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DIPROニュース

2012

6月号

2012.06.10

10年後の日本、そしてR&Dの現場では・・・

1.6月は当社も新人配属の月

新年度が始まって早くも2ヶ月が経ちました。弊社でも、この4月に入社した初々しい顔の新入社員達が、初期の受け入れ教育を終え職場に配属される時期となります。毎年この時期に行う配属希望面談は、新しい顔ぶれの個性に触れ、将来の活躍を想像してみるという点で楽しみなイベントでもあります。ここ数年は、外国出身者の比率が高くなってきたことが特徴でしたが、従来になく今年は女性の比率も高く、一口に新人といっても一昔前に比べると内容は大きく様変わりして、いろいろな意味で多様化してきたものと感じています。

また、この時期は来年春入社に向けた採用(就職)活動の時期でもあります。㈱マイナビの2013年卒の内々定率は4月時点で震災前の一昨年同月比プラス2.5%の33.5%と、若干好転しているようですが、リーマンショック以降の“新就職氷河期”に卒業した既卒者、第二新卒者を含めると、よく言われるミスマッチを含め就活戦線は未だ厳しい状況にあるといわれています。

一方、昨年来、開発現場からは、領域によっては技術者が大幅に不足し、それに対し、中途採用をしようとしても、あるいは外注をしたくとも、どこからも人が出てこないといった、就職難とは正反対の声も耳にします。リーマンショックによる景気停滞や昨年の東日本大震災の影響で遅れ勝手となっていた製品開発の挽回を図るための業務量ピークといった背景もあると思いますし、震災後に帰国した外国人技術者が全ては戻らずにいるといった供給面の要因もあるかと思います。いずれにせよ労働需給が不安定であることは、社会にとっても、企業にとっても、大きな問題であると思います。

2.人口減少のインパクト

今年4月に総務省から発表された人口推計によれば、来年以降生産年齢(15歳~64歳)人口は急激に減少し、10年後の2022年には現在に比べ9.6%程度減少するとされています。新聞でも報道されていましたが、いわゆる団塊の世代は数年前から定年である60歳を迎えていたものの、実際には再雇用制度の適用で仕事を続けてきたが、いよいよ年金受給年齢の65歳に達して職場から離れていく。そして、豊富な経験とノウハウを持つそうした方々の引退は企業にとって大変大きなインパクトとなるとコメントされています。

一方、その人口推計から年齢別の人口推移を見通すこともできます。技術開発の第一線で活躍する中核技術者となるであろう25歳から44歳の年齢層だけを取り出して見ると、同じく10年後の2022年には、何と現在に比べて約18%も減少すると推計されています。

単純すぎる仮定ではあるものの、知識集約型で人への依存度が高いR&Dの分野では、20%近くもの人員減少は極めて大きな問題ですし、10年という期間は、振り返ってみれば判るように、そう長い時間ではありません。


3.Diversity&Inclusion(多様性の受容)

出生率の向上などの人口減少に向けた対策は最も根本的な問題ですが、企業の立場に立って、今後10年という時間で考えると、先に触れた主戦力である年齢層の減少に対してはもう手遅れなのです。

Diversity&Inclusionという考え方は人種のルツボといわれた米国で、1960年代に人種問題への取り組みの中で生まれ、その後広い意味でのマイノリティを包含する考え方に発展し、企業内でもマイナスではなく多様性の生み出す競争力というプラスの視点で捉えられるようになってきたと言われています。日本でも2000年代中盤から女性社員の就業支援などの分野で、専門組織を設置するなど積極的に取り組む企業が増えていますし、制度面でも種々の対策が打たれてきています。

国内での技術開発の競争基盤を維持させるためには、女性社員のより一層の戦力化、外国人従業員の積極採用、そして、60歳以降のベテランの方々の積極活用の三つの施策が必須といわれています。しかし、日本国内の企業で、特に現場レベルでの取り組みの歴史はまだ浅いものと言えます。

「ダイバーシティ」という言葉はDiversity&Inclusion(多様性の受容)の略語として使われたものとのことです。制度面ではともかくとして、職場慣行にまで踏み込んでみると、まだまだ、各人がこうした環境を自然に「受容」できているレベルにあるとは言えないと思っています。

実態として、当社でもここ数年、女性比率、外国人従業員比率は目に見えて上昇しており、さらに、これから数年で60歳以上の社員の数も増加していく見通しです。こうした中で性別、国籍、年代の違いから生ずる考え方の違い、それによるコミュニケーションや相互理解の問題は、日常の問題となりつつあるように思います。

しかし、10年先の現実を考えると、社員一人一人がそうした日常の問題に直面し、お互いの相違を受容しつつ、解決策を見出し、積み重ね、新たな文化を作り上げていくことが必要であろうと思います。


4.おわりに

ここまで、10年先を頭において日本の労働力人口の減少について、企業として取り組むべき重要な課題として触れてきました。一方で、さらに長い期間で考えると、いまや出生率が日本より低くなった韓国、あるいは一人っ子政策をとってきた中国でも、同様の問題に直面すると言われています。

果たしてそうなったとき、一足先に直面しつつある日本が、こうした環境下においても生産性の高い組織や業務プロセス、そして企業文化を作り上げていくことができるならば、それこそが日本の新たな競争力となるだけではなく、東アジアの国々の中にあって、価値有るベンチマークとして貢献できることにもつながるのではないかと思います。

私たちも、自らの企業内部での実践はもとより、私たち企業のミッションであるICTの分野で直接あるいは間接的に、こうした環境の変化に対応していくための基盤作りに寄与して行きたいと考えています。


(代表取締役社長 山田)

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