皆様は印鑑をいくつお持ちですか?認印、実印、銀行印、いろいろあります。銀行口座を開設するとき、車を登録するとき、保険に加入するときなど日常的な印鑑の用途は様々です。日本社会において印鑑は、個人を特定するためにいろいろな場面で使用されています。万が一、印鑑を紛失したり、偽造されたりした場合、その影響は計り知れません。
印鑑照合とは、登録されている届出印影と提示された印影を重ね合わせ、それらが同一かどうかを判断する作業です。昔はそれぞれ印が押された紙を重ね合わせて、ぱらぱら漫画のように繰り返しめくりながら、その残像印影が同じか判断していました。しかし、銀行窓口では一日に何百という印を処理しなければなりません。さすがに手馴れた担当者でもその作業は大変です。そこで登場するのが印鑑照合システムです。
「エンジニアリング領域でCADなどを扱うDIPROが印鑑?」とお思いでしょう。印鑑照合システムでは、印影をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、印影を重ね合わせて比較照合します。当社は印鑑照合に必要な技術、画像処理技術の領域で地道に技術を培ってまいりました。そこから生まれたのがDIPRO独自の印鑑照合システムです。今回は、印鑑照合システムへのこれまでの当社の取り組みを振り返りながら、最新パッケージソフト「安照くん」をご紹介いたします。
1997年4月から金融機関へ「印鑑照合システム」の販売が開始されました。当時、届出印影(登録)と払い戻し印影を自動的に重ね合わせて表示する技術は、富士通をはじめ、以前から多くのメーカーで開発されてきました。しかし、お客様の実務に耐える商品、つまり、事務集中センターでの約束手形・小切手の印鑑照合集中処理を可能とした商品を提供したのは当社が初めてです。発売当時のカメラ付き「印鑑照合システム」は現在でも数十セット以上が稼動しており、金融機関のお客様におかれましては、10年以上もご使用いただいています。
2000年頃から、全国の金融機関窓口での印鑑照合業務の見直しが行われ、「副印鑑」廃止が一気に加速し、都市銀行、大手地方銀行にオーバーヘッド・スキャナーを採用した窓口用の印鑑照合システムの導入が始まりました。しかしながら銀行での印鑑の登録件数は3千万件、設置台数は数千台にも及びます。システムの導入には登録するだけでも数億円の費用がかかり、この投資は、銀行にとって大きな負担となっていました。そのため、システムを提供するメーカーは大幅なコストダウンが求められました。このような背景からソフト導入の低コスト化が進み、当社も「印鑑照合システム」のノウハウを生かした低価格なパッケージソフト「印影検出ソフト」と「印影照合ソフト」の販売を開始することとなりました。
一方で、金融機関とはニーズが異なる契約や登記簿などの「印鑑証明書」との照合への対応も始めました。これまでの印鑑照合は、「朱色印影」同士に特化してきましたが、「印鑑証明書」との照合対応向けに、「黒色印影」の取り込みと照合機能を追加しました。さらに、小切手のような一枚ものではなく束ねた帳票への対応や更なる低価格化などの課題を解決することで、新たな印鑑照合ニーズに応える商品開発を実施したのです。
2006年「印鑑証明書」照合対応版として新パッケージ「安照くん」が商品化されました。「安照くん」は、高性能ながら手頃な価格でコンパクトが製品コンセプトです。小型スキャナーとのセットで、短時間での印影読み取り、高解像度での照合と、これまでの照合システムに比較して格段に取り扱いやすくなりました。その年の暮れに業界月報に広告を掲載したところ、その反響は大きく、翌2007年1月には1号機を出荷し、好調なスタートを切ることができました。
「安照くん」は、従来、繊細かつ熟練された技術を必要とする印鑑照合という業務を、簡単かつ高速に処理される業務に変えるシステムです。「安照くん」では、マスター印影と照合対象の印影をパソコンの画面上に拡大表示し、お互いの印影の重なり具合を異なる色で表示されるため、一致、不一致が一目で判断できます。また、照合対象の印影がどのような位置、角度に置かれても、登録印影と重なるように表示されるため、印影の置き方に気を使う必要がありません。印影の取り込みと照合は、高速処理により短時間で終了するため、表示待ちのストレスもありません。登録印影と照合印影の重ね合わせ表示や、印影の回転・移動操作により、従来人手によって行われていた照合操作がパソコン画面上で行えるので、欠け、汚れなどで判別しづらい印影でも正確かつ高速な照合が可能となります。オプション機能としてマスター印影の登録・呼出機能を追加することで、マスター印影を登録して、その都度、印影を入力する手間が省けます。プリンターを接続すれば、画面のハードコピーを書類として保存することも可能です。
このように、低価格でしかも照合確認が容易に行えることが評価され、昨年度は公共機関への採用が決まり、2009年3月現在で全国に約500台が導入されています。
日本が印鑑社会であるかぎり、印鑑照合による個人認証が必要となる範囲はますます広がり、その重要性も増していきます。大手の印鑑照合システムのような大規模なものではなく、手頃な価格で導入の容易なシステムをお考えのお客様にはぜひ「安照くん」をお勧めいたします。
当社は、より多くのお客様のお手元に届くよう、ご提供価格や販売チャネルをさらに改善していきたいと考えています。また、これまで印鑑照合システム開発で蓄積してきた画像処理技術を活かし、皆様のお役に立てるシーンをさらに開拓してまいります。
(印鑑照合事業室 課長SE 林 良信)
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