来の技術動向を見据えた技術・開発戦略に基づく車両像のスタディ
    • 社会動向の分析に基づくエネルギー・環境対応

資料5 自動車メーカーにおける電動車両の開発動機

さらには、こうした背景から、EV、HEV、FCVそれぞれにおける開発動機について説明しました。

例えば、資料6は、HEVとして訴求したい機能とアプローチについてまとめたものです。

資料6 HEV開発へのアプローチ

HEV開発の動機としては法規対応等の他、ICEVの改善もしくは機能の追加と、ICE追加によるEVの弱点の克服の主に二つのアプローチがあると言えます。

そして、更に求める機能・性能は細分化され、それによって、エンジン-モータの出力バランス、電池搭載量、充電機能の有無、動力伝達機能の選択、等がなされていきます。

電動車両の競合技術

電動システムが実現しようとする機能、性能は、その他の技術でも可能な場合が多くあり、その場合、商品化の判断において競合することになります。

そこで、どのような技術が競合となるのかをご説明しました。(資料7)例えば、排気ゼロと言うメリットに対し、新排気技術は車種ミックスによる総量規制と言う枠組みにおいては十分競合手段となり得ます。

電動システムは、コスト・設備投資・開発リソースの点で競合技術に対して不利であることが多く、圧倒的な性能や電動システムしか成し得ない価値等を見出すことが、商品化に際して必要です。

資料7 電動車両の競合技術の例

電動車両固有の開発課題

電動車両を開発するに当たって解決すべき固有の開発課題についても説明しました。(資料8)電動車両の開発目標を達成すると言う直接的な課題と、電動車両の開発を遂行するに当たって、これまでの車両の開発では経験することのなかった課題とに大きく分けて説明しています。

例えば、EVは充電と言う機能・行為が必要ですが、充電機能の確認・性能の達成と言う課題の他、車両評価を行う際に充電設備を要し、また走行実験を行う際にも充電時間を考慮しなければならないと言う課題とが生じます。

資料8 電動車両固有の開発諸課題

技術ロードマップ作成の手順

自動車における電動化についての解説の後、技術ロードマップの作成の手順について説明し、お客様の新電動技術の訴求するポイントについて論議を重ね、競争力の指標を導出し、市場導入シナリオの策定に貢献できました。

資料9はロードマップの作成手順を示しています。

対象とする製品とその訴求点の設定、ターゲット年と達成レベルの設定、そして具体的な達成手段の検討の大きく3段階に分けられます。

資料9 技術ロードマップ作成手順1 検討手順

資料10は対象の設定の考え方を示しています。

対象製品の持つ魅力性能(品質)から狙うべき訴求点をベンチマークデータから抽出します。

その上で会社方針や社会動向・技術動向をにらんで将来の達成レベルについて決定します。

資料10 技術ロードマップ作成手順2 対象の設定

資料11は、対象の設定の際に抽出した魅力性能毎に目標年までの目標値の達成シナリオを策定する方法について表しています。技術トレンドのベンチマークをベースに技術方策毎の達成割り付け値を設定します。

性能ロードマップ 各商品性項目毎に作成する。
資料11 技術ロードマップ作成手順3 目標達成シナリオの作成

おわりに

いかがでしたでしょうか。

電動化については、先行している自動車もまだ成熟しているとまでは言えない状況ですが、それでも、自動車における電動車両開発の在り方は、その他の車両や輸送機器全般の電動化開発の大いなる参考となると考えます。

今後5年以内に電動化の目途をつけなければならないお客様が多数いらっしゃると存じます。商品そのものの電動化対応、電動商品の開発体制の構築等で、お困りのお客様は是非一度ご相談ください。DIPROは、電動化の主要コンポーネントである電池・モータ・インバータの基礎教育、および開発のコンサルティングを中心としたサービスを展開していますが、今回一部をご紹介したように、電動車両の開発に長年に渡り深く携わって来たスタッフにより、電動化開発全般のご相談も可能です。

電動化開発に課題をお持ちでしたら、是非、一度お声がけください。

Liイオン電池システム開発支援サービス の詳細はこちら

お問い合わせ先

製品・サービスに関するお問い合わせ
(デベロップメントエンジニアリングサービス部 課長SE 緒方)

TOP