製造現場の課題とDXへの取り組み

顧客の購買行動が「モノ消費からコト消費へ」と移り、消費者は製品を通じた体験に価値を感じてきています。製品市場はVUCAの時代となり、目まぐるしい変化をみせています。これら環境の変化に対し製品製造業は、顧客ニーズに合った一品一様の製品提供が必要となり、よりフレキシブルなモノづくりが求められています。

製品の製造現場では、高度で多様な製品に対応するために製造工程はより複雑となり、人による現場作業がいまなお必要とされます。その中で、高年齢化による熟練者の減少やそれに伴う現場力の低下は、現場作業の品質や生産性への影響が大きく、より一層の現場対応力の強化が課題となります。また、品質保証がより厳格化し、トレーサビリティを確保するうえでエビデンスが求められるなど、新たな現場負担への対応も必要となります。

このような環境変化に対する製造業のDXへの取り組みとして、現場データとデジタル技術を活用したスマート・ファクトリーが注目されています。モノづくりにおける全工程の効率化を目指すスマート・マニュファクチャリングに対し、主に工場や生産現場を対象とします。そこでは、業務プロセス改革や生産性・品質の向上に向けて、現場データとデジタル技術の適用から、いかに付加価値を得られるかが重要となります。

製造現場でより必要となるデジタル情報の活用

上流工程からの製品情報や製造現場で発生する情報はデジタル化され、生産や品質管理などの現場業務で活用が進んでいます。現場作業の入力となる設計や生産準備からの情報は、製品/生産技術情報としてデジタルデータで供給され、製造現場からのデータは、IoT技術でリアルタイムに収集されるなど、製造現場はデジタル情報で満たされています。

しかしながら、現場で利用する図面やマニュアルなどのデジタル化は、従来の紙媒体のディスプレイへの置き換えであり、デジタルの特性が十分に活かされていません。現場作業者は、依然と同様に、作業手順やマニュアル等の確認のために作業を中断しなければなりません。また、上流工程からのデジタル情報には、現場や現物とのギャップがある場合があり、現場作業での修正が発生することもあります。

このように現場作業においては、上流工程と現場からのデジタル情報をまだ有効的に活用できていないのが現状です。デジタル情報は再利用や加工が容易であり、目的に応じたデジタル情報の表現や提供は、現場作業者の作業支援や負荷軽減など生産性向上を支援します。

拡張現実は、現実世界の環境にデジタルな情報や仮想的なオブジェクトを重ね合わせる技術であり、実際の環境とデジタルの世界を融合させることができます。拡張現実の利用は、リアルとデジタルが混じりあう製造現場において革新的な変化をもたらし、多くのメリットと成果をもたらすことが期待されます。

現実拡張と仮想現実による検証評価

現実拡張は、デジタル情報を現場・現物に投影することで、ユーザの視界内にリアルとデジタルを重ね合わせて表示します。これによりデジタル技術情報と現場・現物を、同時かつ視覚的に比較評価することが可能となります。その結果はフィードバックされ、それぞれの改善などに反映されます。

現実拡張による検証・評価は、生産設備・機械の制御データや工場設備のレイアウトなどの現場調整をより有益なものとします。

ロボット動作制御データの現場調整では、実際のロボット動作とデジタルな製造モデルを比較評価し、評価結果をフィードバックします。ロボット動作制御データは修正され、改めて仮想現実でのシミュレーションにてその動作が確認されます。また、工場における装置や設備レイアウト情報の現場検証では、装置や機械のデジタルモデルを現場に投影し、そのレイアウトや動作範囲を検証します。現場状況を踏まえた評価結果は、レイアウト情報にフィードバックされ反映されます。

現場・現物との比較評価は、デジタル技術情報とのギャップを明らかにし、その結果を上流工程にフィードバックします。この結果を反映した仮想現実による検証評価は、デジタル技術情報の品質を改善します。現場作業の入力となるデジタル技術情報の質向上は、それらに起因する現場作業の不具合や製造ミスなどを削減し、製品全体の品質向上に貢献します。

現実拡張を活用した製造現場支援

製造現場での現実拡張の利用は、生産性の向上、品質管理の改善に貢献します。現場作業者は、情報や手順が視覚的に提示されるため、作業効率が向上し、ミスやエラーの発生が減少します。製品の組み立てや検査工程においては、正確さと一貫性が確保され、品質の向上が期待できます。

複雑な組立作業では、作業者の視野内に組立手順書等を表示することで、確認のための移動をなくし、中断することなく組立主作業が行えるようになります。作業者は作業の手間や時間を節約し、組立作業に集中することができます。また、現場・現物から収集されたデジタル情報から、組立状態をリアルタイムで確認することで、ミスや欠陥を早期に検知し修正することができます。これらによる作業品質の向上は、作業不良の削減や製品品質の向上につながります。

製造物や納品物を検査する場合、製造された現物に仕様となるデジタル形状を重ね合わせ表示することで、視覚的にその差異が把握されOK/NGを判断することができます。これにより作業者は素早く正確に作業を進めることができます。また、検査や評価の作業と同時に、結果をデジタル情報として記録、報告用の一覧化など、検査評価作業における付帯作業を軽減します。

デジタル情報活用で現場作業者を支援

• 現場でのデジタル情報参照・比較の容易化
• 作業手順支援と結果のリアルタイム評価
• 作業結果やチェック評価のデジタル記録

製造現場におけるリアルとデジタルの融合

拡張現実の利用したリアルとデジタルの融合は、製造現場において革新的な変化をもたらし、生産性の向上、品質管理の改善、作業効率の向上などの多くのメリットと成果が期待されます。これらのメリットは企業の競争力向上や効率化に貢献し、結果的にビジネスの成果を向上させることが期待されます。

弊社は、製造現場での拡張現実の利用したリアルとデジタルを融合の実現に向け、独自アプリ製品及びサービスの提供でご支援いたします。

仮想現実と現実拡張の機能を備えたアプリケーションソフトウェアの提供により、デジタル評価と現場現物との比較を組み合わせた質の高い検証・評価を可能とします。また、形状だけでなく属性や技術情報を含むデジタル設計情報を利用することで、データ準備のための時間を短縮し、現場作業において充実したデジタルデータの活用や評価を支援します。

製造業におけるDXの実現にむけ、エンジニアリング各領域で強みをもつ独自アプリや取り扱い製品等を組み合わせて、独自アプリ・システムで構成したエコシステムをご提供します。生産技術、製品開発領域における最適な情報アプリ・システムにて、製造現場における生産性の向上、品質管理の改善、作業効率の向上に貢献します。