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DIPROニュース

2006

10月号

2006.10.10

設計者は道具に何を求めているか ~DIPRO VridgeRのご紹介(2)~

今回は8月号に引き続きDIPRO VridgeRのご紹介ですが、先月号では「設計の仕事」について社長の間瀬のうんちくを楽しんでいただけたと思いますので、それに関連付け「設計の道具」についてVridgeRに絡めてお話します。

設計の期待は「見る」道具

車一台分のデジタルモックアップ

以前に勤めていた自動車会社で、CAD-IIという内製3次元CADを開発していたときの話を紹介します。当時は大型計算機に数百台の端末を接続するメインフレームでしたので、巨大なエンジンルームレイアウトを扱う1割のユーザーが、CPUやメモリなどコンピュータ・リソースの半分以上を使っていました。然るに、その重量級ユーザーは、常に応答性能に不満を持ちながら、データを左右半分づつに分割するなど、大変な苦労をしていたのです。

その作業というのは、エンジンルーム内の部品のレイアウトを決めることで、大量の部品データを様々な方向から眺めながら最適レイアウトを検討する・・・・・・つまりCAD操作の大半は「見る」ことです。

コンピュータというのは皮肉なもので、最も人間が期待する「ただ見るだけなのに」が、応答性能の面では最も苦手としています。全ユーザーのCAD操作の分析でも、拡大縮小や回転など表示操作でコンピュータ能力の50%以上を消費しており、今日この傾向はより顕著になっている(分散システムでは集計しにくいですが)と思われます。こういった経験からCADには機能より性能が重要であると信じ、当時の市販CADに対して3倍の表示性能に改善しました。

その時と全く同じ想いで、飛行機や自動車の製品全体を見たいという気持ちから、DIPROの独自技術で実現したのがVridgeRです。

CADとViewer

CAD-Ⅱのエンジンレイアウト

ソリッドCADの時代になると、データ量の増加に対してCADの性能は追いつかず、大規模なデータを見ることに特化した設計の道具が生まれました。しかし、今日ではCAD以外は全てViewerというカテゴリーで総称されるようになり、Viewerは見ることしか出来ず、精度も悪く、設計者の道具ではないという俗説も多く耳にします。それゆえに、VridgeRは「デジタルプロダクションツール」と称することにしました。エンジンルームのレイアウト検討、配管や配索の検討など、設計行為でありながら大規模なデータを用いることが宿命の業務には、高精度ながら高性能で、その業務範囲に限ってはCADに勝る機能を搭載した道具が適しています。

思い通りに動いてくれる道具

最近のエンジンルームレイアウト

日米欧自動車会社のIT部門の方々との会談の席上で、CADの習熟期間をお尋ねした時に、CADの種類に関わらず一様に3~6ヶ月という回答が返って来ました。実際の習熟レベルはともかくとして、これ以上は習熟期間としては認められないという思惑を含んでいると推察しました。

ところで、携帯電話を買い換えた時に、皆さんは見よう見まねで使っていませんか?分厚いマニュアルを読むのは思い通りに動かない時だけではないでしょうか?

本来、道具というのはマニュアルなど読まなくても人間が思った通りに動くことが理想だ・・・・言うのは簡単なのですが、造り側にとっては以外に大変なことだと思います。

それはソフトに限らず開発者たちは常に製品に接し過ぎていて、既存の操作性の良し悪しを客観的には判断しにくくなっているからです。悪く言えば、現状の操作に毒されているということです。そこで私は、VridgeRの新人開発者向けの最初の教育は、全くマニュアルを見せないで、見よう見まねでどこまで操作出来るか、どんな機能が分かりにくかったかを指摘させることから始めます。彼らは操作性評価のモルモットであると供に、新鮮な感覚で人間が期待する動きとシステムの動きの乖離を教えてくれる先生でもあります。

「習熟期間は?」と聞かれた時に、VridgeRの辞書では死語になっていますとお答えできるソフトを目指したいと考えています。

頑健という当たり前の品質

CADの操作が難しくなった理由を掘り下げてみると、パラメトリックやナリッジなど高機能化したことだけでなく、オフセットやフィレットが作れないといった場面の回避策として、多くの補足操作を覚える必要があることも原因で、特に自動車の部品などの複雑な自由曲面を多用する場合には顕著です。

VridgeRは、機能を提供する限り必ず結果を出すことを目標として、ドアインナーのように複雑な曲面でも必ず一発で作成出来る板厚など、当たり前の頑健性を追及しています。

設計者から遠のく道具

最近の産学ワーキング活動の中で、自動車の設計者の皆さんが最も多く使っている道具はPowerPointだという話をしました。PowerPointが設計の道具か否かは別にして、言いたいことはCADが設計者から遠のいているということです。

意図通りに動き、高性能で、頑健であれば、使わされる道具から使いたい道具になれると信じます。現状の一因として、我々CAD開発屋の怠慢を反省し、VridgeRは設計者の期待に答えられる道具を目指しています。

次回は、工業製品の開発・生産・販売準備に至るまでの「3次元文化」を加速するVridgeRについてご紹介したいと思います。

「自動車会社における全ユーザーのCAD操作の割合」と「大手製造病のCADデータ量の推移」

(第一開発部 部長 森 博己)

※掲載されている車両(または、その一部)の画像は、日産自動車株式会社様のご提供によります。

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