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DIPROニュース

2019

9月号

2019.09.10

板金溶接部品ものづくりへの3D活用
~コマツ様におけるDIPRO VridgeR活用事例~

DIPRO VridgeR(以下VridgeR)は、超大規模フルアセンブリでも軽快かつ高精度に扱える技術を活かして、航空機や自動車、建機、造船業界といったさまざまなお客様での活用範囲が広がっています。また、VridgeRは、コア技術のみならずCADコンバータも含めて自社開発しており、お客様のご要望に合わせて様々なカスタマイズが可能です。

今回は、コマツ様における、3Dモデルの活用による生産準備の仕組みを構築した事例をご紹介します。

お客様の事業内容

KOMATSU
会社名

コマツ(登記社名:株式会社小松製作所)

本社所在地

東京都港区赤坂二丁目3番6号

創立

1921年5月13日

代表者

代表取締役社長(兼)CEO 小川啓之

資本金

単独 705億61百万円 / 連結 683億11百万円(米国会計基準による)

売上高

連結 2兆7,252億円(2018年度)

主な事業

主に、建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などの事業を展開しています。

ホームページ

https://home.komatsu/jp/

主な製品

油圧ショベル
油圧ショベル
 

ブルドーザ
ブルドーザ
 

フォークリフト
フォークリフト
 

油圧ショベルハーベスタ仕様車
油圧ショベル
ハーベスタ仕様車

ホイールローダ
ホイールローダ
 

アーティキュレートダンプトラック
アーティキュレート
ダンプトラック
 

モーターグレーダ
モーターグレーダ
 

プレスブレーキ
プレスブレーキ

コマツ様では、主に、建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などの事業を展開しており、建設・鉱山機械のリーディングカンパニーです。建設機械・車両部門の生産拠点は全世界に84カ所を数え、海外売上は8割を超えています(2019年3月時点)。

生産技術開発センタの役割は、これらの機械の生産において、生産性の向上や、協力企業様と連携し競争力を高めることです。技術の発展は早いため、全てを自社開発するのではなく有用な技術を利用するという考えを基に、他社技術の利用、共同開発も積極的に推進しています。その中で、今回、事例をお伺いしたシステムグループでは、3Dモデルを活用したさまざまな生産準備の仕組みを開発しています。

コマツ様では1996年から設計~生産~販売まで3Dモデルを活用する「3Dモデルで一気通貫」という全社的な取り組みを始めており、VridgeRもその活動の下で2001年1月に導入され、大型建機1台分のフルアセンブリを読み込み、組立工程の検討などに利用されていました。

さらに3Dモデルの活用を深堀りするため、生産技術開発センタでは板金溶接部品ものづくり(生産準備)の全工程(工程設計、コスト見積もり、切断・曲げプログラム作成、溶接ロボットティーチング、板金溶接部品検査等)を3Dモデルで一気通貫する仕組み”板金ネットワーク“の構築を進めていました。しかし、板金溶接部品ものづくり工程をハイエンドCAD上で行おうとすると、生産現場や協力企業様への展開が課題となります。そこで、CADより安価なビューワ上での実現を構想し、既に、社内で広く活用されているVridgeRをベースに、板金溶接部品の工程設計をする「部品CAM機能」を構築することとなったのです。

3Dモデルで一気通貫

従来の生産準備は、各工程で2D図面(紙図)を元に手作業で行われていました。生産技術開発センタの松本様は、溶接箇所を溶接線として3Dモデル化し、そこに属性として溶接に関する情報を付加しました。これにより、溶接箇所が容易に視認できるようになるとともに、溶接線情報を活用することで工程設計作業の自動化を図りました。各工程での作業を後工程への入力として、データを後工程に連携させることにより、作業のさらなる効率化を狙ったのです。

