私たちは、“モノづくり”にAIを活用することで開発力向上と省力化を実現するために、データドリブンな製品開発やエンジニアリング側の仕組み作りをご支援しています。
日本では少子高齢化が大きな社会問題となっており、労働人口が減少していくことが懸念されています。総務省発行の情報通信白書によりますと、15歳から64歳の生産年齢人口は1995年をピークに、年々減り続けており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)にまで減少すると見込まれています。
(出典:総務省発行 令和4年版 情報通信白書)
また、ワーク・ライフ・バランス確保や働き方改革が推進され、各社進められている「時間外労働の上限規制」や「休暇取得の義務づけ」などの取り組みにより、ひとりあたりの労働時間も減少傾向にあります。
一方で、顧客が求めるサービスや製品は、複雑化・多様化しています。そのニーズに応えつつ、環境問題やセキュリティ等に関する各国や地域ごとの法規制など、対応しなければならない課題も多くなっています。
このような背景から、労働者ひとりあたりの業務負荷を下げる(省力化)とともに、高度化する市場ニーズや社会変化に応えるため、知的生産性を大きく引き上げること(開発力向上)、その両方が求められています。
製造業でIT技術が活用されるようになってから長い歳月が経ちますが、現在でもどんどん進化を続けています。開発プロセス上にCADによる設計や解析が登場することは常識となっており、開発効率・品質は各段に向上していることは疑いようがありません。
そして昨今、物心ついたときからITに触れてきた、いわゆる”デジタルネイティブ世代”も労働者として参加するようになっています。当たり前にIT技術を駆使することに非常に長けており、開発業務でもその強みを発揮しています。ですがその反面、製品をデジタルで精巧に表現できるためか、実物がどのようなものになるかに対して関心が向かない面があるように思います。
CADによる設計では、自重や外力による変形や部品の成形性などが考慮されていない実現不可能なレイアウトや形状作成ができてしまいます。また解析評価では、適切な境界条件や特性・パラメータ設定、予測値と実験データの間に生じる差異を補完する補正項などが必要となります。デジタル評価をもとにOKと判断したが、考慮できていなかった特性や条件によるズレ、想定以上の製造バラつきや撓みなどによる不具合が発生し、設計変更で大きな手戻りとなってしまうことも多いのが実情です。
IT技術は確かに発展し活用も進んでいますが、デジタルデータやシミュレーションはまだまだ万能ではありません。実際の現象をそのまま再現するには至っておらず、技術者の経験が頼りとなっています。実際のものがどう出来上がるのか、デジタルでの検討との違いを意識して進めてほしい、できれば肌感覚で分かってほしいと感じるベテラン技術者もいらっしゃるのではないでしょうか。ある自動車OEMで設計支援をしていてもIT技術との向き合い方を考えさせられます。
製造業におけるIT技術といえば、CADによる設計や解析による性能評価が一般的になってきていますが、最近はAI技術の急激な発展により、蓄積された文章・画像・動画を学習用データとして、文章を生成出来るAIや画像や動画を生成するAIが話題になっています。これらのAIは私たちの生活を便利にし、ビジネスで役立てられると考えられていますが、ユースケースやアウトプット品質に課題があるため、ビジネス、特に“モノづくり”においての実用化にはまだ時間がかかりそうです。
私たちは、製品開発の現場ですぐに役に立つAIは、過去の製品データを学習し、新製品の能力を予測・分析・評価に使えるタイプのAIと考えており、それはサロゲートモデルと呼ばれています。
サロゲートモデルは製品開発の設計初期に利用できるため、検討手戻りを防ぐことによる省力化や、サロゲートモデル&データサイエンスを活用した設計検討の高度化による開発力向上が図れます。しかし、サロゲートモデルは新規に構築するにも性能をアップデートするにも、過去の設計・解析・実験のデータが必要です。そのため、データドリブンな製品開発プロセスが必要になってきます。(DIPROニュース2024 2月号参照)
【関連記事】
“モノづくり”へのデータサイエンス活用の取り組み ~開発の上流工程における検討高度化に向けて~
[DIPROニュース2024年2月号]
現在のモノづくりは、過去データも利用するデータドリブンな製品開発プロセスになっていません。サロゲートモデルに限らず、学習用データを使いAIを構築し運用するには、過去データや新規データへのデータトレーサビリティを確保したデータ保存と管理の仕組みが必要になります。
