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DIPROニュース

2024

2月号

2024.02.13

“モノづくり”へのデータサイエンス活用の取り組み
~開発の上流工程における検討高度化に向けて~

製品開発効率化で、お悩みではありませんか?私たちは日々、CAE手法開発やデータサイエンスの導入支援のご提案とその業務に携わっています。ここ数年は開発の上流工程効率化や設計検討プロセスの改善に関するご相談が増えてきています。

本号では、最近の製品開発効率化のご要望を、弊社の取り組みを交えてご紹介します。日々、業務改善に悩まれている方のアイデアに繋がれば幸いです。

デジタル評価の活用により開発の後戻りを抑えて期間短縮

自動車業界では開発プロセスにおいて、設計データの3Dモデル化を中心にデジタル化が進み、それに伴い3Dシミュレーションを設計で利用するための標準化が浸透しています。つまり、設計フェーズにおける早い段階で、フィジカル評価を3Dシミュレーションによるデジタル評価に置き換える開発フロントローディングを行っています。これにより、開発プロセスの手戻り発生を抑えることが可能となり、開発期間短縮を実現しています。

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さらなる開発期間短縮と高い付加価値を生むための検討高度化への期待

昨今では電動化に伴う製品開発競争を背景に、プラン検討 / コンセプト評価といった開発上流である企画フェーズでの開発検討を高度化することで、開発プロセス全体の手戻り発生を抑え、さらなる開発期間短縮と製品開発競争に負けない高い付加価値を検討する仕組み作りが望まれてきています。この仕組みとして、企画フェーズは設計情報の抽象度が高い状態で製品性能検討・検証を行うことになるため、新商品の新規機能 / 性能について全体を見渡した状態で扱えるような簡易シミュレーションを使い、広く浅く一括検討する必要があります。また、データサイエンス技術を利用した分析・可視化により、開発初期段階で全体を俯瞰した確認が可能になると期待されています。

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設計パラメータを標準化し、情報を管理・共有することの重要性

企画フェーズの簡易シミュレーションで扱う設計情報としては、まだこのフェーズではCAD等の詳細情報はないため、車両寸法や重心・レイアウトなどの設計諸元値を設計パラメータとして使うことが前提となります。そのため、設計パラメータを管理・共有し、開発プロセス全体でパラメータを効率よく使いこなせるかどうかが重要になってきます。

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開発の上流工程における検討高度化に向けての課題

開発の上流工程における検討高度化および、その検討で使う設計パラメータ情報を管理・共有するための主な課題は、下図の3領域に分けられます。

課題①
開発プロセス全体で設計情報を共通化し、性能間での設計パラメータを統一する
課題②
企画フェーズの簡易シミュレーションで使用する予測モデルの構築と使い分け
課題③
製品性能に感度の高い設計パラメータを定義する仕組み作り
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課題①について

例として、下図のような“設計フェーズ”での、3Dシミュレーションを使って複数の性能評価を行うケースを考えます。この場合は、評価対象のCAD仕様を揃えて行う必要がありますが、検討が進むにつれてバリエーションが出て来るので、仕様が同じであるか確認する作業が手間であり、開発効率を悪化させる一つの要因となります。ただ、3Dシミュレーションの場合は同じ設計仕様のCADで評価すれば、性能評価の仕様合わせが出来ていました。

3DCAEの例 性能A・性能B・性能C→検討開始→データ収集(性能ABCで同じCADを使う)→シミュレーションモデル化→性能評価→仕様確認(同じCADであれば複数の性能評価において仕様合わせは出来ている)
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一方、“企画フェーズ”での簡易シミュレーションの場合は、下図のように3Dシミュレーションの様にCADを同じものにすれば仕様合わせが出来る訳ではなく、複数性能を評価するために同じ設計パラメータを統一して共有する必要があります。この設計パラメータの統一という作業は複数の性能について知見のあるエンジニアでないと判断が難しいという課題があります。

