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DIPROニュース

2011

9月号

2011.09.10

3D図面によるものづくりへの取り組み ~ユニプレス様におけるVridgeR活用事例~

昨今、自動車業界はもとより、多くの業界で注目を集めている3D図面は、設計だけでなく、生産や品質管理、保守、販売といった多くの業務で活用が始まっています。

このように活用の場が広がったことにより、社内の部署間や取引先メーカーとの間で、如何に効率良く3D図面を流通させるかが焦点となってきました。

今回は、この課題にいち早く着手されましたユニプレス株式会社様(以下ユニプレス様)での取り組みとDIPRO VridgeR(以下VridgeR)がどのように活用されているかについてご紹介させていただきます。

【3D図面とは】
3D Annotated Model(3Dモデルに寸法などのアノテーションを付加したもの。以下3Dデータと記述)に補足情報をペアにして、2D図面の代わりとしたもの。

ユニプレス様本社
ユニプレス様 本社

ユニプレス株式会社

【拠点】
神奈川県横浜市(本社)他 国内9拠点、海外10拠点
【事業内容】
1) 自動車部品の製造及び販売
2) 電機部品の製造及び販売
3) 金属製品の製造及び販売
4) 溶接機器・金型及び治工具の製造及び販売
5) プレス機械検査及び保全業
【ホームページ】
http://www.unipres.co.jp/


Ⅰ.3Dデータ活用の取り組みとVridgeRの採用

(1) ツールの選定

データフロー概略 (データを衝とする業務への移行前)
データフロー概略 (データを衝とする業務への移行前)

当初ユニプレス様では、CADデータから図面化を行い海外拠点、調達圏メーカー(サプライヤ)に支給していました。

2001年頃、主要取引先メーカー(自動車会社)から、3Dデータを衝とした図面レスへの移行と、それまで24ヶ月(車種によっては17.5ヶ月、20ヶ月)かかっていた新車種立上げ期間を10.5ヶ月とすることが要請されました。

そこでユニプレス様では、新車種立上げ期間短縮を目標に掲げ、ユニプレス様、海外拠点、調達圏メーカーに対して3D図面化100%達成を2年間で行うことを目指し、データを衝とする業務への取り組みをスタートされました。

まず、3D図面の活用を実現するためのベースとなる設備(ツール)の選定が行われました。3D図面の活用にあたって、以下の2つの流通方法を検討されました。

流通方法①:CADデータ流通

CADデータをそのままの形式で流通させ、取引先メーカーと同じCADにて3D図面を確認。

流通方法②:Viewerデータ流通

CADの操作習得までの時間や、コスト的に購入が難しいことも想定し、CADデータから変換したViewerデータを流通させ、Viewerにて3D図面を確認。

ツール選定の大前提としてCADデータと同等の精度が保たれることはもちろん、ユニプレス様が目指す3D図面の活用において特に重要な以下の4項目の確認可否がポイントになりました。

選定ポイント①:アノテーション

3D図面化ルールで採用されたアノテーションが完全に再現できること。

選定ポイント②:アセンブリ構造

アセンブリ構造が確認できること。

選定ポイント③:スポット溶接情報

座標値、打込み方向などのスポット溶接情報、および、板組部品が確認できること。

選定ポイント④:穴情報

径や種類、用途などの穴情報が確認できること。

検討の結果、ユニプレス様の一部部署で採用されている「取引先メーカーのCAD」と「VridgeR」、「A社製Viewer」の3つが残りました。さらに選考を進めるため、加えて以下4項目について比較を行いました。

ツールの比較結果
ツールの比較結果

比較ポイント①:要望対応

ユニプレス様固有の要望や、ルール変更に対して即応できるか。

比較ポイント②:操作習得期間

海外拠点、調達圏メーカー全てに対して、期間内に、操作習得教育が実施できるか。

比較ポイント③:バージョンアップ追従性

3Dデータ流通において重要な取引先メーカーのCADのバージョンアップに対して、タイムリーに対応できるか。

比較ポイント④:導入コスト

①~③が同等の場合、導入コストで比較。


導入コストの比較
導入コストの比較

比較の結果、「VridgeR」を中心に、3D図面の活用を進めることになりました。(既に導入済みの部署、メーカーや、作業内容によっては、取引先メーカーのCADも採用されました。)

また、VridgeRが全て自社開発されていることによる今後の発展性や、DIPROの業務知識、対応力、サポート力も評価されました。

CADによるデータ流通と比較してVridgeRの初期投資費用およびランニングコストは約1/5になることに加え、VridgeRのビジネス用PCでもCADデータを扱えることを生かし、営業部や生産管理部署などで既設資産を活用できたことにより出費を抑えられました。

また、採用に合わせて、CADデータから連続的にVridgeRで読込み可能なファイルを出力するツールの開発を行われました。
そして、採用後の2001年度末には、海外拠点と調達圏メーカーへ、2004年度以降の開発車種に対して、図面を作成しないことをアナウンスしました。

データフロー概略 (ユニプレス様、一部サプライヤ適用後)
データフロー概略 (ユニプレス様、一部サプライヤ適用後)

