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DIPROニュース

2022

3月号

2022.03.10

オートモーティブデジタルプロセスセミナー2021 ONLINE のご報告

柳沼 浩嗣 社長

2月4日(金)、「オートモーティブデジタルプロセスセミナー2021 ONLINE」を当セミナー初となるオンライン配信形式にて開催いたしました。また、多くの方々からご要望をいただき、2月7日(月)から16日(水)までの期間、見逃し配信を行わせていただきました。配信期間中、ご参加いただきました皆様ならびにご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。

昨今、地球温暖化対策の迅速な実行への関心が一段と高まり、カーボンニュートラルに向けた様々な取り組みが、グローバルに加速しております。日本におきましても、政府の掲げる2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、「国のエネルギー/インフラ政策」や、「産業界全体での取り組み」が進められています。そうした中、自動車の電動化は重要な施策に位置付けられており、その取り組みは一層強化され、世界中で業界の垣根を越えた競争が激化する状況となっています。

一方、日本の製造業ではコロナ禍以前にも増して、「デジタル技術の活用」、「開発・生産システムの改革」、そして「それを担う人材の獲得と育成」が、研究開発と生産分野の重要な経営課題になっていると言われています。また、メカ・エレキ・ソフトの融合などにより、製品が高度に複雑化していく中で、更なる品質向上、コスト削減、リードタイム短縮も求められている状況と思います。自動車産業においても、ものづくりのプロセス革新の必要性は一段と高まり、それを支えるデジタル技術は益々その重要度を増してきていると思います。

「技術革新」と「プロセス革新」が、急速に進む変化の激しい状況下、本セミナーにご参加の皆様も、様々な変革への取り組みを進められていると存じます。DIPROは開発から生産に至る、ものづくりプロセスの革新に一貫して取り組んできております。今後もお客様のニーズにお応えできるよう、ソリューションやサービスに磨きをかけて参ります。

こうした状況を踏まえ、今回のセミナーは、『自動車産業を取り巻く変化』をメインテーマとし、『迫りくる電動化』と『コロナ禍におけるDX』と言う2つのテーマで構成いたしました。それぞれのテーマに関する有識者、自動車メーカー様を講師にお迎えし最新の取り組みをご講演いただき、また、自動車メーカー様のエンジニアリングITのキーマンによるパネルディスカッションは、オンラインの特性を活かし、新たにインタビュー形式で実施いたしました。

次項より、各講師の講演概要およびパネルディスカッションの概要をまとめました。

基調講演:「CASE時代における政策動向 ~電動化を中心に~」

経済産業省 製造産業局
自動車課参事官 清水 淳太郎 様

清水 淳太郎 様

経産省の立場から、CASE(Connected、自動運転、シェア&サービス、電動化)の流れと、電動化にフォーカスした政策動向についてご講演いただきました。

CASEの動きが現実化しつつある今、自動車業界はメガコンペティションの時代に突入し、新しい制御システム、モジュール化、水平統合などでの付加価値の奪い合いが発生、さらにその外側ではモビリティサービスへの他業種からの参入により新しいビジネスチャンスが見出され始めるなど、CASEは各企業のビジネス判断に直結するファクターとなりつつあります。

他方、CASEの実現は、現在私達が抱えている環境問題や、地域のコミュニティの維持、人口減少に伴う生産性向上などの課題に対する問題解決のチャンスであり、積極的に実現に取り組んでいく旨をお話いただきました。

政府は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて「電化の推進」と「電源の脱炭素化」が大きな方針であり、その中で自動車業界がグローバル市場で競争に打ち勝っていくためには、各国で掲げられるカーボンニュートラルの目標や取り組みに応じながら、EV、HEV、水素など多様な選択肢からバランスよく戦略を立てていく必要があること、これからも技術立国として世界をリードしていくためには、非常に重要な時期に差し掛かっているとの認識も示していただきました。

日本のグリーン成長戦略の中で取り組んでいる電動化の柱として、電池の国内生産基盤の確保や研究開発支援、電動車普及の支援、充電インフラ整備、構造転換が必要となる企業向け支援など政府として一歩先回りした支援を行なっていくことで、CASE革命が大きく進みつつある今、日本全体をいち早く新しいモビリティ社会に向けて進めていく姿勢をお話いただきました。

