工場生産をデジタル化してバーチャルに検討するしくみ(デジタルファクトリ)が製造業に活用されて久しいですが、昨今のIT技術の進歩によりこれらのソリューションも真に第2世代に入っています。
今回はシーメンス社 Tecnomatixのデジタルマニュファクチャリングの最新事例をご紹介させていただきます。
工程設計ツールであるTecnomatix Process Designerは、Product(製品)、Process(工程フロー)、Resource(設備・作業者)、Operation(作業内容)の情報を関連付けて管理することができます。例えば、あるステージにおいて、使用している設備データ、そこで組立てられる製品データ、組立オペレーション内容と作業時間などをツリー構造で関連付けて保存、修正することが可能です。
特に製品のアセンブリツリーについては、設計(PDM、BOM)上のツリーと製造フロー上のツリーを関連付けて別々に管理することができるため、例えば設変時の対象部品データの入替作業を大幅に効率化することができます。
工程はPERT図でフローを作成することができ(図1)、複数の作業者ごとの負荷分析をする機能(図2)などがあります。
このように工場生産を体系立てて構築することにより、企業独自の生産方式やノウハウを、デジタルファクトリデータベースの形で蓄えることが可能になります。
なお、データ管理ソフトウェアであるTeamcenter Manufacturingにも同等の機能が用意される予定です。
図1.工程フローPERT図
図2.作業者負荷分析機能
生産シミュレータTecnomatix Process Simulateは、ロボットや設備の動作、オフラインプログラミング、人の組立作業性や作業時間を正確にシミュレーションします。(図 3・図 4)
図3.ロボットシミュレーション
図4.作業者(姿勢の負荷)シミュレーション
負荷のかかった身体の部位の色をリアルタイムに変えて表示
さらに最新版のCEE(Cyclic Event Evaluator)、およびESRC(Emulated Specific Robot Controller)機能を用いて、繰り返し連続生産や設備同士の制御信号のやり取りまで含めた形でシミュレーションを行なうことが可能です。
ロボット同士のインターロック制御はもちろん、ロボットとラインの信号のやり取り、製品仕様による加工プログラムの場合分け、物流フロー制御など、実際の工場で行なわれている制御のほとんどを動作も含め正確にシミュレーションすることが可能になりました。(図 5・図 6)
図5.Process Logic Management
4回生産ごとに溶接ロボットがチップドレスを行なった場合の生産量はどの位か、といった検証が可能
図6.ESRC機能
流れてくる製品仕様に応じ指定された場所にパレタイジング(配置)を行なう事例
これらの機能を用いて、ステージ単体の最適化のみならず、スループット、生産性などを含めたライン全体の最適化を図ることができます。これは、従来別の専用システムとして用いていた離散系シミュレータ(ラインシミュレータ)の機能を含めた形での検討が可能となった、と言い換えることもできます。
Tecnomatix Process Designer/Simulateの最新バージョン8.2では、JTフォーマットをNativeなCADモデラーとしてサポートしています。これにより、NXシリーズとよりシームレスに繋がるばかりでなく、JTフォーマットでマルチCADに対応していくSiemens PLM Softwareのコンセプトに正にマッチしたプロダクトとなりました。
(注)従来内部的なダイレクトコンバートでサポート
私共デジタルプロセスでは、これら最新のソリューションを製造業の皆様に真に活用して成果を出していただくために、ソフトウェアの販売に留まらず、導入支援やコンテンツ作成まで含めた形でお手伝いをさせていただきたいと考えております。
(デジタルコンテンツサービス部 課長 岩佐 達樹)
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