データフロー概略 (3D図面化100%達成後)
データフロー概略 (3D図面化100%達成後)

(2) 3D図面の活用と効果

アナウンスと合わせて、2003年度末までに「設備の購入」、「設備設置部署の決定」、「操作習得教育の受講」を依頼しました。また、ユニプレス様から「情報の提供」、「設備導入支援」、「変換プログラムの提供」、そして業務上どうしても図面が必要な海外拠点、調達圏メーカー向けに「図面作成教育実施」を行うことを展開しました。

準備期間の間に、VridgeRや取引先メーカーのCADを導入した海外拠点、調達圏メーカーもありました。

しかし、既に他のCADを導入している為、新たに設備投資できない、また、業務上Viewerデータ以外のデータが必要な海外拠点、調達圏メーカーには、IGESやHPGLなど一般的なフォーマットへの変換も行いました。

この取り組みの結果、ユニプレス様、海外拠点、調達圏メーカーにおける3D図面化100%の達成と共に、新車種立上げ期間短縮の目標も達成することができました。

また、図面化作業者は、3名から、5名、7名と増員され、最大で年間約60~70人月掛かっていましたが、3D図面化達成から段階的に削減され、最終的には図面化工数をゼロにすることができました。


Ⅱ.3D図面流通システムの開発

(1) 3D図面流通の課題

3D図面化の100%達成後、3Dデータと補足情報、設計手配情報(設計通知、変更番号)を扱うにあたり、下記の課題が見えてきました。

課題:配信作業の煩雑化

海外拠点、調達圏メーカー毎に、配信するデータの種類、情報が異なることや、海外拠点、調達圏メーカーの増加によって、配信業務が煩雑化し、また、人手で行っていたためヒューマンエラーが増加しました。

(2) 3D図面流通システムの開発と効果

そこで、最初に開発されたツールを含めた変換・配信システム(3D図面流通システム)の開発を行われました。3D図面流通システムは大きく「データ変換部分」と「データ配信部分」とに分かれ、それぞれの処理概要は以下の通りになります。

データフロー概略 (3D図面流通システム適用後)
データフロー概略 (3D図面流通システム適用後)

【データ変換部分】

  • 着信したパッケージデータ(3Dデータ、補足情報、設計手配情報)を監視
  • 3DデータからVridgeRで閲覧可能なファイルや、海外拠点、調達圏メーカーへ展開する個別ファイルに変換し、サーバへの格納
  • 着信した3Dデータや変換ファイルの情報、補足情報、設計手配情報の出力

【データ配信部分】

  • 3Dデータや変換ファイルの情報、補足情報、設計手配情報をDBに登録
  • Web画面で、DBに登録した情報を確認しながら、手配依頼
  • Web画面で、手配依頼情報を確認しながら手配承認を実施
  • 海外拠点や調達圏メーカーに渡す手配データを授受フォルダへ移動
  • (海外拠点、調達圏メーカーは、授受フォルダにアクセスし手配データを取得)

効果

システム導入による工数削減効果(見積値)
システム導入による工数削減効果(見積値)

手配に必要な情報を予め登録することにより、配信準備が自動化され、ヒューマンエラーが大幅に減少しました。その結果、導入直後は、配信業務を5名で行っていましたが、システムの改善とユニプレス様における業務効率化により、現在は2名で行えるまでになりました。

『もし、流通システムの開発を行っていなかったとしたら、海外拠点、調達圏メーカーが増加したこともあり、約10名の体制が必要と想定されております。また、配信ミスによる時間損失が無くなることから、80%+αの削減効果があります。そして、今でもお客様(取引先メーカー)の納期要求を達成し満足を得られています。』(ユニプレス 石井様)と高い評価をいただくことができました。

海外拠点、調達圏メーカーでは、3D図面の活用当初は、2D図面がなくなったことによる工数の増加などの混乱が起こりました。

しかし、3D図面の有効活用を模索された結果、2D図面を活用していた頃に比べて、業務改善や作業効率化を図ることができました。「もう2D図面には戻れない」というお話からも、3D図面の活用が着実に浸透されていることがわかります。

Ⅲ.今後の3D図面流通とVridgeRへの期待"

写真 向かって右:ユニプレス株式会社 石井武司様 左:株式会社ユニプレス技術研究所 西尾三郎様
写真 向かって右:ユニプレス株式会社 石井武司様
左:株式会社ユニプレス技術研究所 西尾三郎様

ユニプレス様では、承認行為を除く配信処理の自動化や、データベースのクラウド化、製品情報・品質情報などの技術情報の一元化、3D図面流通システムとビジネス系システムとの融合などの課題に取り組まれております。

また、VridgeRに対しては、データが軽いこと、処理が早い利点を、Windows以外のプラットフォームでも生かし、あらゆるシーンでの3Dデータの閲覧や、取引先メーカーのデータ流通変更に伴う対応工数の増加を如何に抑えられるかなどに対して期待が寄せられています。

DIPROでは、これからも、ユニプレス様のデータ衝活動を更に加速させるための最適なソリューションを提供できるよう尽力させていただきます。

(技術ソリューション部 二見)

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