MENU

DIPROニュース

2008

4月号

2008.04.10

情熱が感動を呼ぶ

ニュースイメージ画像

『年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず』―これは、ご承知のように唐代の有名な詩の一節で、自然の悠久さと、人間の変わり易さや命のはかなさを対比させて詠んだ句です。

今年も早や希望と不安を胸に、新しく社会人となられた方々を迎える4月となりました。自身が新入社員であったのはいかほど前か、あっという間に時は過ぎ、いつの間にか白頭翁といってよい世代になってしまいました。

この詩の中で悠久の代表として謳われた自然も最近はそうでもなくなってしまったようです。

温暖化の影響で氷河が融け、植生や生態系が変わり、そして、多くの種が毎年絶滅の危機に瀕しています。自然もすっかり人間界と同様に、いや、人間の所業の結果、はかなく変わりやすいものになってしまったようです。古人が今を見るとどんな句を詠んだのでしょうか。

振り返って私たち日本人も戦後、物質的に豊かになるにつれ、過去に例を見ない速さで変わってきました。特に物質的に豊かになったことが却って心の豊かさを奪ってきたようです。自らを考えても、多分に年のせいもあるでしょうが、昔に比べ何かに感動するという体験が減ってきたように感じます。もちろんスポーツや映画を見て感動することはありますが、それらは実生活において自らが体験するものではありません。実生活のなかで一緒に感動する、感動で涙するという場面が若い頃より減っているような気がします。皆様はいかが感じられているでしょうか。

DreamEDGE事務所にて
DreamEDGE事務所にて

2月に弊社からマレーシアのDreamEDGEという会社に幾ばくかの資金を投入し、クアラルンプール近郊のサイバージャヤ(マレーシアのシリコンバレーといわれる)にオフィスを開設しました。その一連のプロジェクト活動を通し、マレーシアの若い人たちを中心に情熱を持って取り組む姿を垣間見てこころ打たれるものがありました。

DreamEDGEは、弊社のマレーシア出身のある若い社員が中心になり、夢と可能性を求め、半ばボランティア的に現地に創りつつある会社です。このオフィスは日本の自動車産業がアジア地域に、単に製造だけでなく開発機能も進出しつつある状況に対応するために、またそれだけでなく、できれば現地企業のエンジニアリング系ITを支える人材を育てる拠点にしたいということでささやかですが立ち上げたものです。

マレーシアはポルトガル、オランダ、イギリスの植民地を経て1957年に独立しました。1981年から2003年までのマハティール前首相の時代にいわゆる“Look East”政策を提唱し、アセアン諸国ではシンガポールに次ぐ、豊かな国を築きあげました。マハティール前首相は大の日本贔屓で、“Look East”とは、弱肉強食で貧富の差の増大を伴う欧米スタイルではなく、大きな格差をもたらすことなく高い成長を遂げた日本をお手本にしたいとして推進した政策です。

そういった経緯もあり多くの留学生が日本で学び、国全体が日本や日本人に好意的です。今回訪問してマレーシアの方々にお会いし、二つばかりの大学も訪問しましたが、皆さんのまなざしや応対にそのことを実感しました。

オフィス開設に向け、メンバーは文字通り寝食を忘れ、また半ばボランティアの形で準備を進めてきたようでした。

彼らの表情や目の輝きはとても素晴らしく、それらは戦後の復興期に日本人が持っていて今は失われてしまった姿と重なり、そのひたむきさに懐かしさと何か胸を打たれるものを感じました。彼らのメンバーで、他の会社も経営している女性役員の一人に、『他に本業があるのにどうしてそんなに一生懸命にやるのですか?』と尋ねたところ『答えは簡単です。それはこのメンバーには“Passion”があるからです。そういうメンバーと一緒にやることがとても楽しいからです』とのことでした。

オフィスの階下の小さなレストランで行なったささやかな開所式には、わざわざ駐マレーシア日本大使や、ジェトロの所長、それに現地企業の有力者の方々も出席されました。これも準備したメンバーの熱意の賜物と少なからず驚きました。メンバーの情熱やひたむきさが共感を呼び、集まった方々にも感動を与えていることが、皆さんの表情やいただいたお祝いの言葉からもひしひしと感じられました。

話は変わりますが、私の仕事上の知人でナレッジ関連の研究をされている方が数年前にナレッジシステムの開発や出版などを行う会社を起こされました。最近『エネルギーバス』という小さな本(ジョン・ゴードン著)を翻訳したとの連絡をいただいたので、早速購入し読んでみました。

なかに易しい記述で以下のようなポジティブな言葉がちりばめられていました。

  • ポジティブエネルギーは自分だけでなく周りの人にも意欲を吹き入れる。
  • 不満ばかり言っていると自分が本当にしたいことについて考えなくなる。
  • エネルギーは個人的な成功だけでなく、チーム全体の成功を導くいちばん力強い燃料です。
  • 会社の誰もがCEOになれる。Chief Energy Officerに。
  • バスをポジティブエネルギーと情熱で満たす。逆境や苦難を乗り越えて進めば必ず感動を生む。本人たちは勿論それを見ている人たちにも。

前段の例とこの本に書かれていることが丁度重なり、改めて情熱を持って行動することの大切さと、それが感動を生み、そしてまた新たな情熱を生むことを感じました。

ニュースイメージ画像

現在は政治、経済、社会の様々な分野で閉塞感が漂っています。そんななか、新たに社会人になった人たちや、すでに社会で働いている若い人たちが情熱を持って真剣にチャレンジするならば是非それを応援してあげたいと思います。たとえそれに未熟さを感じても。

本年度もお客様と一緒にエネルギーバスに乗り、忘れがちだった情熱の大切さに思いをいたし、バスの旅行を楽しみ、達成感や感動をともに味わいたいと願っています。

(代表取締役社長 間瀬 俊明)

関連タグ

TOP