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DIPROニュース

2016

5月号

2016.05.10

航空機のPLM技術を製造業のお客様へ

はじめに

民間航空機業界では、海外大手の機体メーカに対する国内企業の役割が年々増加(B787では機体部品の約35%が日本製)し、更には国産ジェットの開発など、今後も更なる拡大成長が見込まれ注目を集めています。

今回は、航空機の設計からメンテナンスを支えるPLMソリューションについてご紹介します。この航空機業界のPLMの考え方は、管理の厳しさや扱う部品の多さに違いはありますが、受注生産型の業界全般に通じるのではないかという考えを基にご紹介します。

航空機業界の特徴

航空機のライフサイクルは1つの機体が20年から30年と非常に長く、設計変更とメンテナンスを受けながら飛び続けます。

航空機業界の特徴

航空機はメンテナンスサービス領域においても大きなビジネスとなっており、各メーカでは機体が廃棄されるまで維持設計とメンテナンス・エンハンス作業を続けます。そのため、最新の設計データと現在の機体の物理状態との整合をトレースしながら管理する必要があります。

航空機業界に求められるPLMとは

ポイントとなるのは次の3点です。

  1. 製品の個体差を管理する「号機管理」
  2. 設計と製品をつなぐ「トレーサビリティ」
  3. 変更の原因と対策の履歴を管理する「変更管理」

それぞれについてご説明します。

航空機では製造する機体ごとに部品管理を行うため、「号機管理」が必須となります。しかし、100万点以上のBOMを号機毎に管理するのはあまりにも非効率で現実的ではありません。実際には部品ごとに適用号機を複数定義し、1つのBOMの中で全号機の情報を一括管理します。

最新の設計内容がどこまで製品に反映されているのか、追跡するためにはBOM間の「トレーサビリティ」を構築します。部品番号を機体の使用箇所別に識別しながら、どの設計がどの工程で組み付けを計画され、どこに組み付けられたかを追跡できる必要があります。

従来の方法では部品構成上の親の部品番号と自身の部品番号の組で識別していましたが、システム化が進んでいる現在では、例えばインスタンスIDなどのように、構成内で位置情報も含めて一意に部品を特定できるシステム的なIDを各構成で使用して識別します。

設計検討、生産工程検討の過程で部品に変更を加える必要がある場合はその変更についても追跡ができるように「変更管理」を行います。変更する際には問題点、及び対応案それぞれをシステムに記録し、影響する部品と紐づけてワークフローに投入、承認した上で実施します。これにより変更の原因と対策の内容をトレースできるようになります。

他業界への応用

グローバルに多様化する顧客ごとの製品状態を「号機管理」機能で個別に識別、管理し、設計されたものが製造結果に抜け漏れなく反映されていることを「トレーサビリティ」機能で確認します。

変更が起きた場合は「変更管理」機能で管理し、検討過程での顧客要件の変化をシステムに記録して他の製品への横展開や同じ製品の次回の変更に活用します。

このような航空機PLMに用いられる「号機管理」、「トレーサビリティ」、「変更管理」の考え方は工作機械、建設機械、プラント設備や重電といった受注生産品の、特にメンテナンス領域の管理に応用できる要素技術です。

こうした仕組みを構築することにより必然的に設計情報と製造物の一致が精度よく行われ、製品納入後の保守・メンテナンスのBOM情報として活用できるようになります。

今後も弊社は幅広く製造業のお客様に向けて最適なソリューションをご提案して参ります。その一つとして航空機業界で培った技術、最新事例なども活用してお客様に効果を実感していただけるソリューションをご提案しております。お困り事などございましたら是非一度ご相談ください。

(名古屋事業所 技術システム部 石田)

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