明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
本年も引き続きお引き立ていただきますようお願い申し上げます。
振り返ってみると、昨年は私自身を含め多くの人にとって、今までに経験したことのない波乱の年でした。百年に一度と言われたリーマンショックがもたらした深い傷が癒えるかと思われた矢先、今度は千年に一度と言われる東日本大震災、そして想定をはるかに超える巨大な津波による起こり得ないと言われていた原発事故。被災地の方々のご苦労やご心痛には想像を絶するものがあったと思いますし、産業界にとっても施設の被災、部品調達のショート、計画停電や節電対応等々前例の無い対応の連続でした。そして、その復旧の歩みがようやく始まろうかという時に、今度はリーマンショックに匹敵するとも言われる欧州発の世界経済の混乱と、それに伴う歴史的な超円高環境、更に、追い打ちをかけるように、一過性の災害とは言え、今や日本企業の一大生産拠点となったタイの大規模な洪水被害。日本の社会全体にとって、まさに二重三重の試練の年となりました。 そして、勿論日本の製造業にとっても、まさに、生き残りをかけた対応に日夜ご苦労を重ねられてきた事と思います。
今年の我が国の経済成長率は超円高環境や世界経済の先行きが不透明であることから、昨年末に引き下げられたものの、復興需要による押し上げも見込まれ、一部にはこれをきっかけに日本経済の復活をという声も聞かれます。一方で、人口減少に伴う高齢化の進展、そして国内市場の縮小や労働力人口の減少といった日本の基本的な問題を背景に、この超円高環境に背中を押される形で、産業の一層の海外移転が進んでいます。そして、製造業においてはモノづくりの国内留保に最大限努力するとしつつも、耐え続けるのにも限界があるとして、従来国内に集約していた研究開発機能や生産技術機能までも、海外に移行しようという動きが見られます。
こうした動きは、いわば最後の砦が崩れるようにも見え、雇用のみならず、国内の技術基盤そのものの空洞化をもたらす可能性から大きな不安材料でもありますし、この流れは簡単に変えることはできそうにありません。こうした状況に対し、原発事故により大きくクローズアップされたエネルギーシフトに関する先端技術開発への注力や、日本に顕著な課題となっている高齢化に伴う医療・介護のような分野での産業育成等で、より高付加価値な次世代技術・産業にシフトしていくという考えがあります。これ自体は重要な取り組み課題である事は間違いないと思います。
一方で、海外移転という流れそのものの中で、逆に日本国内の機能的な価値を高めていくための取り組みも重要なのではないかと思います。研究開発部門の海外移転では、人の知恵を移転することとなるため、単純に設備や情報を移転すればうまくいくということではありませんし、時間をかけてもなかなかうまくいかないことは、近年の経験からも容易に想像できます。現実的には、国内と海外が色々な形で分担・連携しつつ研究開発を行っていく形態が多くなると思われますが、そうした環境の下でどのように効率良く仕事を進められるかという課題が大きくクローズアップされてくるように思います。
研究開発は、日々の人の知恵の営みに負うところが極めて大きいことから、生産とは異なり、国を越え遠距離を介した環境での協業は、効率を阻害する様々な課題に直面していくことになります。しかし、発想を変えて、海外移転という一方向の捉え方ではなく、双方向の技術交流と相互刺激による革新を求めるという意味で考えると、そこに大きなチャンスも見出せるように思います。
そうしたチャンスをものにしていくためには、業務プロセスや組織・マネジメントのあり方といった制度面での対応のみならず、日本人が不得意とされる異質な考え方のぶつかり合う環境で仕事を進められる企業文化を醸成するための工夫を行っていくことが必須であると思います。この点、昨年来多くの日本企業が外国人社員の採用に積極的になっていることは大きく寄与していくことになろうと思います。
幸い、情報の共有やコミュニケーションの確保といった問題については、最新のITがその解決に大きく寄与することができると思いますし、その適用にあたっては各企業が時間をかけて導入してきたシステムインフラや、その動きを通して獲得してきたリテラシーが大きな助けになっていくのではないかと考えられます。
今年は、震災復興という厳しくとも前を向いた取り組みが本格化していく一方で、波乱含みの世界経済の荒波の中で、製造業は生き残りを賭けた努力を続けていくことになると思います。弊社としましては、製品や技術、そして、これまでの経験をフルに活かしたサービス等により、お客様のご要請に対し、積極的にお応えしていきたい、そして、日本の製造業の再飛躍に向けた取り組みの一端をしっかりと担っていきたいと考えております。
重ねまして、本年もお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
(代表取締役 社長 山田)
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