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DIPROニュース

2010

1月号

2010.01.10

新しい年を迎えて

明けましておめでとうございます。

代表取締役社長 山田 龍一
代表取締役社長 山田 龍一

年明けから厳しい話もいかがなものかと思いますが、昨年は本当に大変な一年でした。特に昨年前半はどこまで落ち込むか判らない世界経済に恐怖感を覚えました。そして夏以降には世界各国の公的支援も奏功し金融不安も一服、産業の代表格である自動車についても回復傾向が見え、底打ち感が語られるようになりました。しかし、2010年度については、自律回復の材料不足や公的支援の終了の反動などから、厳し目に見る向きが多いようです。日本の話をすれば、一向に反転しない円高傾向や未知数の部分が多い新政権の経済運営等、なかなか先の見通しが立たない中での年明けとなりました。

昨年の国内の機械受注総額は年央には前年比30%以上の落ち込みとなりましたが、底を打ったとして、今後どのように回復していくのでしょうか? L字回復、W字回復などと言われていますが、プロセスはともかくとして、果たしていつになれば以前の水準に戻るのか、安定成長軌道に乗ることができるのか。そして、それは何によってもたらされるのでしょうか。

確たることは判りませんが、少なくとも現代の日本は総じて物質的には充足されています。人間の本質的な原動力は“欲”だとも言われます。バブル崩壊後所謂“失われた10年”を通じ、ある種“物欲の喪失”が起こったように感じます。これは最近の“草食系男子”といった言葉にも同種の感じを受けます。自動車を例に取ると以前は、「次はナビ付の車が欲しい」といった買う気を煽られる話が続いてきましたが、いつの間にか「これ以上過剰装備は要らない」という意見すら聞くようになってきました。車自体、昔と違い10年乗っても錆が出るということはありません。「積極的に新しい物を買いたい」と思う欲求が減り、結果として物は売れなくなるということが起きています。“物欲”が経済発展の原動力だとすれば、今の日本は、その原動力を持ち難い時代になっているのだと思います。しかも、2005年を境に日本の人口は減少に転じていますから、市場規模という点でも逆風です。

一方、中国やインドなどの新興国の発展やそれを支える活気には目を見張るものがあります。そして、現下の経済回復の牽引車と言われています。しかし、両国合わせて25億人もの人たちが、先進諸国並の生活水準に達したらどうなるのか、アメリカ・EU・日本の人口を合わせても10億人弱ですから、途方もない資源やエネルギーを必要とすることは目に見えています。しかし、新興国の人たちに対し、自分たちが享受してきた快適性や利便性を求めるなとは言えません。こうなると、1972年にローマクラブにより出版された“成長の限界”で鳴らされた警鐘、人口増と工業化がこのまま続けば、資源・環境・食料等の要素で100年以内に人類の成長は限界に達するという予測が現実のものにも思えてきます。

現在クローズアップされている地球温暖化を初めとする環境問題に加え、原油や希少金属、さらには水といった資源、そして食料も大きな問題です。自分たちが小学生であった1960年代の地球の人口は35億人と記憶していますが、現在では80億人、2020年には90億人に達すると予測されています。そうした中で、私たちは今までのような生活を送っていけるか不安が募ります。

新年早々暗い話からはじめてしまいましたが、“欲”が人間社会の原動力であるとすれば、こうした危機を回避していくための行動は、“物質欲”よりもさらに強いであろう“生存欲求”そのものを満たすものとも言えるかと思います。そう考えると、例えば産業界や社会にとって大きなインパクトをもたらす“エネルギーシフト”といったテーマは最も大きな原動力を内包しているとも言えます。そして、そこには乗り越えるべき課題ややるべき事も気が遠くなるほどたくさんありますし、実現までには長い時間もかかります。利便性や快適性を求めて邁進した時代から、社会をあげてこうした目標に向かって方向転換ができれば、その動き自体が社会の活力を増し、産業や経済全体の持続的な成長につながっていくのではないかと思います。一昨年からの世界的な経済危機は、私たちがこうしたことに思いをめぐらせ、今後の方向を考えさせる良い機会であったのかもしれません。

今年の干支は寅。辞書で調べると、動物の“虎”は、あとで覚えやすくするためにあてられた字であり、元々は“動く”という意味を持った別の字が使われ、春が来て草木が生えるという情景を表しているとのことです。今年は、そうした故事にあやかり、新しい発展に向けて進むべき方向や道筋がつかめる年になっていけばと考えています。

本年もよろしくお願いいたします。

(代表取締役社長 山田 龍一)

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