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DIPROニュース

2012

10月号

2012.10.10

富士重工業株式会社 航空宇宙カンパニー様における
Teamcenterを活用した設計部品表システム構築事例

Teamcenterは、製造業におけるさまざまなフェーズ(製品の企画、設計、生産準備など)でお客様の開発業務をサポートする豊富な製品群を提供することができるPLMシステムです。

今回は、富士重工業株式会社 航空宇宙カンパニー様(以下、FHI様)におけるTeamcenterの導入事例をご紹介いたします。

お客様の事業内容

【拠点】
栃木県宇都宮市および愛知県半田市

【事業内容】

航空機、宇宙関連機器ならびにその部品の製造、販売および修理。
主な製品:戦闘ヘリコプターAH-64D、多用途ヘリコプターUH-1J、初等練習機T-5、無人偵察機システム、Boeing777中央翼、Boeing787中央翼

富士重工業株式会社様 宇都宮製作所(航空宇宙カンパニー)
富士重工業株式会社様 宇都宮製作所(航空宇宙カンパニー)

D-SEND#2システム
D-SEND#2システム
Teamcenterの部品表管理適用例
宇宙航空研究開発機構(JAXA)殿との契約により
FHIで開発・製造中

Ⅰ.システムの一新とTeamcenterの採用

(1)背景

2010年当時FHI様では、設計部品表システム(以下、E-BOM)をTeamcenterの前身システムであるMetaphaseをベースに構築していました。このシステムはハードウェアの保守期限が間近に迫っており、このままでは今後の継続的な安定稼働に支障をきたす恐れがありました。また、単純にハードウェアを入れ替えただけでは、OSバージョンなどの問題で現行システムを稼働させることができないという制限もありました。

一方で、以前から「CADデータ管理」の品質向上、適用拡大を行いたいという想いをお持ちでした。CADデータ管理システムは他社との共同開発で、一部の製品が管理されている状況で、FHI様が設計/製造するCADデータ全てを独自に管理する環境は整っていませんでした。

(2)Teamcenterの採用と狙い

設計管理課 係長 海老原様
設計管理課 係長 海老原様

今回、上記のようなE-BOMサーバの老朽化更新をきっかけに、E-BOMの移行とCADデータ管理の品質向上・適用拡大を同時に実現するために、Teamcenterを採用することとなりました。

「Teamcenterなら、Metaphaseの情報も移行でき、CADデータも管理できるので、これが良いのではないかと考えていました。」(海老原様)

またMetaphaseでE-BOMを構築したときには、利便性向上などのために稼働後も多くの小改善要望が発生し、その度に開発をベンダーに依頼する必要があり、非常に手間、期間がかかりました。

今回のTeamcenter上でのE-BOM構築においても、ユーザインターフェースの改善や出力帳票フォーマットの修正などの小改善は、稼働後にも必ず発生するものだと予測されており、小さな改善であればFHI様社内で対応できるようにしたいというご要望をいただきました。

この解決策として、弊社から“主な機能はExcelベースで開発し、Teamcenterのカスタマイズを最小限に抑えることにより、システムの柔軟性を上げる”という提案をしました。この提案をFHI様に受け入れていただき、弊社で新システムを開発することとなりました。

Ⅱ.システムの移行で得られたもの

(1)機能改善および他システムへの発展

新E-BOMシステムでは、主な機能がExcel上で実装されているため、ユーザインターフェースの改善などはFHI様にて実施することが可能となりました。また、新E-BOMシステムExcel上に表示されている情報は、通常のExcelと同等に扱うことが可能で、E-BOM情報の他システムへの発展利用が容易になりました。

(2)Teamcenterバージョンアップへの対応

主要機能をExcel上で開発することにより、Teamcenter上のカスタマイズを最小限に抑えることができました。これにより、今後のTeamcenterバージョンアップ対応の期間短縮、費用削減が可能となります。ライフサイクルが長い航空機の情報を管理するシステムとしては、非常に大きな効果を生むことが期待されます。

(3)帳票の再編

システムの一新に伴い、帳票類のフォーマットも一新されました。これまでは最低でも4ページ必要だった帳票を、最低1ページとすることができました。また、帳票類のフォーマットもExcelで管理されており、FHI様にてフォーマットを修正することが可能となっています。

システム構成およびユーザインターフェース

Ⅲ.本番稼働への短期対応

設計管理課 吉澤様
設計管理課 吉澤様

本番稼働は、Metaphaseサーバの保守期限が迫っていた関係で、業務が高負荷な時期と重なることが避けられない状況でした。しかし、データ移行プログラムの工夫および事前検証からのフィードバックにより、管理情報を見直し、移行データを絞って最小限にした結果、データ移行の時間を短縮させ、数十万件あったデータ移行およびシステム切り替え作業を週末2日間で完了させることができました。

また新システム稼働後は弊社メンバーがお客様先に常駐し、不具合や問題が発生した場合に、即対応する体制をとりました。その結果、稼働開始後も業務を止めることなく、無事に新システムへ移行することができました。

「もしこの時期に、システム移行のために業務を数日止めるようなことが発生していたら、業務へのインパクトは非常に大きなものになっていました。」(吉澤様)

Ⅳ.開発情報一元管理へ向けて

FHI様では、開発業務に必要な情報の一元管理を目指されています。今回Teamcenterを導入したことにより、E-BOMやCADデータはもちろん、ホストコンピュータで管理している設計情報や、Viewerデータなど、さまざまなデータを一元管理する基礎ができました。

写真左から : 情報システム課 山本様、設計管理課 課長 坂原様、研究部長 米田様、設計管理課 吉澤様、設計管理課 係長 海老原様
写真左から : 情報システム課 山本様、設計管理課 課長 坂原様、
研究部長 米田様、設計管理課 吉澤様、設計管理課 係長 海老原様

「設計情報管理の将来に対する発展性が広がりました。」(海老原様)

さらに、設計情報のみならず、生産部品表情報や冶具データの管理など、幅広い情報の一元管理を視野に入れられています。これらの情報の一元管理の実現に向けて、Teamcenterに大きな期待をいただいております。

弊社では、これからも、FHI様の目指す情報一元化を現実の姿にするため、システム開発や運用・サポートを通してご支援させていただくことを考えています。今後もご期待に沿えるよう、より一層尽力させていただきます。

(技術ソリューション部 堀口)

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