弊社では十数年来、多くのお客様のPDM/BOMシステムの提案、構築、サポートをご支援させていただいております。本稿ではお客様より年々ご相談を頂くことが多くなっていますAras Innovatorの特徴をいくつかご紹介させていただきます。
PDM/BOMシステムの構築方法は、お客様のご意向、ご要件に合わせ、市販のPLMパッケージソフトを活用するケースや、データベース構造を一から設計しプログラム開発によりスクラッチビルドを行う手組み開発など様々です。これらPLMシステム構築のパッケージ適用と手組み開発の違いは、住宅であればすでに間取りや仕様が決まっている建築済みの建売住宅に対して、自分の好みや生活にあった間取り、設備、材料を採用できる注文住宅、衣服であれば市販されている既製のスーツと、採寸して生地から作製するオーダースーツといったところでしょうか。
しかしながら、PLMパッケージソフトは建売住宅や既製スーツのように、自分の好み(要件)やサイズにマッチしていない部分は変更できず妥協しなければならないというわけでありません。他の製品でもカスタムメイドという考え方があるように、市販のPLMパッケージは、お客様の業務にフィットさせるために、テーラリング(プログラム開発無しで独自のデータモデルを定義する)や、カスタマイズ開発を行うことができます。
一般的にパッケージソフト適用と手組み開発の違いをコスト面で見てみると、パッケージソフトを適用する場合はベースとなる部分の開発が不要となる分、手組み開発よりも開発ボリュームは少なくなりますが、その反面、ライセンスコストやランニングコストが多くなります。構築のし易さからすると、パッケージソフトはある程度完成したソフトウェア(現物)があるので完成状態が想像しやすく、それに対して手組開発は設計書などを参考に、完成時の状態を理解しなければならない難しさがあります。どのパッケージソフトを選定するのか、スクラッチビルドで行くのか、QCDや将来性、外的要因、業務とのGAPを埋められるだけの柔軟性があるかなど総合的な判断が求められます。
弊社では、5年ほど前からAras InnovatorのオープンソースPLMという特徴を生かしPDM/BOMを未導入のお客様へ、導入コストを抑え手軽に評価が始められるソリューションとしてご紹介するとともにカスタマイズのご支援をさせていただいておりましたが、最近では、お客様の方から「Aras Innovatorを紹介してほしい」、「Aras Innovatorでシステム構築したい」というご相談を受けることが大変多くなりました。ユーザー会などで、既にAras Innovatorをご導入いただいているお客様の事例を聞く機会があります。多くのお客様が、以下のような特徴を評価ポイントとして挙げておられます。
次項はそれぞれの特徴についてご説明いたします。
Aras Innovatorはオープンソースとサブスクリプションというビジネス形態をとっているため、Web上からソフトウェアを無償で自由にダウンロードすることが可能です。また、このソフトウェアはWebベースのPLMシステムであり、WebサービスもWindows端末で標準のIIS、データベースはMicrosoft SQL Serverがベースとなっているので、Aras Innovatorを実際に動かして評価したい場合、大掛かりなシステム構成も必要なくお手持ちのノートパソコンを利用し、データベースソフトをMicrosoft SQL ServerのExpress版にすることで、ソフトウェアの費用をかけることなく評価環境を構築できるという手軽さがあります。Aras Innovatorで実際にできることとしては、市販PDMで最低限必要な機能、ドキュメント管理、部品表管理、変更管理機能、権限管理は勿論のこと、WBSガントチャートと成果物を紐付けて管理する機能、ワークフローなどが標準で備わっています。
図面や技術文書の管理として、ファイルサーバを駆使して社内ルールに基づき運用されているお客様や、「本人以外どれが承認済の最新データなのかわからない」、「版数管理のルールが守られていない」、「必要なデータを検索できない」、「グローバル対応で、利用者数増、多拠点化に耐えられない」など、ファイルサーバ運用では限界を感じておられるお客様、また、すでに十数年前に導入済のBOMやPDMパッケージ、インハウスシステムの老朽化に伴うシステムのリプレースを検討中のお客様にとっては、ライセンスコストをかけずに、どんなことができるのか実際に触って評価できるオープンソースを利用するのは有効な手段です。
Aras InnovatorはWebの仕組みを活用していますので、クライアント端末は特別なソフトをインストールすることなく動かすことができます。Aras Innovatorで管理している様々な情報の検索、編集などを行うための操作は、シンプルで統一されたものとなっています。シンプルで解りやすいということは、最小限の機能を最小限の学習で扱えるようになることにつながるので、PLMシステムのように複数の部門や役割のユーザーが異なる用途でアクセスする仕組みにとっては、システム運用する立場からも重要な要素だといえます。
対極的にあるのが長年改善を重ね構築したお客様の業務特化型のシステムです。検索条件入力画面や編集画面を何百枚、何千枚と用意し、操作仕様もユニークなケースです。既存システムの老朽化対応で、Web系のパッケージシステムを業務に適用する場合、ユーザーインタフェースの違いが移行時に思わぬGAPを生むこともあります。Aras Innovatorのシンプルさは、ユーザーインタフェースだけでなくシステム管理者や開発者が利用するデータモデルや画面定義の柔軟性、データベースで管理されている実テーブルの構造を見ても、インハウスのシステム開発や運用で苦労した経験をお持ちのユーザー様であれば、Aras Innovatorのシンプルさを実感いただけるのではないでしょうか。
PLMシステム導入の狙いとして情報の統合化があります。これまで独立したシステムで運用していた部品表やCADデータ、技術文書を1つのデータベースで統合的に管理し、さまざまな情報に関連性を持たせることにより、必要な情報を必要な場面で芋づる式に辿れるようになり、情報の検索性や設計品質の向上につなげる、また、設計情報、変更情報を他部門(調達、製造など)へ正確に伝えることにより、情報の品質、伝達性を向上させる等の狙いがあります。
この統合化の取り組みは、これまで各システムが部分最適化されていたものが、統合管理されることにより情報が正規化され、おのずと全体最適化の方向に進んでいきます。お客様の業務プロセスもシステム統合化をきっかけに様々な改善要望が挙がり、お客様の商品競争力の源となっているお客様独自の普遍的なプロセス部分と、QCDを最大化するための改善すべき業務プロセスが整理されてきます。
このような業務の変化に対してPDCAサイクルをまわすことのできる柔軟性、追従性がPLMシステムには求められます。プロセスの変化や、情報量の変化に対して柔軟なカスタマイズ性を備えていることがPLMシステム選定のポイントの一つといえます。Aras Innovatorでは、ワークフローの編集やアイテムの追加、管理属性の追加、ラベルの変更などは画面上で設定作業が行えるため、ノンプログラミングでの対応を可能としています。ちょっとしたシステム改善を専門のソフトウェアベンダーへ委託せずとも、自分達で改善できる容易さも最近注目されている大きな理由の一つです。
PLMシステムの導入はお客様にとって大きな投資となります。導入コストを抑えることはリスクの軽減にもつながります。オープンシステムやクラウドサービスなど様々な形態がでてきたことで、石橋をたたいて渡る、小さく生んで大きく育てるという慎重な進め方ができるようになりました。私共ソフトウェアベンダーにとっても、単にパッケージソフトを売るだけでは生き残れない、真のソリューションサービスプロバイダーとしての実力が求められる時代となりました。DIPROはこれまで十数年培ったCAD/PDM/BOMの独自システム構築ノウハウとパッケージカスタマイズノウハウを総動員し、お客様のご期待に沿えるよう邁進してまいりますので今後ともよろしくお願い申し上げます。
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