2023年4月にCGTech社よりVERICUTの新バージョンがリリースされました。
新バージョンのVERICUT V9.3は機械、工具、材料に関するデータを取り込み、シミュレーションと製造ワークフロー全体を改善する機能によって「よりスマートで」「より効率的な」製造工程の実現に重点をおいています。
今回はV9.3で追加 / 強化された、1)工具マネージャー機能強化、2)最適化オプションモジュール「VERICUT Force」の機能強化、3)CNCマシン接続によるシミュレーション精度向上の3点についてご紹介します。
工具マネージャーには工具性能データベースが含まれており、VERICUTの機械加工最適化データ(主軸回転数および切り取り厚さに対する送り速度の表)と連動する機能が追加されました。この機能によりユーザーが最適な切削条件を設定できるよう支援します(図1)。これらのデータは使用する切削工具の種類、被削材の材質、切削加工方法(荒削りまたは仕上げ)に基づいた値を表示します。
最適な切削条件を決める場合、工具メーカーのカタログ参考値やユーザーの過去データを元に検討するケースが多いと思いますが、初めて扱う工具や被削材の組み合わせによっては最適値にたどり着くまでに苦労される場合があります。今回機能強化された工具マネージャーではデータベースに基づいた適切な切削条件を示してくれるため最適条件を検討する際の目安となり、検討時間の短縮に役立ちます。
「VERICUT Force」はNCデータの切削状況を把握し、送り速度を自動調整するオプション機能です。ワーク材質・工具材質・工具形状・切削条件等から工具にかかる切削抵抗値を計算し、加工パス全体において工具抵抗値が均一になるようにNCの送り速度を最適化します。送り速度を最適化することにより、加工時間を短縮できるケースがあり、工具寿命を向上させることにも繋がります。
VERICUT V9.3における工具たわみ計算の計算対象は、回転工具アセンブリ全体(工具として使用されるホルダー、刃先交換式切削工具、CADアセンブリモデルなど)に拡張されています。これにより計算精度が向上するため更なる機械加工部品の品質向上、工具および主軸ベアリングの寿命延長を見込むことができます。
またすべての切削工具に最大体積除去率の制限が追加され、切削条件最適化の精度を向上させることができます(図2)。1)の工具マネージャー機能強化と併せて最適化の機能が更に強化されました。
CNCマシンから取得した情報を読み取り、VERICUTでの仮想機械データと一致しているかを確認できる「プリチェック」機能が追加されました。実機とVERICUTデータの主要な相違点を特定することができるため、実際の加工時に何が起こるかを事前に把握・修正することで予期せぬ問題の回避に役立ちます。また実機情報とVERICUTをリアルタイムで比較するライブモニタリング機能や加工後のアーカイブデータをVERICUTにフィードバックしての検証機能によりシミュレーションの精度を更に向上させることができます。
VERICUT V9.3ではご紹介した他にもヘッドアップディスプレイ(HUD)の機能改善や目の疲労を緩和させるダークモードカラー設定など、多数の新規機能、機能改善が行われました。VERICUTの新規導入、およびバージョンアップについてご興味のある方はお気軽にご相談ください。
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