DIPROニュース

富士電機株式会社 生産技術センター 設備技術部様は、富士電機グループのものつくりに関する課題を解決する為に、人作業に依存した製造現場を機械化する設備の技術開発や、新商品開発で必要となる生産ライン構築に向けた技術支援を行うことを主な役割とされています。
同部門では、生産ライン構築の技術支援として、生産準備業務の質向上と効率化を目的に、デジタルツールの活用を積極的に推進しています。その一環として、設計から製造までのプロセスで3Dデータを活用できるVPSファミリー(VPS DMU、HNS、MFG、GP4、IOC、Xphere)をご利用いただいています。
2026年4月1日 現在
| 会社名(英文社名) |
富士電機株式会社(FUJI ELECTRIC CO., LTD.) |
|---|---|
| 本社所在地 |
東京都品川区大崎一丁目11番2号 ゲートシティ大崎イーストタワー |
| 設立 |
1923年(大正12年)8月29日 |
| 代表者 |
代表取締役会長CEO 北澤 通宏 |
| 従業員数※ |
26,955名 |
| 資本金※ |
47,586,067,310円 |
| 売上高※ |
連結 12,276億円 |
| 主な事業内容 |
蒸気タービン、無停電電源装置、変圧器、インバータ、モータ、電磁接触器、漏電遮断器、自動販売機、IGBT半導体の研究・開発・設計・製造・サービス |
※ 2026年3月31日現在
本稿では、特にVRシステム「VPS Xphere(クロスフィア)」を活用した設備レビューの取り組みについて、富士電機株式会社 生産技術センター 設備技術部 五十嵐智様にお話を伺いました。
設備や生産ラインを製作する際には、工程設計、設備設計、レイアウト設計など複数の検討ステップがあります。従来は、レビューで発生した課題の確認に時間を要したり、実機製作後に手戻りが発生したりすることで、生産立ち上げまでに多くの時間を費やすことが課題となっていました。こうした背景から、設備技術部様では約10年前から生産準備業務に3Dモデルを活用し、現物レスでの評価・検討を進めてこられました。
干渉や組立性といった構造的な問題は、CADやVPSをはじめとするデジタルツールで多くを事前に検証できます。一方で、人の作業性や視野性は、問題がないように見えても、実機で作業者が確認すると想定と異なるケースがあります。そこで同部門では、実機を作る前に作業性検証の質を高めるため、2024年2月からVRシステム「VPS Xphere」の利用を開始しました。
「VRを使ってリアルスケールで検証すると、作業者が実機で感じる狭さや見づらさ、部品に手が届くかどうかといったアクセス性を確認できます。CAD上の寸法値では問題がなくても、実機にすると、想定と違うことがあります。実機製作後に設備の高さや幅を変更するには費用がかかるため、予測した投資対効果から大きな乖離が発生しています。また、保守作業で部品を取り替える場面でも、デジタルツール上ではできそうに見えても、VR空間で自分の手を使って取り出そうとすると、他の部品に当たる、作業しにくいといったことに気づくことができます」と五十嵐様は話されます。
VPS DMU人体モデルで検証
Xphereで検証
VPS GP4による作業通路検討
Xphereで検証
構造物追加(流れ棚)により、作業通路が狭くなった。GP4キャラクターでは通路の確保ができているように見えるが、VRにて作業通路が確保できているか検証を実施。作業通路が確保されており、構造物追加は可能であることを確認した。
設備設計の検討ステップでは、要素作業を機械へ落とし込む際に必要な機能や性能などを実現する為に、設備構造や詳細な設備仕様を検討します。その後、グループ会社のエフテック様や外注企業様に詳細設計と3Dモデル作成を依頼し、モデル完成度が60~100%の段階で、設備導入先工場の生産技術部門や製造部門も含めた関係者によるレビューを実施します。まずVPS DMUやGP4などで全体を確認し、疑問点や詳細確認が必要な部分について、VRで実機に近い視点から検証しています。
富士電機様における設備・生産ライン検討フロー
VPS GP4とVRの連携においては、レイアウト設計レビューが主な活用になります。