講演:「電動化で自動車や自動車開発はどう変わるか」

日産自動車株式会社
常務執行役員カスタマーパフォーマンス&CAE・実験技術開発
アライアンスグローバルVP 藤本 直也 様

藤本 直也 様

世界中で加速するカーボンニュートラルの動きに対応して、自動車の電動化は不可避となる時代を迎え、さらに魅力ある自動車をお客様に提供するために「電動化で自動車がどう変わるか」、「電動化で自動車開発はどう変わるか」について、日産自動車様の事例を交えてご紹介いただきました。

ガソリン車から電気自動車へ置き換わることにより40%の部品が入れ替わり、パッケージングの変化を促され、電動専用の新プラットフォームが生まれることになる。そこで求められる電動車像として、微細制御による走行性能向上、静粛性向上、走行抵抗の低減、e-パワートレインの進化などを磨きながら、クルマ本来の性能を高めることが重要であり、さらに新たな競争領域での+αの付加価値として、コネクテッド、FOTA、自動運転を推進することでクルマと社会を繋げること目指すとのご説明をいただきました。

自動車開発の変化としては、電費の大きなファクターとなる空力開発でのデータサイエンスによるサロゲートモデルの活用、高度な静粛性開発のためエンジン制御と音振モデルを一体化させた騒音予測の車両音振MBDの構築、バッテリ制御による耐久性向上のための市場走行情報ビックデータのAIを活用した分析、そしてデジタルツイン活用による劣化の推定といった取り組みについてご紹介いただきました。

最後に「電動化はクルマに新たな進化を促す大きな切っ掛け」となり「クルマの開発方法を大きく変えるチャンス」として捉えている、と講演を締めくくられました。

講演:「“日本の製造業再生に向けた処方箋” - MAZDAの生き方から -」

マツダ株式会社
統合制御システム開発本部
首席研究員 足立 智彦 様

足立 智彦 様

日本の産業の基本であるモノ造り企業はどうやって生きていくのか?について、前半ではマツダ様の価値創造の取組みを、後半ではSURIAWASE2.0について、ご紹介いただきました。

クルマの進化に向けて、マツダ様は「楽しく操ることにより心や体が活性化する」というクルマが本来持つ“効用”を大切にしているとのことでした。

自動走行技術で安心・安全を支え、情報ネットワークによって日常とクルマをつなげwell-beingを提供する為に、完全自動運転を可能にする要素技術(Level4)を獲得したうえで、世界トップレベルの「人とクルマのシームレスかつリアルタイムに役割をシェアし合う協調システム」を目指すとのご説明をいただきました。

マツダ様内でのシステムズエンジニアの育成だけでなく、日本の自動車産業の国際競争力向上に貢献すべく、MBD推進センタを設立し、モデルを用いた高度なすり合わせ開発SURIAWASE2.0と産官学連携でのエコシステムにより、MDB普及推進、モデル流通推進、協調領域拡大に向けた取り組みを実施しているとのことでした。

最後に、MBD推進センタと各国の標準化団体が連携し、モデル流通の世界共通のルール作りを目指すというお話と共に、モデルを基に仕事をすることで日本の復興、さらには日本の国際競争力強化に貢献したいとのメッセージにて締めていただきました。

特別講演:「社会・産業のDXを加速するデジタルアーキテクチャ」

慶應義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科
教授 白坂 成功 様

白坂 成功 様

アーキテクチャは、目的を実現するための仕組みです。仕組みを構成する手段が変わると、実現可能な目的も変化(拡大)します。デジタル技術により実現できるようになった新たな目的へのTransfomation(=DX)と、その新たな目的に対するHow to makeであるシステムズエンジニアリングの中にシステムアーキテクチャが含まれます。

デジタル活用社会の例として、内閣府が提唱するSociety5.0モデルを挙げられ、そのサイバー空間とフィジカル空間の高度な融合による、人間中心の社会モデルの特徴「自立進化とつながる社会」、「設計対象範囲の変化」、「急速な変化への対応」、「説明責任が求められるシステム特性の増加」を産業構造の変化、System of Systemsの実現、法とアーキテクチャ、動的な変化を考慮したアーキテクチャ等の具体例を交え紹介されました。

