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DIPROニュース

2018

3月号

2018.03.12

株式会社タチエス様 事例紹介
国境無き設計データ流通改革

株式会社タチエス様では、近年急速に加速し続ける製造業グローバル化の波に先立ち、開発拠点の世界展開を推し進めています。『Global Seat System Creator(フレームを含めたシート開発業務ができ、グローバルで生産できる会社)』を企業ドメインとし、グローバルでの開発~生産までのモノづくり体制を実現しています。

グローバルでの開発~生産までのモノづくり体制

世界各所で日々更新されるデータを効率よく管理する事を目的とし、グローバル規模でCADデータやドキュメントファイル等の一元管理が可能なTeamcenterを採用されました。 今回は株式会社タチエス様における、Teamcenterによる遠隔拠点間データ管理の導入事例について、ご紹介いたします。


お客様の事業内容

株式会社タチエス ロゴ
株式会社タチエス
本  社 : 東京都昭島市
設  立 : 1954年4月7日
従業員数 : 10,986名(連結 2017年3月31日現在)
基幹事業 : 自動車用のシートシステムの企画・開発と、各種シート製品の製造
ホームページ : http://www.tachi-s.co.jp/
展示ブース写真

Teamcenter導入初期のデータ流通

タチエス様日本拠点のTeamcenter導入は2012年。マルチCADに対応している事や、接続形態が豊富である事などを理由に、数あるPDMの中からTeamcenterを選択されました。

導入当時、既にいくつかの海外拠点で設計業務が開始されていた事もあり、早い段階から日本と海外のデータ流通の仕組みについての議論が開始されていました。

日本でのTeamcenter導入後、海外拠点とのデータ流通は、Teamcenterの外にデータをエクスポートして送付し、その後海外での設計完了後、受領したデータをTeamcenterに戻すという、手動での受け渡しを行っていました。アクセス権や版数管理が厳格なTeamcenterと、ファイルベースでの管理を併用するには、厳格なルールを決めて運用する必要があり、誤操作のリスク・操作の手間・二重管理の難しさ等もあり、設計者に大きな負担を強いるものでした。そのため、海外連携システムを早期に構築する必要がありました 。

海外拠点との接続方式の検討

Teamcenterが実現する海外連携方式はいくつかありますが、以下の2つが候補として挙がりました。

  • 海外から日本のTeamcenterに直接ログインする『遠隔地4Tier』
  • 複数のTeamcenterサーバを構築・接続し、指定したデータのみ送受信を行う『マルチサイト』
『遠隔地4Tier』、『マルチサイト』

『遠隔地4Tier』方式のメリットはデータベースが1つであるため、どの拠点からも瞬時に最新のデータにアクセスできることです。1つの製品を複数拠点で担当する協業設計のように、リアルタイム性を要求される設計シーンに向いています。

一方、『マルチサイト』方式のメリットは、拠点内にデータベースを持つため、拠点内のデータに対してはレスポンスが良いということです。他の拠点とは必要なデータの共有は行うものの、委託設計のような、1つの拠点内で業務が完結する設計シーンに向いています。 タチエス様では1つの製品を開発するにあたり、委託開発のケースが多いことから拠点内のレスポンスを最優先とし『マルチサイト』方式を採用されました。

環境構築の実施

マルチサイト方式による、海外拠点への導入・接続実績は、中国・メキシコ・アメリカの3拠点です。各国ごとにネットワーク環境に差はありますが、拠点間のデータ送信に想定以上の時間を要する事があり、通信の多重化や処理のバックグラウンド化など、各所の設定を見直して対応しました。 すでに他目的のデータ管理で利用中のTeamcenterが導入されている拠点では、タチエス様(日本)と接続するためのTeamcenterを共存させて導入する必要があり、特にクライアント端末には、設定を切替える仕組みを入れる等の工夫を行っています。

一方、国内の愛知拠点への導入では海外拠点とは異なり、遅延が少ないなど通信環境が良好であったため、マルチサイトではなく『遠隔地4Tier』を選択されました。また、ユーザ待機時間削減のためキャッシュサーバを構築しました。

環境構築の実施

導入の効果

今回のマルチサイト導入による一番の効果は、データの所有権を一元管理したまま、海外とのデータ流通が可能になった事と、タチエス様は言われています。以前はI-DEASでのみ実現できていた事ですが、今回の導入により、NXだけではなくドキュメント等でも可能となりました。

また、データ受け渡しも設計者端末のTeamcenter上で全て完了するため、管理者側の工数をかけず、データ共有をより円滑に行う事が可能となりました 。

今後の取り組み

現在は4拠点の連携が完了していますが、来年度中にベトナム・静岡を繋ぐことで、目標としているグローバル設計環境の構築が完了します。

その次のステップとして、NXだけでなくCATIAについてもTeamcenterでの管理・海外連携する環境を整え、標準部品管理・CAD間での共用部品管理等を実施。国境を越えたその先は、CADの垣根を無くしたデータ一元管理の設計環境構築を目標とされています。

デジタルプロセスでは、今後もお客様の目標の実現をご支援できるよう尽力いたします。

(PDM技術ソリューション部 関根)

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