レイアウト設計では、限られたスペースにライン全体を構築する為に、設備を極力小さくし、作業スペースも必要最低限にしています。GP4などの3Dモデルではライン全体の大きさなどが実際より小さく見えるため、VRにてラインの高さや幅、表示灯の位置、隣接する設備との関係性など、作業者や監督者の目線での検討を行います。
VPS GP4検討画面
Xphere検討画面
作業中に作業者が隣り合ったとき、GP4キャラクタモデルにおいて干渉している様子が伺えたため、VRの中でも干渉してしまうかを確認。作業台の幅を調整した。
部品の再作製費用など費用面での直接的な効果は限定的であっても、デザインレビューから課題確認までの期間短縮や、実機製作後の手戻り抑制につながっている点に大きな価値があります。
従来の机上でのレビューでは、実機確認が必要な課題が残った場合、工場の生産技術部門がダンボールを使って実物大の設備を作り、製造部門と作業性を確認していました。ダンボール試作機を製作する作業時間の確保や、ダンボールなどの材料の確保等、実際のサイズの設備モデルを作り、確認するために多くの時間と労力を費やしていました。
3DモデルとVRがあれば、課題が上がったその場でヘッドマウントディスプレイを装着し、実機に近い感覚で確認できます。これにより、ダンボール試作による検証期間を省き、修正や実機製造へ早く進めることができます。さらに、ダンボール試作では把握しにくい小さな突起や周辺部品との干渉も、作り込まれた3Dモデル上で詳細に確認できるため、レビューの精度向上にもつながります。また、設備製作元による定期点検やオーバーホールなどに対し、3DモデルとVRによる、事前の作業教育にも利用できると期待しています。
五十嵐様は、工場から設備検討の依頼を受けた際、従来のレビューに加えてVRを用いたレビューを行い、現場はもちろん安全管理する総務部門にも参加してもらうよう働きかけています。ものつくりに関係するすべての部門が、同じモデルを見ながら意見を出し合う場として定着させることを重視されています。
VRレビューを実施した際の関係者の反応は、「思ったよりすごい」といった驚きの声が多いそうです。一方で五十嵐様は、「大事なことは“継続”と、多くの部門の人にレビューへ参加してもらい意見を出しあえること」と話されます。最初はVRの臨場感や没入感に驚くものの、継続して活用することで、「見づらくないか」「作業しづらくないか」「保守しやすいか」といった確認の観点が身につき、具体的な意見や改善提案につながっていきます。従来の2D構想図による設備レビューでは生産技術部門の参加が中心でしたが、VPSやXphere等で3Dモデルを確認できるようになったことで、製造担当者も参加し、実際に設備を使用する立場から意見がでるようになりました。VRは実機を完全に再現するものではありませんが、早期の判断材料として有効に活用されています。
設備技術部様では、今後、Xphereのパススルー機能を積極的に活用していく予定です。パススルー機能は、現実の現場に仮想モデルを重ねて検証できるため、仮想空間だけで確認する場合に比べて平衡感覚を保ちやすいという利点があります。さらに、パススルーで見える自分の手や実際の工具を利用して、部品へのアプローチ性をより正確に確認することも検討されています。また、生産の初期流動期間短縮に向けて、実機が使えるようになる前の組立トレーニングへの活用も視野に入れています。
加えて、作業者と設備モデルとの干渉を可視化する機能や、工場内照明によって発生する影や暗さの影響を確認できる機能など、より現場に近い検証を可能にする今後の機能開発に期待いただいています。
VRは、設備を“見る”ためのツールにとどまらず、実機をつくる前の段階で現場の気づきを引き出し、レビュー品質を高めるための仕組みとして活用されています。デジタルプロセス株式会社は、VPSファミリーを通じて、お客様の思いや課題、ご期待を丁寧にお伺いしながら、VRを含むデジタル検証の効果をさらに高められるよう、継続的に支援してまいります。
機能の紹介動画は、 右記の会員制情報サイトでご覧いただけます。ぜひ、ご覧ください。
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