AIを活用した製品開発は、データドリブンなデータ管理 / システム / ツールを“新しい仕組み / 道具”として使い、製品開発のユースケースを“ありたい姿”として描く必要があります。この“ありたい姿”を描くには、システムを使いこなす人間側の“新しい取り組み姿勢”が求められます。
“ありたい姿”を描き、データドリブンなデータ管理 / システム / ツール / 製品開発ユースケースを実際に具体化し利用するには、下記3項目の課題が出てくるため、システムを使いこなす人間側の“新しい取り組み姿勢”が重要になってきます。
AIを活用するには、DX / IT知識のバックグラウンドが必要になってきます。しかし、ITの領域に元々興味がありIT知識や最近の動向について自己学習をしているメンバーと、そうでないメンバー間では、前提知識が異なるため思い描くイメージに違いが生じ、メンバー間の認識合わせが大変になるからです。
データ管理 / システム / ツールを使ったユースケースを実際に具体化するには、まだ標準化して落とし込まれていない製品評価手法や分析方法といった、新しい製品開発プロセスに伴う“新しい仕組み”=“ありたい姿”を描くことが不可欠であり、そこには生みの苦しみがあります。
“新しい仕組み”を運用しても利用率が低いといった悲劇を防ぐためには、実際に製品開発を行うメンバーが、POCなどを通して“新しい仕組み”の検証と修正を繰り返すことが重要になってきます。
“新しい仕組み”=“ありたい姿”で実現したいことが、既存のITツール機能では実現できないことがよくあります。この様な場合は、機能カスタマイズや内製ツールで欲しい機能を作り込むといった対応が必要になってきます。
前章の課題1「仕組みを構築するメンバーのDX / ITリテラシーのバラツキ」に対して、DX / ITリテラシー教育が方法として挙げられます。研修やe-ラーニングを使った組織主導の教育により、IT知識や最近の動向について触れる機会を増やすことで、社員のDX / IT知識のバラツキを減らし、新しいDX / IT技術を使った業務効率化を考える機会を増やす効果が期待できます。また、教育だけでなく知識を実務で使いこなすために、新しいDX / IT技術を扱うコツ・ユースケース・好事例を紹介するといった、運用・推進を促すような役割を立てることも大事です。
前章の課題2「ありたい姿を構築することの難しさ」に対しては、開発プロセス全般を俯瞰でき、半歩先の組織の未来を考えることのできるメンバーをリーダーにすることが方法として挙げられます。しかし、この素地を持ったメンバーが見つかることは稀です。この様な場合は、最後の結果まで責任を持って付き合うことができるITツールやAIに詳しいだけじゃなく、製造現場をよく知っており、エンジニアリングの視点を持ったコンサルティング会社に支援を依頼することも選択肢の1つであり、DIPROはその候補になります。
前章の課題3「ITツールへの期待と現実とのGAP」に対しては、“新しい仕組み”とツール機能を確かめ使いながら修正を繰り返すことで、“ありたい姿”に近づけていくといったアジャイル的に進める方法が挙げられます。
私たちは、冒頭でも触れている通り、“モノづくり”にAIを活用することで開発力向上と省力化を実現するために、データドリブンな製品開発やエンジニアリング側の仕組み作りをご支援しています。
今回ご紹介した課題への取り組みも含めて、以下のようなサービスをご提案しています。ご紹介内容の問い合わせや適用可否のご相談など、お気軽にお問合せください。
・エンジニアリング知識を生かした設計パラメータ共通化ご支援
・設計パラメータの定義・仕組み作り
・AWS環境およびオンプレミス環境における設計パラメータ共有システムの構築提案など
・エンジニアリング知識を活かした適用モデルの提案
・モデルの予測精度向上のための提案
・HEEDS[2]、ROM Builder[2]、Pythonを活用したサロゲートモデル構築提案
・設計パラメータの感度分析ご支援
・形状情報の感度分析と設計パラメータ化ご支援
・CADツールを活用した分析のご提案
弊社ではCADデータとサロゲートモデルを利用して性能に寄与する感度の高い形状部位を抽出し、設計パラメータ化する要素技術開発に取り組んでいます。開発フロントローディングやパラメータ管理にお悩みの方、サロゲートモデルに興味のある方、性能に寄与する感度の高い形状パラメータを抽出する技術にご興味のある方、すでにこれらの技術開発に取り組んでおりお困りの方、是非お問合せ下さい。
PICK UP