3DCAEの例 性能A・性能B・性能C→検討開始→性能A用パラメータ・性能B用パラメータ・性能C用パラメータ(性能ABCで使うパラメータが統一されていない)→シミュレーションモデル化→性能評価→パラメータの整合(設計パラメータを統一する作業が大変)
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課題②について

企画フェーズにおける性能予測手法として、モデルベースデザイン(MBD)で使われている1Dシミュレーションの使用が一般化していますが、同時にサロゲートモデルの使用も考えられています。また予測モデル構築の技術 / ツールとしてROM(Reduced Order Model)の利用も検討されています。

サロゲートモデル(ROM)[1]は、計算時間のかかる3Dシミュレーションよりも短時間での予測計算を可能にします。また、下図のように1Dシミュレーションや3Dシミュレーションでモデル化できない、もしくはモデル化しても十分な予測精度が出せない評価対象でも、実験データがあれば予測モデルを作成することも出来ます。

実験データ
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[1]
“モノづくり”へのデータサイエンス活用の取り組み [DIPROニュース2023年2月号]

課題③について

“企画フェーズ”での設計パラメータの検討では、各性能予測で感度の高いパラメータを管理・共有できていることが重要です。例えば課題①と②が解決している状況では、1Dシミュレーションやサロゲートモデルを使い設計パラメータを検討することになりますが、この設計パラメータの中に各性能に感度の高いパラメータが含まれていないと、目標性能についての検討を効率的に行うことができません。事前に各性能の設計パラメータについて分析を行い、感度の高い設計パラメータを定義することが必要になってきます。

すでに現状の開発プロセスで定義・管理されている設計パラメータについては、感度分析を行うことで対応可能です。しかし、CAD等の詳細形状情報については、感度のある形状部位の特定とその諸元値化 / 設計パラメータ化が必要になりますが、容易ではありません。そのため、製品性能に感度のある形状を設計パラメータとして定義する仕組み作りが課題となってきます。この課題③における設計パラメータの定義は、製品の詳細情報を分析して得られるものなので、次回以降の製品開発で活かされることになります。課題③が解決すると、製品性能に感度の高い設計パラメータとして検討するパラメータ候補を絞り込むことが出来るようになり、開発プロセス全体を効率的に検討することが可能になります。

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課題への取り組みとデータサイエンス技術活用のご支援について

今回ご紹介した課題への取り組みも含めて、以下のようなサービスをご提案しています。ご紹介内容の問い合わせや適用可否のご相談など、お気軽にお問合せください。

“モノづくり”へのデータサイエンス技術活用のためのご支援内容

  1. 設計パラメータ共通化と共有の仕組みづくり支援[2][4]

    ・エンジニアリング知識を生かした設計パラメータ共通化ご支援

    ・設計パラメータの定義・仕組み作り

    ・AWS環境およびオンプレミス環境における設計パラメータ共有システムの構築提案など

    [2]
    デジタル化コンサルティングサービス
  2. サロゲートモデル(ROM)構築支援[4]

    ・エンジニアリング知識を活かした適用モデルの提案

    ・モデルの予測精度向上のための提案

    ・HEEDS[3]、ROM Builder[3]、Pythonを活用したサロゲートモデル構築提案

    [3]
    Simcenter HEEDS
  3. 性能に感度の高い設計パラメータを定義する仕組み作り支援[4]

    ・設計パラメータの感度分析ご支援

    ・形状情報の感度分析と設計パラメータ化ご支援

    ・CADツールを活用した分析のご提案

    [4]
    エンジニアリング向けデータ利活用支援サービス

弊社ではCADデータとサロゲートモデルを利用して性能に寄与する感度の高い形状部位を抽出し、設計パラメータ化する要素技術開発に取り組んでいます。開発フロントローディングやパラメータ管理にお悩みの方、サロゲートモデルに興味のある方、性能に寄与する感度の高い形状パラメータを抽出する技術にご興味のある方、すでにこれらの技術開発に取り組んでおりお困りの方、是非お問合せ下さい。

お問い合わせ先

製品・サービスに関するお問い合わせ
(デベロップメントエンジニアリングサービス部 課長SE 荒木)

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