板金溶接部品の工程設計には、設計BOMに対する製造BOMの作成に加えて、各工程での溶接箇所、溶接順序の設定が必要になります。CAD側で付加した溶接線情報(属性)を取り込める様にコンバータを開発し、各工程での溶接箇所、溶接順序を設定できる様にVridgeRの工程検討機能(オプション)を部品CAM機能としてカスタマイズしました。(図1参照)

開発にあたっては、コマツグループ企業であるコマツキャブテック様と共同で行いました。コマツキャブテック様は、協力企業から2006年にコマツグループとなり、コマツ様にとってグループ企業であると同時に、協力企業であるという二面性を持っています。部品点数の多いキャブ(運転室)を製造するコマツキャブテック様で効果が出せるならば、他の協力企業様にも適用が推進できる、という狙いもありました。

図1:部品CAM機能を活用した工程設計の流れ
図1:部品CAM機能を活用した工程設計の流れ

部品CAM機能への置き換え効果

コマツキャブテック様では、最近ほぼ同時期に4車種分の試作の仕事が来ることもあるそうで、人員を増員することなく4倍の仕事をこなせるにはどうすればよいか、という課題がありました。

課題解決に向けて、従来、2D図面(紙図)を読み解き全品番を手入力、溶接線長や溶着重量等を手計算し工程設計書を作成していた作業について、VridgeRによる部品CAM機能へ置き換え検証を実施しました。その結果、2D図面を読み解くことに比べて、3Dモデルで直接思考できる効率の良さに加え、3Dモデルから取得された部品情報や溶接線情報を利用して、流れ線図(部品構成表)や工程設計書作成も自動化(マクロ化)されたことで手入力が不要になり、やり直しやチェック工数も大幅に削減されました。人による結果のばらつきもなく、労働力不足が進むであろう将来に向けても、有効性が期待されます。

実際に検証を実施されたコマツキャブテックの中村様は「部品CAM機能上で設計BOM(CADの構成ツリー)を製造BOM(製造ツリー)に変える作業は、BOMと連動した3Dモデルを見ながら行えるのでやり易く、そのデータもCSVで出力して後工程で使えます。必要な情報はCADから引き継いで入っているので手計算や手入力が一切なくなり、全体の工数を約70%削減できました。」と評価されています。この結果により、今の人員を増やさずに4倍の仕事をこなせるにはどうすればよいか、という課題について、部品CAM機能の活用によって解決可能と言えるのではないでしょうか。

検証を実施したキャブ
検証を実施したキャブ

図2:部品CAM機能活用による溶接工程設計工数削減効果
図2:部品CAM機能活用による溶接工程設計工数削減効果

さらに、開発段階や、改善や手直しでの設計変更時の工程設計のやり直しに即座に対応する為、類似部品工程設計機能も開発しました。

設計変更が月平均80件程あり、従来は2D図面(紙図)の変更箇所の△マークを目視で探さなくてはならなかったり、試作から量産機種に変わった際に新規図面扱いとなったりと、変更箇所のチェックにかなり工数を取られていましたが、この類似部品工程設計機能により、設計変更を簡単に検出できるようになり、負担が軽減されました。

今後

このようなコマツキャブテック様での成果を受け、コマツ様では部品CAM機能活用の水平展開をめざしてコマツ様他工場や他部門、協力企業様への推進を行っています。

また、「板金溶接」の他、「機械加工」「組立」「検査」といった、いくつかの工程でも3Dモデルの一気通貫の仕組みづくりを推進すべく、コマツ様社内に専任プロジェクトが立ち上げられました。

本プロジェクトでは、図面の3DA(3D単独図)化を進めていますが、当社としても、コマツ様の3DA化活動に対応し、部品CAM機能による更なる業務効率化をめざして引き続き、協力させていただきます。

左より、コマツキャブテック田中様、コマツ松本様、コマツキャブテック中村様
左より、コマツキャブテック田中様、コマツ松本様、コマツキャブテック中村様

DIPRO VridgeR の詳細はこちら

(3DTビジネス部 課長SE 菅井)

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