現在、日米欧の自動車業界が連携し、エンジニアリング分野における標準化活動や各種ガイドラインの策定、その適用推進を行っています。この活動組織をSASIG(Strategic Automotive product data Standards Industry Group)と呼んでいます。
SASIGは5カ国の自動車工業会(以下自工会)、および関連団体で運営されており(図1)、AIAG(アメリカ:北米自動車業界の標準化推進団体)、GALIA(フランス:自工会)、JAMA(日本:自工会)、Odette(*注1) Sweden(欧州データ交換標準化推進団体のスウェーデン組織)、VDA(ドイツ:自工会)の5団体がSASIGの正式メンバーです。また、ISO/TC184/SC4、ProSTEP iViP(ドイツ)、Odette International (Odetteの本部組織)、JAPIA(日本:部品工業会)はリエゾンメンバーとしてSASIGと連携しています。SASIGのミッションは「自動車業界におけるグローバルパートナーとのコラボレーション実現支援」で、そのために製品データ(*注2)の作成、および活用に関わる標準やガイドラインの策定、その適用推進を行っています。
(注1) Odette:the Organization for Data Exchange by Tele-Transmission in Europe:ビジネス系、およびエンジニアリング系のデータ交換分野における欧州の標準化推進団体
(注2) 製品データ:自動車を構成する部品、自動車製造用設備、ツールの形状、および各種属性などのデジタルデータ
1994年にSASIGが設立された当初は、その目的がSTEP AP214規格の仕様検討と国際規格化作業(図2)であったため、組織名称“SASIG”とはSTEP Automotive Special Interest Groupを意味していました。
しかし、AP214の国際規格化作業が一段落した2000年頃から、SASIGはその活動範囲をSTEPから製品データの作成、および活用全般に拡大し、その結果、“SASIG”の意味を現在のStrategic Automotive product data Standards Industry Groupに変更しました。(図3)
この新しい枠組みの中で、製品データの品質を対象としたPDQ(Product Data Quality)ガイドラインや技術データ交換の際のデリバリーノートに関するガイドライン(ENGDAT)の策定、適用推進を行ってきました。
そして、現在SASIGには3次元図面標準化を扱うDEV-WG、設計変更管理を対象にしたECM-WGがあり、日米欧で協調し、積極的な取り組みを行っています。(図4)
また、2008年4月に欧州で開かれたSASIG定例会議での論議の結果、デジタル化の進展とともに新たな課題となりつつあるLTA(Long Term Archiving :製品データ長期保存)の取り組みに向けた準備を開始することになりました。
これら3つの活動の中から、ここではECM(Engineering Change Management:設計変更管理)について簡単にご紹介します。
SASIGで取り扱うECMの範囲は、自動車会社と部品メーカーといったビジネスパートナー間でやりとりする設計変更情報や業務プロセスを対象としています。各パートナー社内の設計変更に関わる情報、社内システムや社内業務プロセスについては対象としていません。
VDAでは2003年からこの課題について取り組みを行い、2006年までに数冊のガイドライン(VDA4965)を作成、発行してきました。
このガイドラインでは、標準的なプロセス(ECM Reference Process)、コミュニケーションシナリオ、メッセージ群があらかじめ定義されています。各パートナーは自社のプロセスや設計変更情報を標準的なプロセスやメッセージに対応付けをすることで共通の設計変更情報をやりとりできることになります。
VDAからの提案を受け、SASIGは2006年4月からECMの取り組みを欧州主導の形でスタートさせました。VDA4965をレビューし、SASIG要件を反映させ、グローバルなガイドラインを発行する活動です。SASIGからの要請を受け、JAMAではWGを立ち上げ、2008年4月から正式メンバーとしてECM-WGに参加しています。今後ECR(Engineering Change Request)、ECO(Engineering Change Order)に関わる業務プロセスや業務要件を整理、JAMA要件として提案しSASIGガイドラインに反映させる計画です。2009年初めにJAMA要件を満たしたECRガイドライン、2010年初めにECOガイドラインの発行を目標としています。
弊社は、このSASIG、JAMAの活動を支援させていただいております。今後も皆様に関連情報を提供させていただくとともに、このような支援活動を通じて得られる知識や情報を活用し、お客様にとって、より価値のあるご提案ができるよう、さらに努力してまいります。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
(エンジニアリングサービス部 次長SE 田中 敬昌)
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