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DIPROニュース

2009

5月号

2009.05.10

[特集] DIPROのもうひとつの強み
IDS2009 国際デンタルショー出展のご報告

2009年3月24日~28日、ドイツのケルンにてIDS(国際デンタルショー)が盛大に開催されました。IDSは歯科業界における世界最大の展示会で2年ごとに開かれています。今回で第33回目になりますが、DIPROは前々回の2005年度から参加しています。前回の2007年度は、専門ビジターが10万人(150カ国)、出展企業が1,742社(54カ国)でしたが、今回はこれを上回る数になったと思われます。

世界が結集する産業都市 - ケルン

ケルンの町並み

ケルンはライン川の中流に位置するドイツの古市で、フランス語で「ケルンの水」を意味するオーデコロンは、ライン川の水を原料として作られたことに由来すると言われています。ケルンには世界遺産として有名なケルン大聖堂があり観光都市として人気がありますが、国際的な見本市や展示会が開催される産業都市でもあります。そのため展示会の開催期間中はホテル代が通常期の約3倍と高額であるにも関わらず、宿がとれないため電車で30分以上もかかる近隣の都市に宿をとったという話をよく耳にします。

会場であるケルンメッセは、ライン川を挟んでケルン大聖堂の対岸に位置し、11もの展示ホールを有します。今回のIDSは、その中の4ホール(9フロア)を使って開催されましたが、それでも展示面積にして13.8万㎡、東京ドームの約3倍の広さで、1日では回りきれない広さでした。

出展内容の動向

展示品は、歯科材料、病気予防関連製品から歯科治療、デンタルラボ用の設備など多岐にわたっていました。中でも特にスキャナーや3Dプリンター、あるいは加工機など、CAD/CAM製品の多さが目立ちました。前回は数十社程度であったCAD/CAM製品の展示が100社以上に増え、加工用ブロックの製造販売会社などを加えると200社を超える数になっていました。歯科業界においてもデジタル化、データ衝による業務プロセス革新が急速に進んでいることがうかがえます。

デンタル技術の動向

口腔内スキャン
口腔内スキャン

新製品のスキャナーとしては、患者の口腔内を直接計測するものや印象模型(患者の口腔からとった型)を計測するものが数多く見られました。また、こうしたスキャナーを使って得られたデータから3Dプリンターを使って製作した樹脂製の歯型模型も数多く展示されていました。唾液が付着している狭い口腔内や、狭くて深い穴形状を持つ印象模型の計測は、精度面において多くの課題を抱えていますが、今後、ますます改良が進み、自動車業界において倣いモデルがなくなったように、現在、手作りされている石膏製の歯型模型も将来的には、なくなってしまうのかもしれません。

加工機の展示は、重さ数十kgの小型加工機から6t以上もある大型の5軸加工機まで、50機種以上(40社以上)にもおよぶ豊富な品揃えでした。そして、それらの大半はジルコニアコーピング(酸化ジルコニアを使って造られる歯冠のベース)を加工するためのものでした。酸化ジルコニアは焼結すると非常に高い強度と破壊靭性を持つため、破折しにくいということで、近年、歯科業界で特に注目されている材料です。

DIPRO独自の加工機 - KATANAシステム

加工中のH-18
加工中のH-18

KATANA(*1)システムは、DIPROが開発している加工機およびCAD/CAMソフトです。これは陶磁器で有名な株式会社ノリタケカンパニーリミテドのグループ会社である、株式会社ノリタケデンタルサプライ様が開発したジルコニアブロックを加工するためのシステムです。DIPROは株式会社ノリタケデンタルサプライ様のブースにおいてKATANAシステムの展示をサポートするという形でIDSに参加しました。そのKATANAシステム用としてDIPROが独自に開発した加工機がH-18です。H-18は、小型軽量(59cm×44cm×76cm、重量70kg)でどこにでも手軽に設置して使用することができます。

加工機H-18
加工機H-18

ノリタケデンタルサプライ社製のジルコニアブロックは未焼成ブロックで、他社にない優れた透光性や安定した収縮性を持つため、歯科業界では非常に高い評価を受けている材料です。しかしながら、未焼成ブロックは学校の黒板で使うチョークのように脆くてチッピングしやすいため、機械加工しにくいという難点があります。競合他社は皆、ブロックを半焼成することにより機械加工しやすくしたジルコニアブロックを使っていますが、結果としてノリタケデンタルサプライ社製のような優れた材料特性を失うことになっています。

DIPROでは、長年のDECSY(*2)システム(セラミックやチタンなどを加工する歯冠製作システム)開発で培ったCAM技術や加工経験をもとに、未焼成のジルコニアブロックをそのまま、精度よく加工できる独自のCAM機能を開発しました。ノリタケデンタルサプライ社製のジルコニアブロックのもう一つの優れた特徴として、ブロック自体に色が付いていることが挙げられます。患者さんの歯の色に合わせて、最適な色を9色のブロックの中から自由に選択することができます。選べる色が豊富であることは患者さんにとっては良いことですが、加工現場の作業者にとっては大きな負担となります。加工するコーピングの色が変わるごとに、NC計算を行い、材料ブロックを付け替えるといった作業が発生するためです。材料ローダーを装備することにより、ブロックの付け替えを自動化した加工機もありますが、そうした加工機は大型で高価なため、中小の技工所では導入しにくくなってしまいます。

出展ブース
出展ブース

これに対しH-18は、小型軽量であるにも関わらず、色やサイズの異なる4つのブロックを同時にセットして連続加工を行うことができます。

さらに、一部使用済みのブロックも含めて、使用するブロックに対して歩留まりが最大になるようなネスティングを自動で行うため、少ない作業工数で材料のムダを最小限に抑えることができます。このようにKATANAシステムは、省スペースで生産性の高いシステムとして、大手技工所だけでなく中小技工所からも高い評価をいただいております。前回のIDSに出展して以降、KATANAシステムは現在までに50セット以上を出荷し、世界14カ国、年間約10万人の患者さんのお役に立っています。

出張後記

今回IDSで展示されていた小型加工機の中には、H-18を参考にしたと思われるものが数多く見受けられました。DIPROは今後も、他社より一歩先を行く優れたシステム開発を行い、さらに進化したKATANAシステムをご提供できるように努力してまいります。

(デンタル事業室 部長SE 澤田 晃二)

(*1) KATANAは、株式会社ノリタケデンタルサプライ様の登録商標です。
(*2) DECSYは、メディア株式会社様の商標です。

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