第35回 国際デンタルショーが、3月11日から15日の5日間、ドイツのケルンにて開催されました。本展示会は2年に1度開催される世界最大の歯科医療・歯科技術の展示会で、世界中から最新の情報、機器、装置を求めて、歯科医、歯科技工士、ディーラーなどが集まります。そのため、展示会期間中のケルン市内のホテルの宿泊料は、通常時の5倍ほどに跳ね上がります。今回は、会期前日に雪が降り積もり、3日目くらいまでは雪が残る状況でしたが、主催者の報告によると、来場者数は149カ国から125,000人(内48%がドイツ国外から)、出展者数は56カ国から2,058社(内68%がドイツ国外から)、展示面積は150,000㎡(東京ドーム約3個分)と、全てにおいて前回を上回りとても盛況であったとのことです。
弊社デンタル事業室も、主に海外展開に向けての市場調査を目的に、以下2つの製品と、1つの開発中ソフトウェアを展示してまいりました。
DIPROニュース2012年8月号でご紹介した「世界最速加工」、「世界最小」、「世界最軽量」の3つの世界一と、国内の小規模技工所でも導入可能な低価格を実現したワックス専用加工機です。実際には、WAXYにて加工した加工物(ワックス)を、ロストワックス法にて金属で鋳造し、表面を磨いたあと、患者さんの口の中に入ります。
あとで調べたところ、イギリスにWAXYという名前の競走馬がいたそうです。1790年代に活躍し、第14回ダービーステークスに優勝。生涯戦績12戦11勝ととても速く、強い馬だったようです。加工機WAXYのイメージにピッタリなので、馬をデザインしたロゴマークを現在検討中です。
WAXY同様に、国内小規模技工所でも導入可能な低価格を目標に開発した非接触式(パターン投影型)計測機です。1模型(Ø100mm H45mmの範囲)を約40秒、±25μmの精度で計測可能で、現在、世界的にシェアを拡大している歯科用CAD「exocad」とシームレスな連携を実現しています。実際には、歯科医院で採取した印象(歯型)に石膏を流し込んで作成した模型をDORAにて計測します。その後、CADでクラウン形状を設計、CAMでNCデータを計算して、WAXYなどの加工機で加工します。
DORAは、Dental Optimum Restoration Assistantの略ですが、前述のWAXYが馬だとして、それを駆る強く美しい女性の名前をイメージし、ロゴにも女性をデザインしています。(ちなみにこのロゴは、弊社と協力関係にある技工所の技工士の方にデザインしていただきました)
DORAとWAXYは、それぞれ別々に他のシステムと繋げて利用することもできますが、一緒に活用することにより人馬一体の働きをし、技工士さんの仕事を支援します。
現行の歯科用CADには、解剖学的な視点から歯冠形状をほぼ自動的に設計するもの、技工士の手作業を仮想的にコンピュータ上で行うものの2種類があります。弊社では、この2つとは全く異なる思想のCADを開発しています。計測した健康な歯のデータをデータベースに溜め込んでおいて(ビッグデータ)、その中から最適な歯を選び出す(治療する歯に隣接する歯の形態や、歯の並び、向きなどから判断)というものです。データベースが大きくなればなるほど、修正不要な最適な歯が自動的に設計されると考えています。
今回が初の海外出展であったため、準備段階から分からないことも多く、装置とは別便で宿泊ホテル宛に郵送した荷物が、現地の税関で止まってしまい、その連絡票も何故かホテルに届かず、結局最終日まで荷物を受け取れなかったなどのトラブルもありましたが、さまざまな方々のご協力のお陰で出展することができました。この場を借りて御礼申し上げます。小さな手作り感いっぱいのブースであるにもかかわらず、トルコ、エジプト、サウジアラビア、インド、ブラジル、メキシコ、ポルトガル、スペイン、ギリシャ、ルーマニア、ロシア、アイスランド、中国など、さまざまな国の方々に来ていただき、熱心に見ていただくことができました。中には、冗談とも本気ともとれるような「最終日に持って帰りたいから売ってくれ」と言われる方もいました。結果、各国の歯科事情やDORA&WAXYの可能性について、非常に有意義な情報を得ることができました。今後これらの情報を整理し、国内だけでなく、海外においても歯科技工の発展、職場環境改善に貢献できるよう一層の努力をしてまいりたいと思います。
手前がDORA、奥がWAXY
WAXYに集まる来場者
(デンタル事業室 石塚)
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