筐体と基板を組み立てるとぶつかってしまった、という設計ミスの経験はありませんか?エレキとメカの協調設計における設計ミスを撲滅するには、正確に設計変更を伝達することが重要です。
本記事では、設計変更の「制限」「承認 / 却下」「新しいテクノロジー」を正確に伝達する方法をご紹介します。
例えば、「売れる製品」にするために低コスト化、小型化、省電力化、短納期化など改善のための仕様変更が発生した場合、メカ設計では応力や熱さらに振動に対する再検討が、エレキ設計でも電源やノイズ、電磁界の評価をやり直すこととなり、結果として難易度が高まってしまうといったことが多々あります。
メカ設計で定義したコネクタ位置がどうしてもエレキ設計で守れなくなるなど、設計初期に定義した制約内では要求を満たせなくなり、設計変更が必要になります。メカ設計者もエレキ設計者も、それぞれの変更内容を”充分に伝えた”つもりで作業を進めますが、でき上がった筐体と基板を組み立てると、ケースとコネクタがぶつかってしまい筐体に収まらない、などの問題が発生することがあります。設計変更の情報として、コネクタの位置だけでなく、裏面リードも移動しなければならなかったことを伝え忘れてしまうなど、エレキとメカの協調設計において「設計変更が正確に伝達できていない」ことが原因として挙げられます。こういった設計ミスにより手戻りが発生し、修正作業に多大な時間とコストが必要となってしまいます。
エレメカ協調設計において、設計変更を正確に伝達するには3つの方法があります。
エレキとメカでやりとりする設計変更の情報が「2次元図面(DXFファイル)」の場合、「制限」を完全に表現できないため、手作業が発生し、設計変更を正確に伝達できない可能性があります。
制限とは、メカからエレキへの設計要件のことで、部品配置可能領域やライン禁止領域などです。例えば、筐体と電気部品が干渉しないように電気部品の配置を禁止する基板領域がある場合を想定します。メカ設計者は電気部品の配置を禁止する基板領域を定義したDXFファイルを出力します。エレキ設計者はDXFファイルを受け取ると、DXFファイルをエレキCADのコメント図形として取り込み、エレキCAD専用の要素(部品配置禁止領域)を生成するという手作業が発生します。手作業はヒューマンエラー(間違いや漏れ)が発生する可能性があり、設計変更情報が正確に伝達できない、という問題があります。
設計変更の制約を表現可能な「IDX / IDFファイル」を利用することで、制限の伝達における手作業を排除し、情報を正確に伝達することが可能になります。IDX / IDFファイルは領域に対して制限を定義することができるので、メカ設計者の意図した制限を正確にエレキ設計者へ伝達します。
この方法1を支援するツールとして、メカCADのNXにおけるPCB Exchangeオプションがあります。PCB Exchangeとは、NXにIDX / IDFファイルをインポート / エクスポートする機能を追加するオプションです。
設計変更の情報をメールや電話で通知する場合、相手が承認したのかそれとも却下したのかという承認 / 却下情報を制約とは別に管理する必要があります。制約と承認 / 却下情報の整合を手作業で管理するため、ヒューマンエラーによる反映漏れが発生し、設計変更を正確に伝達できない可能性があります。
例えば、メカ設計者が基板を固定するための取り付け穴を1mm右へずらしたい場合を想定します。メカ設計者が取り付け穴の位置を1mm右へずらしたIDFファイルをエレキ設計者へメールで伝達した場合、エレキ側としては配線変更が困難なため設計変更を却下し「左なら大丈夫です」とメールで回答します。メカ側は大丈夫という言葉で承認されたと勘違いして、組み立て時にネジ穴が合わないという設計ミスが発生します。
対策として、設計変更の承認 / 却下情報と制約をまとめて管理することが可能な「IDXファイル」を利用することで、承認 / 却下情報の整合性を担保し、情報を正確に伝達することができます。IDXファイルは設計変更に対して、承認 / 却下情報とその理由をコメントとして付与することが可能なので、容認 / 却下された設計変更を一覧で表示でき、設計変更の承認 / 却下情報を正確に伝達します。
方法2を支援するツールは、方法1と同様のPCB Exchangeオプションです。
PCB Exchangeでは3次元形状と設計変更の承認/却下情報を管理することができるIDXファイルの承認 / 却下機能により、設計変更の承認 / 却下をまとめて伝達することができるようになります。
日々進化しているエレキCADの新しいテクノロジーとなる要素はIDXファイルでサポートしていないことがあります。例えば基板のキャビティ形状はIDXフォーマットでは未対応のため、メカCADへインポートした後に形状修正の必要があります。
方法3では、設計変更の情報をエレキCADのネイティブファイルにすることで、IDXフォーマットではサポートされていない要素を正確に伝達します。これにより、未対応要素の形状修正が不要となります。
方法3を支援するツールは、メカCADのNXにおけるPCB Exchange for Xpedition / PCB Exchange for Zukenオプションです。
このオプションでは設計変更の全要素をサポートするネイティブファイルとしてインポート / エクスポートすることが可能となります。
なお、PCB Exchangeオプションが必須モジュールとなります(PCB Exchange for Xpedition / PCB Exchange for Zukenのみのご利用はできません)。
本記事では、エレキとメカの協調設計における設計変更の「制限」「承認 / 却下」「新しいテクノロジー」を正確に伝達する「ものづくりのデジタルプロセス化」を実現することで、設計ミスを撲滅する方法を紹介しました。
各オプションは主要機能に絞って説明しており、他にも解析連携や製造連携など様々な機能がございます。
当社は創業より「ものづくりのデジタルプロセス化」に取り組んでおり、自動車業界のメカ設計を30年間支援している実務経験と、富士通としてエレキ設計を20年間支えたノウハウがございます。
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