Society5.0では、広い範囲に対して、つながりを維持しつつ、自立的に進化するシステムの品質・安全性を担保しながら、アジャイルに回すことが求められます。また、目指すべきスマート社会は、多様なプレイヤーによる多彩なサービスを実現するためのデジタルインフラ整備が必要となります。

最後に、Society5.0を実現するためのキーとなるX-人材=高い抽象度と具体経験を兼ね備えたアーキテクト人材が求められるとし、その人材育成が日本の新しい産業、業界を作る上で重要との言葉で講演を締めくくられました。

インタビュー:「コロナ禍におけるDX」

  • トヨタ自動車株式会社
    DX開発推進部長 日比 稔之 様
  • 日産自動車株式会社
    グローバル IS デリバリー本部 エンジニアリング&デザインシステム部 部長 Xu Bing 様
  • 本田技研工業株式会社
    デジタル改革統括部 プロダクトライフサイクルマネジメント推進部 部長 チーフエンジニア
    石﨑 哲男 様

今回はコロナ禍における働き方の変化、そしてこれからのEITの取り組みについて3社のエンジニアリングITのキーマンの方々からお話を伺いました。

トヨタ自動車株式会社 日比様のお話では、場所にとらわれず、どこでも会議や設計等の業務を行えるようネットワークの増強や高性能PCへの切り替え、コミュニケーション強化のためスマホのカメラ利用の許可、VDI環境の構築を実施しているとのことです。また、紙媒体での承認業務が在宅勤務の妨げとなっていたため、ペーパレスでの電子承認へ徐々に移行する等、業務のデジタル化も推進されています。これからの更なるDX化を見越し、次代を担う人材育成にも力を入れて行きたいとのことです。

日産自動車株式会社 Xu Bing様のお話では、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の実現のため、その中核を担う電動化を推進していくとのことです。そのために、今後数年間で積極的にエンジニアを雇用し、電動化とソフトウェアの知識とスキルを向上させ、製品開発能力を向上させる等の変革を進める予定です。また、完全カーボンニュートラル企業を目指されており、WP29への対応や有害物質の報告等の規制に向けた変革が求められる時代において、もはやDXは「あればいいもの」ではなく「Nissan Ambition 2030」を達成するための重要なソリューションそのものだと捉えられています。

本田技研工業株式会社 石﨑様のお話では、コロナ禍における働き方の課題として、テレワークで時間的な効率が上がった一方、オンラインでのコミュニケーションであると、対面よりも理解の質の低下や認識の不一致が生まれることがあるため、今後改善が必要とのご見解でした。DXの取り組みとしては、エンジニアリングデータをクラウド上で参照できる「取引先共創環境」を構築し、お取引様も同じ環境で業務を行うことで業務効率化を目指されています。クラウドの本格利用を見据え、インフラの整備を如何に戦略的に進めるかが今後の課題とされていました。

全体を通して

これまで当セミナーは、27回にわたり実会場にて開催して参りましたが、昨年度はコロナ禍の状況も鑑み中止といたしました。その後、多くのお客様からご期待、ご支援をいただき、今回、2年ぶり28回目となる当セミナーを開催させていただくことが出来ました。

オンライン形式での開催とはなりましたが、これまでの実会場開催では地理的にも時間的にもご参加いただくことが難しかった全国のお客様にご参加いただけ、おかげさまで参加者数は過去最高となりました。

また、弊社製品やソリューションのデモ展示に関しましても、オンデマンド形式にて紹介動画を同時配信させていただきましたが、こちらも多くのお客様にご利用いただくことが出来ました。

なお、セミナー配信当日は、配信システムのトラブルにより、ご講演をいただきました講師の方々、また当セミナーのご視聴を楽しみにお待ちいただいておりました方々へ多大なご迷惑、ご心配をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。

今後は、このような障害を起こさぬ様、配信準備・運用に万全を期して参ります。

アンケートでいただきました当セミナーに対するご評価や、運営に関する様々なご意見、アドバイスを参考にさせていただき、より良いセミナーに成長させて行きます。なお、お客様の業務に関する様々なご要望、お悩みにつきましては、弊社営業やシステムエンジニアが詳細をお伺いし、問題解決に向けた建設的なご提案をさせていただきたいと考えております。

これからもDIPROは、社員全員が一丸となって、お客様に寄り添いながら問題解決へ向けて進んで参ります。今後ともご愛顧いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

(オートモーティブデジタルプロセスセミナー事務局)

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